Dr.Bommie

精神科医。大学に属しながら医療系ベンチャー企業でも勤務。世界中の医師と医療、精神科医療…

Dr.Bommie

精神科医。大学に属しながら医療系ベンチャー企業でも勤務。世界中の医師と医療、精神科医療について議論しながら旅行を続けている。精神科オンラインセッションを日々開催中。https://peraichi.com/landing_pages/view/psychiatry

最近の記事

病み垢について、精神科医の視点から

患者間オンラインコミュニティを運営しているMilk cafeスタッフのみなさんとお話しする機会を頂きました。 https://www.milkcafe-welcom.com そこで話題にあがったのは、「病み垢」なる存在です。 twitterでの「精神的に不安定な内容のツイートをする人のアカウント」というのがよくある定義なようです。 病み垢なるものの存在はほとんど知らなかったので#病み垢で調べてみました。 そこには10代を中心とした、誰かとつながっていたい、でもつなが

    • うつ病から回復した人がうつ病の人を支援するという構造

      最近、うつ病を経験し、回復した人がトレーニングを受け、現在うつ病をわずらっている人を支援することにより、再入院率を低下させたという論文がイギリスで発表された。 https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(18)31470-3/fulltext このことは、今うつ病などで苦しんでいる人はもちろん、回復はしたけどうつ病の経験があるということで就職先がない、など社会復帰ができていない人にとっても

      • 精神科医からみた、夏休みの正しい終わり方。

        8月31日は例年学生の自殺が相次ぐといいます。夏休みが終わり、新学期が始まることが大きく関係しているのでしょう。精神科の外来でも若い患者さんは新学期前後で軒並み体調を崩しています。 今年はそれが土日の関係で9月2日になるのかもしれません。 それも当然です。どれほど新学期が恐ろしいか。学生にとって。 そこで夏休みを正しく終わらせる必要があります。 それは夏休みに感謝することです。 夏休みはとても大切です。 なのでしっかりと感謝を伝え、また1年後に会えるのを楽しみにし

        • ヨーロッパを精神科医の視点から③

          バルト三国の一つ、リトアニアに行ってきました。その首都のビリニュスは川と緑に囲まれたとてもきれいな街です。 リトアニア訪問の目的は、リトアニアはなぜ世界一自殺率が高いのかを知るためです。そこでビリニュス市内にある精神科病院を訪問してきました。精神科医のArnus先生からリトアニアはなぜ自殺者が多いのかについてお伺いしてきました。 まず男性の自殺率がとりわけ高いです。男性:女性が6:1で他の欧米平均の3:1を大きく上回っています。背景には安く手に入るアルコール(各家庭でポテ

        病み垢について、精神科医の視点から

          ヨーロッパ旅行を精神科医の視点から②

          1ヶ月の東欧旅行を終えて、1ヶ月になります。 学んだこと、うれしかったことなど沢山ある。少しずつ書き残していきたい。 バルト三国のひとつ、エストニア在住の22歳のエストニア人会社員と仲良くなった。 エストニアの首都、タリンでバスを乗りついてある目的地までいこうとしていたが、乗り換えるバス停を乗り過ごしてしまい、慌てておりたバス停で次にどのバスに乗ろうか、地図を確認していたところ声をかけてくれた。 丁寧に案内してもらいながら話を聞くと、彼は日本の文化に幼少期から興味があ

          ヨーロッパ旅行を精神科医の視点から②

          移住先としてラトビアはありか?

          突然ですがラトビアという国があることをご存知ですか? バルト海に面したバルト三国の真ん中に位置するこの国は今注目の国です。 花と歌をこよなく愛するラトビア人。 美人が世界で有数に多いラトビア人。 僕が訪ねた6月23日は夏至祭という、一年で最も大事な日ということで夜通しで歌って踊ってのお祭りでした。 なぜ大注目かというと、ラトビアはヨーロッパ移住の鍵を担うからです。 一般にヨーロッパへの移住はビザの受給の条件が厳しくなかなか難しいものです。 しかしラトビアの不動産

          移住先としてラトビアはありか?

          アウシュビッツ収容所を見て

          ポーランドのアウシュビッツ収容所を訪問しました。 4時間のツアーでしたが、とても重要な体験をしたと思っています。 アウシュビッツ収容所はナチスドイツ軍(SS)によりつくられ、1940年から1945年までの間に110万人のユダヤ人、戦犯が収容された施設です。負の世界遺産として今も多くの追悼にくる訪問者を受け入れています。 ユダヤ人として1942年に収容された精神科医、フランクルの著作、夜と霧を事前に読んでいましたが、その極限状態の収容所生活の中で、 人生に何を求めるかで

          アウシュビッツ収容所を見て

          ヨーロッパを精神科医の視点から①

          ご無沙汰しています。 前回の投稿を最後に海外へ逃亡しておりました。 今ベルギーとオーストリアを経てポーランドに入りました。 ポーランドでは世界遺産の街、クラクフに滞在しています。 ここまでの旅の中で感じたこと。 日本には日本の文化をうまく宣伝できていない。 ということです。 海外に行くと、例えばウィーンではクリムトやシーレなどのその地域を拠点にした芸術家が全面的に押し出され、土産物から街のモニュメントまであらゆるものに反映されています。 しかし日本はどうか。日

          ヨーロッパを精神科医の視点から①

          寛容と旅

          人によって何が許せて何が許せないのかは異なる。 強迫性パーソナリティ障害の人は、完璧じゃないことが許せないし、 自己愛性パーソナリティ障害の人は、周りの人の成功が許せない。 実際に当てはまっている訳でもないのにそう考えてしまう。 許せないことはとにかく許せないのだ。 仕事柄僕は寛容な方だが、何故か最近許せないことが増えてきた。そんな自分が嫌になることが増えてきた。 そんな時にはいつも旅に出た。 旅は寛容さを教えてくれる。 僕が僕でいいのだと教えてくれる。

          寛容と旅

          仮想精神科マーケット

          精神科患者が自立するために作業所に通うことはよくある。自立の前段階として私達医師もそれを積極的に薦めている。たしかに生活リズムの確立、社会性の獲得など大いに有効だ。 しかし時給100円など最低賃金を圧倒的に下回る賃金で働いているのが現状だ。これでは貯金などできるわけもなく、一人暮らしができるようになるわけでもなく、やる気もわかず、長続きせず結局は実家ぐらしのままで自立にはつながらない。 ではなぜ給料が安いのか? それは精神状態が不安定で継続的に勤務することが難しく、生産

          仮想精神科マーケット

          精神科医的、正しいサプライズの仕方

          サプライズ、してますか? 苦手意識の多い男性は多いだろう。僕も若かりし頃は有りもしないシチュエーションで告白したりして玉砕したことを覚えている。ただの自己満足だった。 しかし医学の知で武装することでサプライズをマスターし、いつしかこう言うようになった。 私、失敗しないんで。 サプライズで感動させる、その成功の鍵は サプライズを・・・

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          精神科医的、正しいサプライズの仕方

          多動力とは 精神科医からの視点

          1987年うまれの半数が97歳まで、2007年生まれの半数が103歳まで生きるとされている。 そしていくつもの選択肢から選べる時代だ。 街には様々な出会いが溢れる。 新卒就職率98%、転職市場も充実。自由に就職、転職ができる。 海外に移住することも出来る。 いくつもの選択肢から選べる時代だ。 この長い人生で充実した人生を送るにはどうしたら良いか。 そう、選べばいい。自分が望むものを。ポーカーでジョーカーを探すように。何度でも、いくつでも。納得するまで。 しかし

          多動力とは 精神科医からの視点

          保有効果~お試しの魔力~

          初回タダ、初回半額、30日間返品無料。。。 あなたは初回で良かったものに対して2回目を断ったことがあるだろうか。 気に入ったものを期間内に返品できたことがあるだろうか。 これがなかなかに難しい。 一度経験したもの、所有したものには愛着が生まれ、価値があるものだというバイアスがかかる。 これを保有効果と呼ぶ。 この所有意識を利用したマーケティングはとても行動経済学的には有効だ。 IKEA の家具は、自分でパーツをさがし、カートにいれ、組み立てることで愛着はさらに増

          保有効果~お試しの魔力~

          山口メンバーよ。精神科医より告ぐ。

          退院当日に飲酒をするのは他のアルコール依存症患者でもよくある話だが、依存症の一症状である。 アルコール依存病棟で入院を行い、アルコールを絶とうと努力していたところでこのような事件が起きたのは残念だ。 しかし長期的に何かを続けることは本当に難しい。 彼をただ攻めるのではなく、そのためにどの様な努力と周りからのサポートがあればよかったのだろうかを考えたい。 ①強制的に断酒させるというやり方。 アルコール依存症の場合は閉鎖病棟で入院をし、自由に飲酒が出来ない状態になること

          山口メンバーよ。精神科医より告ぐ。

          人間はかくも欲深き生き物なのか。。

          人間はかくも欲深き生き物なのか。。 お賽銭泥棒 セールを打ち出し、資金を集めた直後の破産 しまいには「お前の物は俺の物、俺の物は俺の物」など詭弁をいう小学生もいる次第だ。 人間にはもう良心など存在しないのだろうか。 うまい棒、無料です。ご自由にどうぞ。 町中にこのような看板が出されていたらどうだろう。 たちまち獣のごとき男女が互いをつかみ合い、一本でも多くのうまい棒を求め争うのであろうか。 うまい棒、1本5円です。好きなだけどうぞ。 一方、このようになってい

          人間はかくも欲深き生き物なのか。。

          熱意を伝えるか、お金を渡すか

          部下のやる気を出させるときに ①お金を支払う ②熱意や意義を伝える どちらが有効か。 提示した金額が大きくないのであれば、②が有効だ。 大きい金額であれば、「時給○○万円で手伝う計算だからまあいいか」となりやる気を引き出すことも出来るが 低い金額では、 「30分かかる作業を手伝うのにたったの100円かよ。。」 と考えてしまい、協力する気が失せてしまう。 これはお金の話になった瞬間に金額のものさし(市場規範)で考えてしまったからだ。 市場規範の反対は社会規範

          熱意を伝えるか、お金を渡すか