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寄せ集め

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詩とか散文みたいなもの
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#架空

星になれたら

星になれたら

言葉が無力になってしまった

君の抱える悲しみの前では

この東京の街も海の底みたいだ
沈んだ船は浮かび上がれないらしい

次生まれ変わったら君は星になる

決して触れはしないけれど
いつまでも綺麗に輝く星に

私はいつまでもそれを見上げる

出口のない夜

出口のない夜

夜は出口のない閉鎖空間

今日は9月7日土曜の夜
0:00に布団に入るとして
明日の日の出までは5:18

その5時間だけは何としても
生き残らなくてはいけない

自意識を抑え込んで
過去と折り合いをつけて
未来の不安を叩き潰して

君も今夜を生き残れたなら

明日の太陽を一緒に拝もう

君が今夜を生き残れないなら

私も夜の闇に溶けてしまおう

落伍愁歌

落伍愁歌

喪失も欠落も
誰にも言えやしない過去の秘密とか
眠れない夜の孤独や後悔なんかも

これまでの人生の大事な一部です

心の空洞を抱きしめて

13月を生きている君の
死んではいけない理由が
どうか見つかりますように

待つ人

待つ人

約束をしました

暖かくなったら海を見に行こう
寒くなったら星巡りに行こう
そしていつか私の生まれた街に行こう

君の行きたいところ全部に行こうよ

私たちは大人になって

もう何処へでも行けるんだから

あれからいくらか待ちましたが

いつまで経っても君は来ません

私はもう何処へも行けやしません

いつかは全て忘れるとして

いつかは全て忘れるとして

私は私の存在が忘れられる事が堪らなく恐ろしい。

他人の中から自分の存在が消えてしまうことは思ってる以上につらくて苦痛を伴うものなんだ。

母方の曽祖母が鬼籍に入る半年くらい前、入院しているところを家族で見舞った際に彼女はすっかり私のことを忘れ去ってしまっていた。

余所者を見る目つきで私のことをひどく罵ったのを今でも鮮明に覚えている。軽くトラウマ。

それもあり、晩年施設住まいになった祖母には会

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唄う人魚

唄う人魚

古びた缶詰の蓋を開けると、魚のぶつ切りと一緒に小さな美しい人魚が入っていた。

私は急いで風呂場に連れて行き、鱗に傷がつかないように慎重に身体を綺麗にしてやり、浴槽の水を海と同じ塩分濃度に調節した。

しばらく様子を眺めていると人魚は少しずつ息を吹き返し始めた。その晩はずっと隣で過ごした。

その頃の私といえば、立て続けに嫌なことが起こっていたものだからひどく心は疲弊していた。だから浴槽の人魚に弱

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何処か遠くに行きたくなったら

何処か遠くに行きたくなったら

何処か遠くに行きたくなったら
今ある全てを捨てて行きましょう
誰もあなたを知らないし
詮索もしてこない素敵な街に
そこで縁側付きの古民家を借りて
日がな一日空の表情を眺めて過ごす

でも本当はそんなことは出来ない
私たちには人間関係がある
仕事がある規律がある義務がある
しがらみに縛られているから
私はお気に入りの風景アルバム
眺めて巡る旅をします

それでも気持ちが収まらない時は
本当の本当に全

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さみしさと海

さみしさと海

さみしい気持ちに包まれたなら
涙の雨を降らせてください
部屋を満たして海になったら
私も近くの海に身を投げます
海の底の底の底の方で
身体が朽ちて砂に変わるまで
これまでの話を聞かせてください

喪失は深い青色

喪失は深い青色

どうしようもなく悲しいことが起きても
月並みの言葉しか思い浮かばないときは
私は静かに熱くて苦いコーヒーを差し出す
それを飲み干したら海にでも行こうよ
喪失の色は海と同じ深い深い青色

夜行性

夜行性

うちの子になるかいと
声を掛けてみるけど
聞こえない振り
何処かへ駆け出す背中を見送る
夜行性の生き物1匹

中途覚醒クラブ

中途覚醒クラブ

僕等は中途覚醒クラブ。眠りの園から門前払い。僕等は中途覚醒クラブ。行き場なしの閉鎖空間。僕等は中途覚醒クラブ。ひとりで過ごすには長過ぎる時間の中で。僕等は中途覚醒クラブ。夜明けのあかりが目に沁みる。あゝ僕等は中途覚醒クラブ。夜の、夜の向こうへ連れて行って。

生活

生活

東京での生活と地元での生活

両方居心地が良くて、両方どこか具合が悪い。

一体自分はどこの人間なんだろうと悩みたくなる。
恐らく人間の居場所はその時々で変わるのだろう。

仕事に出れば職場の人間、うちに帰れば家の人間、遊びに出ればそこのお客さま等、ひとの属性は不定形のものなんだと理屈を捏ねて自分を納得させようとする。

が、私が言いたいのはそういうことではない。

心の奥底にあるものの居場所のこ

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