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くにん
2021年9月23日 20:58
兎の面をつけていた時に、羽磋は心の中でそのような考えを働かせながら、周囲を調べていました。すると、羽磋は大空間の奥の方の壁面に白い光の塊があることに、気が付きました。壁面の白い光は、兎の面をつけて水面を眺めたときに見えるものと同じ光でした。その光の塊が壁面に見えるということは、そこからも水が流れ込んでいるのか、あるいはその反対に、その箇所からさらに奥の方へと水が流れ出ているのではないかと、羽磋は
2021年9月19日 20:01
あまりに急に止まったものですから、そのすぐ後を歩いていた理亜は止まり切れずに羽磋の体を透り抜けて前にまで出てしまいました。そして、そのさらに後ろを歩いていた王柔が羽磋の背中にぶつかってしまいました。「あ、すみません、羽磋殿っ」「いえいえ、気にしないでください。僕の方こそ、すみません、王柔殿。自分の考えの中に閉じ籠ってしまっていました。でも、あれなんです、僕の探していたものは。ほら、あそこに見
2021年9月15日 23:08
「壁の下の方にはこんな形が集中しているんですね。どうしてなんでしょうか」 羽磋は歩きながら自分の脇の壁に手をやりました。彼が手で壁をなぞると、指は横方向に導かれます。その手が当たる部分にも横縞が刻まれているからでした。「この壁にできている横縞は、きっと水が岩を削り取った後ですよ。季節によって水の高さが変動するのか、それとも時代によって高さが変わったのかはわかりませんが、今よりももっとたくさんの
2021年9月12日 20:55
「大丈夫ですか、羽磋殿・・・・・・」 王柔が心配そうに声を掛けてきました。「ええ、少し目が疲れましたが大丈夫です。一通り見まわしてみたんですが、ここは本当に不思議な場所ですね。精霊の力がとても強く働いているようです。僕たちは、一体どこにいるんでしょうか」 王柔も改めて周りを見回しました。 とても広い洞窟です。ひんやりとした空気が満ちた広い空間は、ゴツゴツとした岩壁と複雑な襞を形成した天井に
2021年9月9日 22:57
「王柔殿、僕は秋田の一族ではありません。その僕がどうしてこの面を持っているかは、聞かないでください。それに、この面のことは、誰にも話さないようお願いします」 羽磋は面を手にして立ち上がると、王柔の顔を正面から捉えて真剣な表情で話しました。そして、深々と頭を下げました。「わ、わかりました。何も聞きませんし、誰にも話しません」 王柔は羽磋の改まった様子に気圧されはしましたが、それでも、はっきりと
2021年9月5日 21:03
この王柔の言葉の中で、羽磋の耳に引っかかるものがありました。「理亜がヤルダンから一人で村にまで来た」と王柔は言いました。これはひょとしたら以前にも聞いていたことかもしれませんが、羽磋は気には留めていませんでした。でも、実際にヤルダンへ旅をしている今は、そこにも不思議があることに気が付いたのでした。「王柔殿、理亜がヤルダンから一人で村に来たとおっしゃいましたか」「ええ、そうです。寒山という人が