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【マガジン】月の砂漠のかぐや姫

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今ではなく、人と精霊が身近であった時代。ここではなく、ゴビの赤土と砂漠の白砂が広がる場所。中国の祁連山脈の北側、後代に河西回廊と呼ばれる場所を舞台として、謎の遊牧民族「月の民」の… もっと読む
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2021年8月の記事一覧

月の砂漠のかぐや姫 第199話

月の砂漠のかぐや姫 第199話

 大きな空間を有する洞窟ですが、彼らの頭の上の見える限りは全てゴツゴツとした岩で覆われていました。その岩には大きな凹凸があり暗い影になっている部分も多くあるのですが、空が見えている部分は一つもなかったので、彼らがヤルダンの地下に閉じ込められていることは、明らかでした。
 しかし、そうであるとすれば、彼らがこのように周囲を見て取れること自体が大いに不思議なことです。何故なら、この空間には、日の光が差

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月の砂漠のかぐや姫 第198話

月の砂漠のかぐや姫 第198話

「ん・・・・・・」
 羽磋の口から小さな声が洩れました。そして、身体がブルブルと小刻みに震え出したかと思うと、両手がまるで水をかくかのように動きました。今まで意識の海の底に沈んでいた彼の心が、王柔の声によって力を得て、意識の海の表にまで上がって来ようとしているのでした。
 羽磋がこのまま死んでしまうのではないかと心配していた王柔の表情が、羽磋の反応を見てぱっと明るくなりました。羽磋が彼らの元へ戻っ

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月の砂漠のかぐや姫 第197話

月の砂漠のかぐや姫 第197話

 長身の男とは、羽磋や理亜と共に交易路から川に落下し、激しい水の流れに飲み込まれてしまった王柔でした。そして、彼が必死になって呼び掛けている相手は、地面に横たえられている羽磋でした。
 交易路から落下して川を流されていったのは、王柔と羽磋それに理亜の三人だったはずです。小さな理亜はどこにいるのでしょうか。彼女は、王柔の背中に手を当てて、その体の陰から心配そうに羽磋を見下ろしていました。
 王柔たち

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月の砂漠のかぐや姫 第196話

月の砂漠のかぐや姫 第196話

「・・・・・・殿。・・・・・・羽磋・・・・・・。羽磋・・・・・・殿・・・・・・」
 羽磋の耳に自分の名を呼ぶ声が届きました。
 それは、遠い遠い草原の彼方から朝もやを透して微かに届く声のようでもあり、自分の耳元で叫ばれる大きな声のようでもありました。
 また、それは、朝露が木の葉から地面に落ちた時に生じる穏やかな音のようでもあり、急流が滝から落下する時に生じる激しい音のようでもありました。
 羽磋

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月の砂漠のかぐや姫 第195話

月の砂漠のかぐや姫 第195話

 羽磋は走るのをやめて、ゆっくりと歩いてオアシスに近づくことにしました。そうすれば、星月がもたらす光によって少しずつ自分の姿が明らかになるでしょう。それは、ナツメヤシの陰から辺りを窺っているであろう輝夜姫を怖がらせることが無いようにという、羽磋の配慮でした。
「ごめんな、急にこんなところに現れて。だけど、心配しないでくれ。旅に出ていたんだ、俺。それで・・・・・・、ん? あれ。あれぇ?」
 輝夜姫に

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月の砂漠のかぐや姫 第194話

月の砂漠のかぐや姫 第194話

「く、くそ・・・・・・。まただ、もうっ」
 それは砂が周囲にぶわっと舞い散るほど勢いのある転倒で、顔や体に大きな傷ができていても不思議がないほどでしたが、羽磋は体のどこにも痛いところは無いというように、直ぐに上体を起こしました。そもそも、痛みなど感じている余裕が羽磋にあるはずはないのでした。ずっと心の中でしか話すことのできなかった想い人が、正に目と鼻の先にいるのですから。
 砂の上に倒れ込んだ状態

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