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勇気ある姿勢【カプセル&サウナ みづほ@大森駅】(2/2)

 大森駅には13時ごろに到着した。本日6月2日(水)の天気は快晴で、やや暑いものの比較的過ごしやすい気候だ。空を見上げると太陽の周りには意味ありげに不思議な輪っかが浮かんでいたけれど、これは「ハロ」と呼ばれる現象らしい。この輪っかが現れると、天気は徐々に下り坂になるそうだ。

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 この地域には滅多に来たことがなく、もちろん土地勘も全くない。僕はスマホで地図を見ながら歩き始めると、駅から5分ほどで今日の目的地に到着した。

「ようやくお会いできたな〜、みづほさん」

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 そう、今回訪れたのは「カプセル&サウナ みづほ」だ。このサウナの存在は、僕がTwitterでフォローしているサウナ玄人の方々のツイートによって知ったのだが、その口コミから ”知る人ぞ知る隠れ家” といった印象を受けていた。

 なにが言いたいのかというと、みづほはサウナ愛に溢れたマナーの良い人や常連さんによって支えられている店舗である可能性が高く、すなわち客層が良いことが予想されたのである。
 僕はさまざまなサウナに通ううちに、自分にとって満足度に最も影響がある要素は「客層」にあるのではないかと考えるようになった。どれほど店舗自体の設備やセッティングが魅力的であっても、客層がよろしくなければ幻滅してしまうのだ。今回みづほに足を運んだのは、そんな背景があった。

 僕はさっそく館内に入り、下駄箱に靴を預けて受付で3時間コースの料金1,500円を支払ってロッカーキーを受け取ると、すぐ後ろにあった棚から館内着とタオルセットが入ったバッグを1つ手に取って、5階の浴場フロアへと移動した。

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 エレベーターを降りると、まず最初に気付いたのはタバコの臭いだ。館内には指定された喫煙所があるものの、エレベーターを降りた瞬間からすでにタバコ臭い。これは明らかにエアコンから吹き出している風や壁などから発せられているのだが、おそらく昔は館内のいたるところで喫煙が可能だったのか、その時の臭いが染み付いているのかもしれない。普段タバコの煙を避けて生活している僕は、一瞬たじろいでしまった。
 ただ、ここで心が折れるわけにはいかない。僕は指定されたロッカーに荷物を預けて館内着に着替え、階段を上って5.5階にある浴場に移動した。

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 ロッカースペースにいた時から察していたけれど、広々とした脱衣所には僕以外に人影はない。よく見ると、棚には入浴中のお客さんの荷物がいくつか預けられているけれど、それも数人分だ。
 僕も脱いだ館内着を棚に預けて、いよいよ浴室へと足を踏み入れた。

「ほぉ〜! めちゃめちゃ味がある!!」

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 浴場はローマ風と思われる造りで、その中心にはお風呂があり、さらにサウナは高温と低温の2種類があるようだ。昭和を感じる大袈裟なデザインの浴場に、どこかテーマパークに居るような高揚感を覚えてしまった。
 そして、予想通りガラガラである。僕の他にお客さんは1〜2人程度しかおらず、タイミングによっては浴場全体を貸切で利用できてしまった。

 僕はさっそく身を清めて、お風呂で体を温めてから、まず低温の「トロンサウナ」の中に足を踏み入れた。

「えっ、なにこれ。全然ぬるいじゃん」

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( 公式サイト: http://www.mizho.net/info.html )

 サウナ室の中は横並びに5人が座れる広さがあったが、現在は感染対策のためか間引きされて3人のみが座れるようになっていた。温度計を見ると60℃を指していて、とりあえず腰をかけてみたものの、全く汗をかける気配がなく、僕は耐えきれず30秒でサウナ室を飛び出して隣にある高温サウナへと移動した。

「いや、こっちは熱すぎるな!!!(笑)」

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( 公式サイト: http://www.mizho.net/info.html )

 高温サウナは5〜6人が座れるほどの広さがあり、向かい合って座る構造だ。音楽のことはよくわからないが、その薄暗いサウナ室の中には60〜70年代のアメリカを彷彿とさせるカントリーロックが流れている。

「それにしても、熱い……」

 温度計を見ると110℃。トロンサウナとのギャップの大きさよ。しかも、ただ熱いだけではなくカラカラに乾燥していて、唇の水分が奪われていくのが自分でもわかった。おそらく、ここで洗濯物を干したらすぐに乾くんじゃなかろうか。
 冗談はさておき、壁にかかっている砂時計で5分を計ることができたので、砂が落ちるまでなんとか耐えると、その頃には心臓の鼓動は激しくなり、呼吸も荒れ、全身からは滝汗が流れ出して、脚はぶるぶると震え始めていた。

ーーさすがに限界だ……。

 僕は本能のままにサウナ室を飛び出すと、全身の汗を流してから、水風呂に肩まで沈み込んだ。

「おおおぉぉおおお!!! これはキツい!!!」

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(Mizuburo Japan: http://mizuburo.com/mizuho/ )

 水温は15℃とキンキンに冷たく、そして深い。さらに、噂には聞いていたが「サントルの元祖※」と言われているだけあって、ジェットにより生み出される渦巻き状の水流が僕の羽衣を剥がし続けるのである。これは火照った身体に効くに決まっている。

【※サントル = サンダートルネード】
池袋にあるサウナの人気店「かるまる」が誇る、水温10℃未満の渦を巻く水風呂のこと。

 僕はそこで30秒ほど身体を鎮めて、意識が朦朧となりながらも水風呂からゆっくりと立ち上がった。
 みづほには露天スペースが無いものの、すぐ脇にあった ”ととのい椅子” に腰をかけて、壁に頭をもたれかけて脱力していると、浴場内の空気が循環しているおかげか、やんわりと風を受けることができた。目を閉じて、大きく深呼吸。

ーー最高の気分だ……。

 この大浴場を貸切状態で堪能することができる贅沢。あまりの開放感と爽快感、そして優越感に僕の頭の中はからっぽになり、時間を忘れてぼーっとしてしまった。
 そこから浴場内を見渡していると、ところどころ壁のタイルが剥がれ落ちていたり、天井部分には埃が溜まっていたりすることがわかった。ただ、全体的に年季が入っていて、いわゆる場末感があるのだけれど、ほっとしてしまうのはなぜだろう。
 若者向けのモダンなサウナ施設は、それはそれで別の楽しみ方ができるけれど、みづほのような ”時代を感じる施設” も、これはこれで良いものだ。

「はぁ〜、生きててよかった……」

 椅子に座った状態で、実際どのくらいの時間が経ったのかはわからないが、身体が落ち着きを取り戻し始めた時、トロンサウナが僕の視界に入った。

ーーちょっと入り直してみようか。

 僕は立ち上がり、再びトロンサウナのドアを開けて、その中に腰をかけてみた。

「えっ、なにこれ。めちゃめちゃ気持ちいいじゃん……」

 驚くことに、先ほどとは打って変わって極上の居心地の良さを感じたのである。トロンサウナは体温が平熱の時に入るのではなく、水風呂と休憩によって身体が冷やされて、本能的に熱を欲している時に入ることによって、その真価が引き出されるのかもしれない。
 そのまま正面にある窓越しにぼーっと浴場を眺めていると背中側に熱を感じて、振り返ると背もたれ部分にもヒーターが内蔵されていることがわかった。一般的なドライサウナは壁が熱すぎて背中をつけられないことが多いけれど、トロンサウナは温度設定が低いため、背もたれに体を預けることができる。これによって、体に余計な力が入らなくなるだけではなく、室温が高くないためか息苦しさも全くない。この絶妙なセッティングのおかげで、僕は「もうここから動きたくない」とまで思うほどリラックスしてしまっていた。

ーーやはり、自分の基準に合わない物事に対して最初から否定的な態度を示そうとするより、まずはその価値観の違いを受け入れることで見えてくる世界があるんだ……。

 そこで10分ほど考え事をしながら蒸されていると、僕の身体からは汗が流れ出していた。

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(公式サイト: http://www.mizho.net/facilities/ )

 結局、僕はその後に再び高温サウナと水風呂、そしてトロンサウナでの休憩をたっぷりと堪能してから、4階のリラクゼーションスペースで軽く仕事を済ませて帰路に就いたのだが、みづほを出る頃には、不思議とあのタバコ臭さに抵抗がなくなっていて、むしろその臭いを含めた世界観を楽しんですらいた。

ーー僕も、ちょっとだけ変われたのかもしれないな。

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 外に出ると、空はまだ晴れていた。

(written by ナオト:@bocci_naoto)

YouTube「ボッチトーキョー」
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①僕たちは自費でサウナに伺います ②それでお店の売上が増えます ③noteを通して心を込めてお店を紹介します ④noteを読んだ方がお店に足を運ぶようになります ⑤お店はもっと経済的に潤うようになります ⑥お店のサービスが充実します ⑦お客さんがもっと快適にサウナに通えます