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あの風が運んできたもの【天然温泉 扇浜の湯 ドーミーイン川崎@川崎駅】

 会社員を辞めて独立してから、可処分時間が大量に増えた。誰かに縛られることなく、生活のほぼ全てを自分の意思でコントロールできるようになったのだ。
 とはいえ、良いことばかりでもない。やはり収入は安定しないし、役所の手続きはいまだに手探りだし、人との出会いやスキルアップのためには会社員時代よりも能動的にアクションを起こさなければならない。

 たまにフリーランスや起業を推奨する「独立至上主義」のような人を見かけることもあるけれど、この生活を1年以上経験してみた実感としては、独立という選択肢はかなり向き不向きがあると思う。とはいえ、僕自身は今のところ後悔をしていないし、新たな一歩を踏み出す決意ができたあの時の自分を誇りに思う。やってみなければわからないことなんて腐る程あるのだ。

 ただ、自由な時間が増えたからか、なぜか以前よりも哲学的な思考を巡らせるようにもなった。先日は、偶然ある書籍を通して「幸せの定義」について理解を深めたところだが、今の僕が幸福感を得るためにはサウナが必要らしい。さて、今日も幸せを見つけに行こうか。

 11月28日(土)、今回向かうのは川崎駅だ。狙いは「ドーミーイン川崎」。以前「ドーミーイン上野・御徒町」に宿泊して以来、僕はすっかりドーミーインのファンになってしまったのだ。

 ドーミーインは店舗によって特徴が異なり、川崎店の場合は自家源泉の温泉に数千冊の漫画に最上階からの眺望にと、魅力的な要素がたくさんあった。GoToトラベルを利用すれば一人4,000円程度で宿泊できるだけでなく、地域共通クーポン1,000円分を受け取ることもできる。

 川崎駅に到着したのは14時過ぎ。気温はすっかり冬である。やはり秋はもうどこかに行ってしまった

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 食べログでランチの候補を探した結果たどり着いた「日本橋 天丼 金子半之助」さんで腹ごしらえをして、チェックイン予定時刻に合わせて15時にホテルに到着すると、なんと目の前には20組ほどの列ができているではないか。この時点で、大浴場の混雑が予想された。

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 15分ほど並んでチェックインを済ませ、エレベーターに向かうとセブンイレブンへの直通ドアを発見した。外に出ることなく買い物をすることができるなんて、設計が素晴らしすぎる。

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 部屋で小休憩を挟んだのち、さっそく最上階の「湯あがり処」の様子を見にいくことにした。エレベーターで15階に向かうと、そこには僕の期待を超える光景が広がっていた。

「すごっ……!」

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 高層階というだけあって流石の眺望。しかも広々としたフロアのカウンター席にはコンセント完備。さらにフリーWi-Fiも使用可能なので仕事だってできてしまう。僕は「勝ち組のワークスペースかよ」と心の中でツッコミを入れていた。

 そのさらに奥には屋外に出られるテラス席もあり、そこから見える景色は「絶景」そのものだった。目の前に遮るものがなにもない。

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 遠くには横浜ランドマークタワーも見ることができる。川崎から横浜の風景を眺めることができるなんて想像すらしていなかった。

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 さらに驚きなのが、同じフロアにあるライブラリーコーナーの漫画のラインナップである。人気のタイトルは一通り揃っているのではないだろうか。漫画はこのフロアで読むことはもちろん、部屋に5冊まで持ち込むこともできるらしい。

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 この時点で満足度が高すぎる。すごいぞドーミーイン。

 それから少し川崎市街をふらついて、ホテルに戻ったのは17時ごろ。おそらく他のお客さんは夕食に出ているだろうと思い、このタイミングを見計らって浴場がある15階へと再び向かった。
 しかし、エレベーターを降りた僕の足はそこで止まることになる。

「うおおおぉぉぉぉお〜〜〜!!」

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 まさか夕焼けに心を奪われるとは。なんと、チェックイン直後には雲で隠れて見えなかった富士山も拝むことができるではないか。青とオレンジのコントラストがまた美しい。いつかタワマンに住むことがあれば15階以上にしよう、そうしよう。

 景色に見惚れること数分。テラス席で僕の体はすっかり冷えてしまい、そそくさと浴場へと向かった。

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 脱衣所は非常に広々としていて、ゆったりと着替えることができる。アメニティも充実していて、ドライヤーなんてパナソニック様のナノケア(高級品)である。

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(ドーミーイン川崎公式サイト: https://www.hotespa.net/hotels/kawasaki/spa/ )

 時刻は17時半。さっそく服を脱いで浴室へ入ると、チェックイン時の予想とは裏腹に混雑しておらず、むしろガラガラだった。先ほどの予想は的中したようだ。さっそく体を清めて、まずは内湯の温泉へと入浴した。

「おおっ! 黒湯か!!」

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(ドーミーイン川崎公式サイト: https://www.hotespa.net/hotels/kawasaki/spa/ )

 温泉に入ることができるのは事前に調べていたが、泉質までは見ていなかった。黒湯といえば、つい先日ちょうど「COCOFUROますの湯」さんに伺った時に入浴して以来だ。浴槽自体もとにかく広い。大人20人以上が伸び伸びと入ることができる。水温は42℃あたりを示していたけれど、体感では39℃くらいの入りやすさ。そこまで熱くはない。そして一部の窓は全開だから、内湯といえど外気を感じることもできる。
 この頃には、すっかりと日は暮れていて、目の前の窓ガラス越しには夜景が広がっていた。周りにお客さんがいなかったので、小さく「すげぇ…」と声を漏らしてしまったほど美しかった。

 体をある程度温めてから、次に露天スペースへ調査に繰り出した。ここには大人4〜6人ほどが入浴できるサイズの露天風呂のほか、黒湯の壺風呂が2つ設けられていた。そして ”ととのい椅子” や "ととのいベンチ" も完備というありがたい仕様。窓ガラスは無いので、腰に手を当て仁王立ちをして全裸で川崎の夜景に心酔した。

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(ドーミーイン川崎公式サイト: https://www.hotespa.net/hotels/kawasaki/spa/ )

一通り浴場の仕組みを理解し、僕はいよいよサウナ室へと向かった。

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(ドーミーイン川崎公式サイト: https://www.hotespa.net/hotels/kawasaki/spa/ )

 中は意外と広く、2段構成で奥行きがある。スリムな男性だけが規則正しく並べば最大16人が入ることができそうだが、現実的には最大12人程度だろうか。ただし、昨今の事情を鑑みると隣の人とは距離を開ける必要があるので、現在はせいぜい8人が限度だろう。とはいえ、サウナ自体も混雑はしておらず、僕の他にお客さんは3人しかいなかった。

 空いている上段に腰をかけ、温度を確認すると96℃。湿度は低めのドライサウナだ。正面には大きなサイズのテレビが音声ありで流れている。サウナハットを被り、目を瞑ってじっくりと蒸されること7分。徐々に呼吸が荒れてきた。胸の鼓動が激しくなり、体が揺れ始める。

「今だ……」

 サウナ室を出て、すぐ隣の水風呂へと向かった。大人が2〜3人ほど入れるサイズの浴槽から手桶で冷水をすくって汗を流し、いざ水風呂の中へ。

「うおぉぉぉ〜〜〜!!」

 キンキンに冷たい。温度を確認すると15℃でバイブラは無し。僕の好きなタイプの水風呂だ。あまり深さは無いので肩まで浸かるためには少し横の体勢になる必要があるものの、僕のほかにお客さんは1人しか居なかったため、贅沢に使わせていただく。
 10秒、30秒、そして1分が経過。寒さで全身が震え始めた。僕はゆっくりと立ち上がり、ふらつく体のバランスを保ちながら露天スペースへと駆け込んだ。そして僕が選んだのは”ととのい椅子”でも”ととのいベンチ”でもなく、例の壺風呂だ。黒湯に全体重を預ける。

「ふわぁぁぁぁああああ〜〜〜……」

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※写真は女性側
(ドーミーイン川崎公式サイト: https://www.hotespa.net/hotels/kawasaki/spa/ )

 冷え切った体を優しく包み込む天然温泉。そして頬をかすめる冬の外気。あまりの気持ちよさに、思わず声を出してしまった。頭と共に脚を伸ばして浴槽の縁に乗せ、全身を脱力させる。もうなにも考えられない。そのまま視線を空に移すと、正面には月が輝いていた。ただひたすらに自分と向き合うことができる大切な時間だ。そっと目を閉じ、僕はこの幸せを噛み締めた。

 その後も2セットをいただき、部屋でリラックスしながら過ごしていると、時刻はドーミーイン名物の「夜鳴きそば」をいただくことができる21時半になっていた。
 エレベーターに乗って2階のレストランフロアへと移動すると、そこには長蛇の列が。おそらく30人ほどが並んでいたのではないだろうか。僕も最後尾に並ぶと、そのさらに後ろにも続々と他の宿泊客が並んでいった。

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 10分ほど並んでようやくオーダーできたのだが、後ろに並んでいた方が「大盛りで」と頼んでいて、まさかハーフサイズの夜鳴きそばをフルサイズにできる ”ドーミーインハック” があるなんて存じ上げていなかった僕は、思わず後ろを振り返ってしまった。

(※ちなみにドーミーインの夜鳴きそばは「おかわり自由」らしい)

 レストランは広々としていて、お客さんの数は多いものの座席には余裕があった。夜鳴きそばは相変わらずシンプルで美味しいのだが、やはりレインボーで食べた「らージョ」を思い出す。しかし、これが無料だなんて、いったいどこで利益を出しているんだドーミーイン。

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 食後は部屋で漫画を読みながら過ごし、時刻は深夜0時に。サウナは午前1〜5時まで使用不可とのことだったので、タイミングを見計らって再び15階へと向かった。浴場に入ると明らかに夕方よりも空いていて、ゆったりと寛ぐことができそうだ。

 再び1セットをいただき、”ととのい椅子” で呼吸を落ち着かせていると時刻は0時30分に。次で本日最後になりそうだと判断した僕は、2セット目では11分ほど蒸されてギリギリまで自分を追い込んだ。
 水風呂で1分経過。五感が研ぎ澄まされていき、視界がゆらいでいったところで露天の壺風呂に再び入浴。1分ほど体を温め直していると、呼吸は徐々に落ち着いていき、ゆっくりと立ち上がって ”ととのい椅子”に腰を掛けた。
 高層フロアの冷たい夜風が沁みる。何度か深呼吸をして至福の一時を味わったのち、その日は午前2時半頃に床に就いた。

 起床したのは朝6時半ごろ。サウナに入ると睡眠の質が向上するのか、普段よりも睡眠時間は短いもののすっきりとした目覚めだった。もちろん早起きの理由は「朝ウナ(※朝にサウナに行くこと)」である。

 さっそく浴場へ向かうと、早朝とはいえ僕のほかにもお客さんが何人かいらっしゃった。もしかしたら昨晩より少し多いかもしれない。
 体を清めて、まずは1セット。軽く7分程度蒸されてから、水風呂を経由して露天の壺風呂へ。ボーッと空を見上げる。

ーーやはり寝起きのサウナは格別だ。この非日常感がたまらない……。

 その時だった。新鮮な朝風を浴びながら、僕はあることをひらめいたのである。呼吸を落ち着かせて、さっそく2セット目へと向かった。
 今度は10分ほど蒸されて、シャワーで汗を流してから水風呂へ……は向かわずに、僕はそのまま露天スペースに移動し、”ととのい椅子”に腰を掛けたのだった。大きく息を吸い込み、ゆっくりと吐き出していく。

「なんだ……これは。めちゃめちゃ気持ち良いじゃないか」

 そう、これこそ今回ひらめいた「水風呂カット」である。以前にTwitterで見かけた方法なのだが、いざ自分でも試してみると、これがまた極上の快感なのであった。冷風が火照った体から熱を奪っていく。なんだろう、この充実感は。ここまで空気が冷え込むと、水風呂に入る必要はないのかもしれない。思考は徐々に停止していき、僕の意識は風に乗ってどこか遠くのほうへと浮かんで行ったのであった。

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ーーサウナ室から出たら水風呂に入る習慣が体に染み付いていたけれど、あえて違う方法を試してみたことで、サウナの新たな可能性に気付くことができたんだ……。

 やはり、やってみなければわからないことなんて腐る程ある。僕は湯上り後にテラス席で風を受けながら、そんなことを考えていた。
 何かを始めるのに、遅すぎるなんてことは無いのかもしれない。残りの人生の最初の1日が、今まさに始まろうとしていた。

(written by ナオト:@bocci_naoto)

YouTube「ボッチトーキョー」
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①僕たちは自費でサウナに伺います ②それでお店の売上が増えます ③noteを通して心を込めてお店を紹介します ④noteを読んだ方がお店に足を運ぶようになります ⑤お店はもっと経済的に潤うようになります ⑥お店のサービスが充実します ⑦お客さんがもっと快適にサウナに通えます