相対的な評価への絶対的な考え【麻布黒美水温泉 竹の湯@麻布十番駅】(2/2)
麻布十番駅に到着したのは20時半ごろ。今までは銭湯といえば混雑を避けるために平日のお昼過ぎに伺うことがほとんどだったが、最近は夜の時間帯であっても足を運ぶ機会が増えてきた。これは店舗さえ慎重に選べば混雑を避けられることに気づいたためだ。さすがに、人気が殺到し、グループ客の利用も目立つような銭湯に平日の夜の時間帯や土日に伺うことは、今の僕にはできそうにない。
今日は4月13日(火)、天気は曇り。いつ雨が降り出してもおかしくない空である。麻布十番は自宅からのアクセスが悪いわけではなく、その気になれば徒歩で移動できる距離感ではあるものの、今まで特に用事ができるわけでもなく滅多に訪れることも無かった。ただ、なぜかここに来るたびに高級住宅街らしからぬ居心地の良さを感じてしまう。どこか落ち着くのだ。
その街並みを眺めながら歩いていると、駅から5分ほどで目的地に辿り着いた。
「初めまして、竹の湯さん」
そう、今回訪れたのは「麻布黒美水温泉 竹の湯」だ。自宅からのアクセスが悪くなく、かつ平日の夜でも混雑を避けてゆっくり入浴できそうな銭湯を新規開拓したくて検索したところ、たまたまこちらがヒットしたのである。
竹の湯は過去に2回建て替えられているとはいえ、なんと1913年(大正2年)から営まれている老舗の銭湯で、その噂は以前から耳にしていたのだった。
竹の湯の名前は、ドラマ『サ道』を隅々まで観た人であれば聞いたことがあるかもしれない。竹の湯自体はドラマでは大きく取り上げられていないものの、その姉妹店である杉並区の「吉の湯」の話題が出た時に、「吉の湯で使われている黒湯は竹の湯から運ばれてきている」といった情報が明かされたのだ。つまり、竹の湯では黒湯に入浴することができるのである。
都内で「黒湯」といえば大田区や品川区あたりが有名なのだけれど、まさか都心の港区でも黒湯に浸かることができるだなんて、無類の温泉好きである僕が利用しないわけがなかった。
さっそく中に入り、今日もありがたく「037(サウナ)」の下駄箱を利用させてもらうことにした。この鍵にはカードキーがついていて、後から知ったのだけれど、脱衣所のロッカーはこのカードキーを挿さなければ施錠ができないシステムになっていた。
靴を預けてさらに奥に進むと受付があった。ここでサウナ利用の希望を伝えて900円を支払うと、先ほどのカードキーがついた下駄箱の鍵を回収され、それと引き換えに別のカードキーとタオルセット、そしてサウナ室用の鍵を差し出された。どうやら、サウナ利用者には専用のカードキーが渡されるようだ。ちなみにサウナは2時間制らしいけれど、それだけ居られれば十分である。
(東京銭湯: https://www.1010.or.jp/mag-tokyosento-azabutakenoyu/ )
男湯は受付に向かって左側にあり、暖簾をくぐった先にある脱衣所は、手入れが行き届いていて清潔感があった。
(東京銭湯: https://www.1010.or.jp/mag-tokyosento-azabutakenoyu/ )
そして、ロッカーに荷物を預けて準備を済ませた僕は、いよいよ浴室へと足を踏み入れた。
「お〜、良い雰囲気じゃないですか!」
(東京銭湯: https://www.1010.or.jp/mag-tokyosento-azabutakenoyu/ )
浴場はコンパクトな造りで、その収容人数は最大でも20人ほどが限界だろうか。といっても、今日は僕を含めても10人程度しかお客さんはおらず、そのうちサウナ利用者も4人ほどしかいなかったため快適に過ごすことができそうだ。
ただ、それ以上に僕の目を奪ったのは、なんとお風呂だけではなく水風呂にも使用されている黒湯だ。黒湯の水風呂といえば、武蔵小山の清水湯や久が原のCOCOFUROますの湯、蒲田の改正湯などで味わったことがあるけれど、その時の多幸感を思い出し、入浴前からすでに僕の気分は高まっていた。
カランやシャワーから流れるお湯も、さりげなく水道水ではなく地下水が使用されているそうで、その水質には全く文句の付けようが無い。僕はまず身を清めて、さっそく黒湯のお風呂に浸かってみた。
「えっ、なにこれ!!」
(東京銭湯: https://www.1010.or.jp/mag-tokyosento-azabutakenoyu/ )
竹の湯には41℃と44℃の温度別に2つのお風呂があり、そのどちらも漆黒のお湯がこんこんと湧き出ていたのだが、その手触りが非常に特徴的だった。今までいただいた黒湯の中でも特にぬめりを感じたのだ。とろとろしているというより、本当にぬるっとしていて肌に膜ができるようで、僕はその泉質に興奮した。
「では、そろそろ……」
僕は体が温まったところで立ち上がり、いよいよサウナ室へと向かった。タオルで全身の水分を拭き取り、ゆっくりと扉を開ける。
「ほぉ〜、なかなか味があるな」
(竹の湯公式サイト:https://takenoyuazabu.wixsite.com/takeno-yu/blank)
浴場と同じく、サウナ室もコンパクトで4人まで座ることができる2段構成。先客は2人いたが、上段が空いていたので僕はそこに腰をかけた。
この落ち着いた空間をガス遠赤外線ヒーターが96℃まで熱していたのだけれど、ストーブからの距離が近いために、体感温度は非常に熱かった。
竹の湯のサウナには、これといって特筆すべき点がない。強いて言えばラジオが流れているくらいか。といっても、これは悪い意味ではなく、良い意味で「過不足が無いサウナ」ということだ。だからこそとても落ち着くし、居心地が良く、自分自身の意識と集中して向き合うことができるのであった。
そのままじっとしていると3分ほどで徐々に全身から汗が流れ出し、8分ほど経過した時には呼吸は荒く、心臓の鼓動は激しくなっていた。先に蒸されていた人たちはいつの間にか退室し、贅沢にも貸切状態で熱を堪能していると、僕の身体にもいよいよ限界がやってきた。
「そろそろ出よう……」
僕はサウナ室を出てシャワーで汗を流し、その勢いのまま水風呂に沈みこんだ。
「うおおおぉぉぉおおお!! やっぱりすごいな!!」
(東京銭湯: https://www.1010.or.jp/mag-tokyosento-azabutakenoyu/ )
さすが黒湯である。しかも、調べたところ温かいほうのお風呂の黒湯は加水されているそうだが、水風呂の黒湯は源泉がそのままかけ流されているらしい。
その自然のエネルギーが豊富に溶け込んだ17℃の良質な冷水に身を委ねると、極上の快感を得ることができたのであった。肌あたりは優しく、しっとりと包み込まれるようだ。バイブラに羽衣を剥がされるものの、水温の低さに対して刺激は少なく、不思議とずっと浸かっていられた。
そのまま1分ほど経過すると、熱を帯びていた僕の身体は徐々に鎮められていき、呼吸もゆっくり、深くなっていった。
「そろそろ出よう……」
僕は最後に大きく深呼吸をして水風呂から立ち上がり、他のお客さんの邪魔にならないように浴場の隅に風呂椅子を置いて、壁にもたれかかって目を閉じた。次第に頭の中が空っぽになっていき、視界が歪んでくる。心臓の鼓動も徐々に落ち着きを取り戻し、全身が興奮状態から平常状態へと切り替わろうとしていることが自分でもわかった。この日常生活では感じ得ない独特な感覚を味わいに、僕はサウナに通っているのである。
「最高だ……」
竹の湯には ”ととのいスペース” はなく、言わずもがな ”ととのい椅子” なんてものもない。でも、それで良いのだ。自分の基準にサウナを合わせようとするのではなく、サウナに自分を合わせにいく楽しみ方を、僕はいつしか身につけていたのであった。
サウナに良し悪しは無い。もしも店舗によって相対的に優劣の差を感じるのであれば、それは自分自身の受け取り方に原因があるのだと思う。
竹の湯は、僕にとって普段使いに最適な銭湯の一つとして、これからも長く付き合い続けることになるだろう。
その後、僕はさらに1セット、合計2セットをいただいて、竹の湯を後にした。サウナは3セットの利用を推奨されることが多いけれど、この回数にこだわる必要はない。自分が満足できたかどうか、それが全てだと思う。
昨今の社会情勢において苦しんでいるのは、温浴業界も同じだという。僕は僕の「好き」を貫いて、これからも自分が楽しみたいようにサウナを味わい尽くそう。それが結果として温浴業界の貢献にも繋がることを信じて。
(written by ナオト:@bocci_naoto)
YouTube「ボッチトーキョー」
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①僕たちは自費でサウナに伺います ②それでお店の売上が増えます ③noteを通して心を込めてお店を紹介します ④noteを読んだ方がお店に足を運ぶようになります ⑤お店はもっと経済的に潤うようになります ⑥お店のサービスが充実します ⑦お客さんがもっと快適にサウナに通えます