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本当の人脈【新生湯@旗の台駅/荏原町駅】(2/2)

 人脈を作ろうとしている人ほど、その言葉の本当の意味を理解できていないことが多い気がする。大事なのは人脈を作ろうとすることではなく、「目の前にいる相手と向き合って価値提供し続けること」に尽きるのだ。その結果として人脈は築かれていくものである。つまり、人脈はただの結果であって、目的でも手段でもない。

 とはいえ、人脈作りに精を出すのも全くメリットが無いわけではないのかもしれないけれど、そうやって出会った相手との間に生まれる関係性は、ただの「知り合い」で終わることがほとんどである。
 雑草だらけの荒れた道が大量に自宅に繋がっていても、わざわざその道を通って遊びに来てくれる人なんていないのだ。そもそも、自宅自体に魅力がなければ誰も興味すら持ってくれない。
 したがって、道を整備する前に、まずは魅力的な家を立てなければならないのである。逆にいうと、誰もが羨むような豪邸を立てることができれば、道が多少整備されていなくとも人が集まるようになるし、誰かがその家を他の人に紹介してくれることもある。その上で、さらに道を整備することができれば、多くの人がその道を行き来するようになるだろう。

 僕が人脈を増やすことを目的としたパーティや名刺交換会などに顔を出さなくなった理由はこれに尽きる。たとえば、ビジネス関係のセミナーに参加をすると、必ずと言っていいほど最後の30〜60分程度は参加者同士の交流タイムになって、近くにいる人たちと名刺交換をする流れになるのだけれど、今までそこで出会った人たちとの関係性は結局「それっきり」になることが圧倒的に多かったのだ。いや、むしろそこから中長期的な付き合いに発展したことは無いかもしれない。
 たしかに「知り合い」は増えたかもしれないけれど、それは人脈とは呼べない。ただ荒れた道で繋がっただけの関係だ。気づいた時には雑草が生い茂り、誰もその道を通らなくなる。

 人脈とは、他人に価値提供した結果として築かれる信用の脈であって、それ自体を目的にすると徒労に終わることが多い。まずは自分自身が魅力的な家になれるように努力をして、その上で目の前の相手との間にきれいな道路を整備することができれば、すなわちそれが脈としての機能を持つようになるのだ。

 僕は現在、基本的に友人や知人から紹介された仕事だけで生計を立てているのだが、これは僕を指名してくれた相手の役に立ちたい一心で期待に応えた結果として信用を得ることができて、そこで築くことができた人脈を介してさらに別のお仕事をいただけているだけに過ぎない。
 あくまでこれは僕自身が経験したことに基づく持論ではあるけれど、人脈作りに努めたいのであれば、まずは自分自身の魅力を高めて、そして目の前にいる相手に120%の価値を提供し続けるのが最も有効なのである。普段、「人脈」という言葉を滅多に使うことが無かった僕は、知人と仕事の話をしている時に、たまたまその考えに辿り着いたのだった。

 今日は2021年3月18日(木)。僕はその知人に誘われ、ある会社の代表者を紹介していただくことになり、都内のカフェに赴いたのであった。その知人とは過去に仕事を通じて知り合ったのだが、今ではプライベートで食事に行くほどの仲になっている。もちろん僕はその知人のことを信頼しているけれど、その知人も僕のことを信用してくれているからこそ、今日のような機会を設けてくれたのだろう。
 結局、その経営者とはその場ですぐに仕事に繋がるような具体的な話まではできなかったものの、お互いのことを深く理解し合うことができ、今後に繋がるとても有意義な時間を過ごすことができた。

 予定を一通り終えて帰宅し、残っていた仕事を片付けると、時刻は20時半になっていた。今日は少し身体の疲労を感じていたので、普段は避けている平日の夜の時間帯ではあったが、どうしても銭湯に行きたくなってしまった。

ーーそういえば、以前も同じようなことがあったな。

 僕は荷物をまとめて再び電車に乗り込み、旗の台駅へと向かったのであった。

「お久しぶりですね、新生湯さん」

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 そう、僕は4ヶ月ぶりに新生湯へと足を運んだのだった。新生湯は男女週替わり制で、前回伺った時は「太陽の湯」だったが、今回は「大地の湯」を利用できるらしい。前回とは違った体験ができるとあらば、僕の期待も高まるばかりだった。
 さっそく暖簾をくぐり、前回と同じ「37(サウナ)」の下駄箱に靴を預けることにしたのだが、その付近に貼られているポスターは「黙浴にご協力ください」に変わっていた。

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 僕は前回同様に入浴料の470円とサウナ利用料(バスタオル付き)の230円、合計700円のチケットを券売機で購入し、受付を済ませて奥へと進んだ。
 大地の湯の脱衣所も太陽の湯と同じく年季が入っていて、良い意味で銭湯らしい、ノスタルジックな空間が広がっている。僕は早々に準備を済ませて、いよいよ浴室へと足を踏み入れた。

「なかなか良いじゃないですか!」

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(東京銭湯マップ: https://www.1010.or.jp/map/item/item-cnt-429 )

 新生湯は、「動」の太陽の湯と「静」の大地の湯の、コンセプトが全く異なる浴場を有する全国初の健康増進型銭湯である。たしかに、太陽の湯は「流水歩行プール」や「洞くつ風呂」といったレクリエーションの要素を持つお風呂が設けられていたが、それに比べると大地の湯は落ち着いて入浴をするための薬湯や広々とした露天風呂などで構成されていた。

 ただ、ひとつ気になったことがある、脱衣所を含め、浴場のいたるところに感染対策への協力を呼びかけるポスターが貼られていたのだ。それはまさに魔除けのお札のように、本当に見渡す限りどこを見てもポスターだらけだった。太陽の湯に伺った時も多少はマナーを促すポスターが貼られていた気がしたけれど、それを上回る量だ。いったいこの4ヶ月の間になにがあったのかと心配になるレベルだった。

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(新生湯公式サイト:http://www.shinseiyu.jp/guide.html )

 そのポスターに気を取られつつも、まずは身を清めて複数のお風呂で体を温めてから、さっそくサウナ室に向かうことにした。ドア付近のフックにあらかじめかけておいたバスタオルを手に取り、ゆっくりとドアを開ける。

「こっちのサウナ室のほうが広いんだな!」

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(ニフティ温泉: https://onsen.nifty.com/shinagawa-onsen/onsen016308/ )

 中は3段構成で、物理的には10人程度が座れるほどの広さがある。岩塩ブロックに囲まれたガス遠赤外線ヒーターによって95℃程度まで温度が高められたコンフォートサウナだ。その薄暗く落ち着いた小部屋の中で、バスタオルをサウナマット代わりに座面に敷いてテレビの音に耳を傾けながら静かに蒸されていると、じわじわと全身から汗が流れ出してきた。心臓の鼓動は激しくなり、呼吸も荒くなる。

ーーそろそろ出よう……。

 僕は立ち上がり、サウナ室を出て全身の汗を流してから、水風呂の中に肩まで沈み込んだ。

「おー、これは気持ちが良い!」

 水温は23℃と水風呂にしてはやや温かいのだけれど、これはこれでゆっくりと冷水を堪能できるので悪くない。さらに、水道水ではなく地下から汲み上げた天然水が使用されているためか、肌触りが優しいのである。これも新生湯の魅力のひとつだ。
 そこで1分ほど体を落ち着かせてから、その隣の高濃度炭酸泉に浸かってみた。熱いサウナと冷たい水風呂によって興奮状態にある僕の体を、39℃の優しいお湯と炭酸が包み込む。このふわふわと宙に浮いたような感覚を味わうことができる非日常感がたまらない。

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(品川区公衆浴場商業協同組合: https://shinagawa1010.jp/list/shinseiyu/ )

 それから露天スペースに移動すると、ゆとりのある広さが確保された露天風呂が視界に入った。ただ、それよりもさらに気になるものがある。

ーーなんだろう、この階段は。

 僕は気の赴くままに、その階段を上ってみることにした。

「うおおおぉぉぉおおお!! これはすごい!!!」

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(品川区公衆浴場商業協同組合: https://shinagawa1010.jp/list/shinseiyu/ )

 なんと、露天スペースには外気浴に最適なウッドデッキが構築されていたのだ。幼い頃に実家の屋根裏部屋にこっそり入った時のような高揚感を覚えた。ここには ”ととのい椅子” が2脚と2人掛けのベンチが2つあったので、一番奥にあった椅子に腰をかけ、大きく深呼吸をしてみる。

「はぁ〜……最高だ……」

 3月とはいえ、夜の気温はまだ冬のままだ。その冷たい外気を肺に取り込み、火照った体を徐々に鎮めていくと、次第に全身が脱力していき、頭の中がぼーっとしてきた。そして、それと同調するかのようにさまざまな思考が巡り始めたのだった。

 そういえば、GOの三浦さんは先の新R25のインタビューで「人脈」についてこのようにも語っていた。

とにかく自分自身が何かの主語になるしかない。徹底的に主語でありつづければ、人のつながりなんて自然と生まれてくるんだよ。
(新R25: https://r25.jp/article/594716547748366293 )

 三浦さんの言葉を借りるわけではないけれど、僕自身もまさに同じようなことを今日の打ち合わせで知人に伝えていた。人脈は結果であって、それ自体を目的にした瞬間に味気がなくなる。それは、人間をモノ扱いしているようなものではないかと思うのだ。
 人脈とは、その字の如く「人の脈」と書く。そして脈とは「流れを繋ぐもの」のことだ。いつ切れるかわからないほど細くて脆い脈をたくさん持つよりも、太くて丈夫な脈を一本でも持っていたほうが、力強い流れが生まれることは間違いない。人脈は、自分と目の前の相手との間に生まれる価値の受け渡しの度合いが大きければ大きいほど、太く、強く、丈夫になるのだ。

ーー目の前の相手に喜んでもらうためにはどうすればいいか、それだけを考えてこれからも生きていきたいな……

 結局、その日はそれからさらに3セット、合計4セットを贅沢にいただいてから帰路に就いた。僕は帰りの電車の中で、あの知人と経営者に今日のお礼のメッセージを送信したのだった。

(written by ナオト:@bocci_naoto)

YouTube「ボッチトーキョー」
https://www.youtube.com/channel/UCOXI5aYTX7BiSlTt3Z9Y0aQ

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