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勇気ある姿勢【カプセル&サウナ みづほ@大森駅】(1/2)

 もうすぐ、会社を辞めて独立してから丸2年が経つ。今だからこそ言えるけれど、独立を決意した時は「もしかしたら仕事がなさすぎて生活ができなくなるかもしれない」と不安になっていたこともあった。しかし、いざ独立をしてみると、意外にも毎月なにかしらの仕事を得られるようになっていたのである。

 ただ、会社員時代と比べて収入の水準は下がっていないものの、フリーランスになったことで「会社員ならではのメリット」にも気づくようになった。それは、情報のキャッチアップである。
 僕が主に仕事で関わっているWebマーケティングの領域は、日々新しいトレンドや話題が生まれている。会社員だった頃は、特に意識をせずとも社内でそのような情報共有が行われていたために、僕の知識も常に最新の状態にアップデートされていたのだけれど、フリーランスになってからは意識的に情報を取得しにいかなければ時代に取り残されてしまう可能性を感じるようになったのだ。
 そこで、僕は同じ業界で働いている優秀な方々をSNSでフォローしつつ、僕と同じ立場であるフリーランスとして働いている友人たちとも情報交換をし合う機会を設けるようになった。僕がなんとか生活できているのは、間違いなく友人や知人の存在が欠かせないだろう。

 そんなある日のこと、僕はいつも通りフリーライターの女友達と連絡を取り合ってお互いに近況報告をしていると、どうやら彼女はさまざまな悩みを抱えているようだった。
 彼女の年齢は20代後半で、つい最近恋人との同棲を解消したばかりだそうだ。現在恋人はいないものの結婚願望は強く、しかし恋愛では自分の思った通りにならないことばかりで苦労が絶えないらしい。
 それだけではなく、仕事に関しても取引先である編集部のスタッフに対してストレスを抱えることがよくあるそうで、総じて今後の人生そのものに希望を持てていない様子だった。

 そんな彼女と話をしていると、僕はあることに気がついた。僕がなにを言っても「でも……」と否定の言葉が返ってくるのである。正直、僕はこの時のコミュニケーションが全く気持ちよくなかった。

 たとえば、僕は普段サウナに通っていて、20〜30代のサウナ利用者が増加傾向にあることを肌で感じているのだけれど、彼女自身はサウナに通う習慣が全く無いにもかかわらず「でも、私は女性にはサウナは浸透しないと思う」と僕が聞いてもいない意見を伝えてきたのだ。
 僕としては女性にサウナが浸透しようがしまいがどちらでも良いのだけれど、わざわざ「社会的にはこういう空気感があるけど、私は実際は違うと思う」と頑なに自分の意見を主張してこられて、僕は少し気が滅入ってしまった。
 ただ、彼女がなぜそのようなことを考えて僕にその意見をぶつけてきたのか、その理由や意図を知っておかないとコミュニケーションロスが発生してしまうと思ったため、念のため彼女の話を詳しく聞こうと試みたものの、やはり彼女の主張には特に根拠がなく、ただ感覚的に自分が正しいと思ったことをあたかも正論であるかのように僕に繰り返し伝えてきているだけだったのだ。

 主張の根拠が客観的な事実ではなく個人の主観によるものである場合、それに対してこちらが冷静に反対意見を伝えたところで納得してもらえないことは今までの経験で学んできていたし、ここで僕が「その考えは間違っている可能性が高い」と主張をしたところで無意味であることは予想できていたために、僕の頭の中は「ああ、この人は僕がどんなに客観的な事実やサウナを利用している当事者ならではのリアルな情報を伝えても、自分の意見を変えられない人なのだろうな」と、ある種の諦めのような感情が支配していたのだった。それと同時に、彼女が仕事にもプライベートにも悩みを抱えているのは、基本的にそのようなスタンスで他人と接しているためなのではないかとも思ったのである。
 僕が個人で運営しているnoteのサークル『#noteゼミ』でも、つい最近「ライターとしてメシを食っていくための考え方」というテーマでフリーライターとしての心構えについて自らの経験をもとに持論を展開したけれど、そもそもコミュニケーションスキルが無いライターには、いくらライティングスキルがあったとしても将来が無いと思っている。ライティングスキルを磨いたところで、仕事で関わる相手とのコミュニケーションがお互いに気持ちよくなければ、同等のライティングスキルを持っている別のライターをアサインされる可能性が高いためだ。

 僕は普段、自分と違う価値観を持った人と接する時は、まず相手のことを理解しようと努めている。表面的な情報と勝手な思い込みだけで相手の印象を決めてしまうことによって、何度も苦い経験をしてきたからだ。
 したがって、僕がもしも彼女の立場だった場合、まず「女性の間でサウナは本当に浸透してきているのか」「それはなぜなのか」「そもそもサウナの何が良いのか」などの話を、自分よりもサウナについて詳しい僕に対して聞いていただろう。

 自分と異なる意見や自分の価値基準から超えているものに対して、真っ向から拒否反応を示さずに一度受け入れようとしてみる姿勢は、人生を明るくしてくれることが多い。一度受け入れた上で結果的に「やっぱり価値観が合わないな」と思うことはあるにせよ、そのような勇気を持つことで見えてくる世界があるのだ。

 僕はそんなことを、大森にあるカプセル&サウナ みづほの「トロンサウナ」の中で考えていたのだった。

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ーー後編に続く

(written by ナオト:@bocci_naoto)

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①僕たちは自費でサウナに伺います ②それでお店の売上が増えます ③noteを通して心を込めてお店を紹介します ④noteを読んだ方がお店に足を運ぶようになります ⑤お店はもっと経済的に潤うようになります ⑥お店のサービスが充実します ⑦お客さんがもっと快適にサウナに通えます