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座禅とメモ

 いろいろと思い悩むことが多かった2021年が終わった。

 このなかで、不安や悩み、焦燥感などを落ち着かせ、自分なりに冷静に考えを整理するのに大きな糧となったのが、座禅とメモである。

朝、5分だけの座禅

 人は、日頃から一日に、何千、何万と色々な思いを浮かべているという。とくに困難にぶつかると、ああでもない、こうでもないと、色んな思いが頭をめぐる。近い未来、遠い未来について、いろんな不安が起こってくるし、過去のことについても、ああすればよかった、こうすればよかったと後悔や残念な思いもおこったりする。そんな思いが、ぐるぐるめぐるほど、不安と焦燥の壺の中にはまっていく。

 そうしたなかで、数年前にマインドフルネスに触れたのをきっかけに、その源流である座禅を取り入れるようになった。毎朝、たった5分間だけだが、ベランダの外を見ながら座禅をする。姿勢を調《ととの》え、呼吸を調え、心を調える。朝の新鮮な空気を5~7秒かけて吸い込み、約10秒かけて、ふぅーーと吐き出す。嫌な思いや悩みと一緒に吐き出す。息を吐きだすたびに、ひとーつ、ふたーつと数え、十まで行ったら、また一つから始める。こうして、数を数えることに意識を集中することで、あれこれ思いがめぐるのを一時的に止める。でも、そうはいっても呼吸に集中できず、あれこれ気にかかることが頭に浮かんでる。だからと言って、それが悪いと自分を攻めるのではなく、ああ、そんな自分がいるんだと観察して、その思いをまた横に置いて、また一から数えなおす。これを禅では、数息観(すそくかん)と言う。

 この座禅は、長時間使いすぎて動作が遅くなったコンピュータを再起動するようなものだと思っている。いろいろな思いや悩みの無限ループを短時間でもリセットすることで、自分を客観視できたり、自分がつまらないことに執着していることに気づいたり、自分を活かしてくれている人々に感謝できるようになったりする。

 私は座禅あるいは、瞑想をしている途中に、考えを整理できたり、良いアイデアが浮かぶのかと思っていたのだが、そうではなさそうだ。座禅中にそんなことを考えていたら「再起動」にならない。座禅を繰り返していくうちに、だんだん心が調ってきて、いろな気づきがでてくるようになるようだ。

メモで気づきを言語化

 だが、座禅で少し心が落ちつき、なんとなく、この方向がいいんじゃないかという思いが出てくるが、なぜかそれが整理できないし、言語化できない。やはり、いろんな思いが頭の中でぐるぐる回っている。

 そうした中で、『メモの魔力』という本に出合った。

 著者の前田祐二さんという人物は、とにかくメモを取りまくるそうだ。そこでやっていることは、①まずファクト(事実)を書く⇒②ファクトを抽象化(普遍化)する⇒③ほかに転用できないかを考えるーーーということだ。

 たとえば、自分が目にしたものに「面白いな!」と感じたとしたら、なぜ、自分はそれを面白いと思ったのかーーWhyーーを問うことを通して、自分はどういうことを面白いと思うかという抽象化につながるという。メモの本質は、振り返りーーそこから抽出することへの学びであり、それがいろんなアイデアにつながったり、ものごとを整理し、構造化することに役立つのだと言っている。

 さらに前田さんは、自分にとってメモを取ることは、たんなるノウハウではなく、「生き方」なんだと言っている。メモを取ることは、自分を客観視することにもつながると。たとえば、自分がどういうことに面白いと感じるかーーーということを突き詰めていくと、それはこれまでの自分の人生ーーとくに、中学生のころまでの自分の人生で得てきた体験などがかかわっているということだ。前田さんは、自分の子供のころの恥ずかしい経験も含めてこの本のなかで吐露しているので、余計に説得力がある。

 これを読んで以来、私もとにかくメモを取ることにした。あれこれ、悩み、思いがめぐることがあったら、それをメモする。座禅の効果で、何かあらたな気づきがあるときは、それもメモする。もちろん、アイデアなどが浮かべばそれもメモする。そして、それをときどき、振り返る。前田さんのように、抽象化、転用ができるときは、する。とくに、座禅での気づきをメモにして、言語化していくと、それがずっと整理できる。さらにそれを抽象化し、一般化すればさらにしっかりとしたものになる。

 メモの基本は、iPadとAppleペンシルによる手書き。手書きの方が、より自由に自分の意見をまとめらめられる。自分の考えを図にするんもやりやすい。紙とペンにより手書きも併用しているが、iPadだとこれ1つでどこへも持ち運べ、人に読まれる心配もなく、表題で検索もできるので便利だ。

 手書きメモである程度考えがまとまると、それをもっと精緻に組み立てていくのは、WordやPowerpointの方が良い。とくに、人にたいしてアプトプットしていくうえでは、これが不可欠だ。

「調」(ととのえる)と「整」(ととのえる)の組み合わせ

 座禅で、姿勢、呼吸、心をととのえるという場合、「調」という字を使う。メモで自分の考えをまとめるのは、「整」の方の字だ。「調整」とまとめてしまうと、なんだかつまらないが、本当はもっと深い意味があるのかもしれない。

 ともかく、座禅とメモの組み合わせ、これがなかなかいいのではないかというのが、私の2021年の最大の発見だった。


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