【漢詩解説】『後半』岑参:轮台歌奉送封大夫出师西征〈書き下し文・日本語訳〉*白文音声あり*
岑参:輪台の歌、封大夫の出師西征を送り奉る
※長い詩のため、今回は後半として
「虏塞兵气连云屯」から「今见功名胜古人」
までを解説したいと思います。
前半はこちら。
【書き下し文】
虜塞の兵気 雲に連なって屯り、
戦場の白骨 草根に纏う。
劔河 風急にして 雲片闊き、
沙口 石凍って 馬蹄脱す。
亜相勤王 苦辛を甘んず、
誓って将に主に報じ 辺塵を静めんとす。
古来 青史 誰か見ざらん、
今見る 功名の古人に勝れるを。
【日本語訳】
辺塞の兵気 天に立ちのぼり
戦場の白骨は草根にまとう
剣河は突風が吹き
片雲たちまち空に闊がり
沙口の石は凍って
馬の蹄も脱れやすい
封大夫が勤王の志厚く
いかなる辛苦もものともせず
誓って天子のおんために
辺境の胡を静めようと
古来歴史に人はあれど
今ぞ見る封大夫の功名の
古人にとおく勝れることを
【解説】
こちらの記事をご覧ください。
【用語説明】
虏塞…辺境の最前線のとりで。
兵气…戦の気配。
剑河…未詳だが、青山(蒙古)の東にある川という説がある。
云片阔…雲が一面に広がっている。
沙口…未詳。塞外の地。
马蹄脱…寒さで馬蹄が地に凍りつき、ひづめから外れてしまうこと。
亚相…漢代、御史大夫は宰相に亜ぐ位だったので、亜相と呼ぶようになった。
この詩では封大夫のこと。
勤王…勤王は国のために尽くす。
青史…歴史。昔、紙の無かった頃は竹簡・木簡によって記録をとどめたので、竹の青さから青史と言うようになった。
漢詩解説は以上になります。
「青史」という言葉の由来が興味深いですね。
読み上げのたびに思いますが、作者の名前の発音がかなり難しいです。
こちらも同じ作者の詩。
慈恩寺の西に建てられた塔からの眺めを、
仏教の世界観と共に語っている美しい詩です。
個人的に今回紹介した詩より好きなのですが、
スキがひとつも付かないのが残念に思います。
この詩を美しいと思ってくれる方がいれば嬉しいです。
余計な話しが多くなって申し訳ございません。
この記事が漢詩や中国語に興味のある方に届いていれば幸いです。
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