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【漢詩解説】『前半』岑参:轮台歌奉送封大夫出师西征〈書き下し文・日本語訳〉*白文音声あり*

岑参しんじん輪台りんだいの歌、封大夫ほうたいふ出師すいし西征せいせいを送りたてまつ

台歌奉送封大夫出西征
岑参
台城夜吹角,台城北旄落。
昨夜渠黎,于已在金山西。
戍楼西望烟
黑,汉军屯在台北。
上将
旄西出征,平明吹笛大行。
伐鼓雪海涌,三大呼阴山
虏塞兵气连云屯,战场白骨缠草根。
剑河风急云片阔,沙口石冻马蹄脱。
亚相勤王甘苦辛,誓将报主静边尘。
古来青史谁不见,今见功名胜古人。

※長い詩のため、今回は
台城夜吹角」から「三大呼阴山
までを解説したいと思います。

【書き下し文】

輪台城頭りんだいじょうとう 夜 かくを吹き、
輪台城北 旄頭ぼうとう落つ。

羽書うしょ 昨夜 渠黎きょりを過ぐ、
単于ぜんうすでに金山の西にり。

戍楼じゅろう西に望めば烟塵えんじん黒く、
漢兵たむろして輪台の北庭在り。

上将じょうしょうぼうようして 西にせいし、
平明へいめい 笛を吹いて 大軍行く。

四辺 鼓をちて 雪海湧き、
三軍 大呼たいこして 陰山動く。


【日本語訳】

輪台城頭 夜 角笛がひびき
輪台城北に胡星えびすぼしが落ちた

昨夜渠黎きょりから急使きゅうしが来て
単于ぜんうがすでに金山の西に出たという

戍楼ものみやぐらから西を望めば
烽煙塵埃のろしじんあいが黒く天をおおっている
わが軍もこれに備えて
輪台の北に集結した

将軍は旗押し立てて西に向かい
あかつきに笛を吹いて大軍が出発した

四辺の太鼓に雪海湧き
三軍の雄叫びに陰山いんざんも動く


【解説】

この詩は唐玄宗天宝十三載(754)
または十四載(755)の9月に作られました。
舞台は輪台。
当時、岑参は安西北庭節度使判官を務めていました。この詩は封常清の西征出兵のために作られた
見送りの詩で、『走馬川行奉送封大夫出師西征』
と同じ時期、同じ出来事、同じ人物に贈られた作品です。


【用語説明】

…新疆ウイグル自治区の輪台。西域地方に属する。

封大夫…|封常清《ほうじょうせい》のこと。蒲州の人で、安西副大都護とご、安西四鎮節度副大使にぬきんでられ、次いで北庭都護、持節伊西節度使に任ぜられた。
作者岑参は安西北節度判官として、封常清に従って西域に赴いた経験がある。

唐代、安西都護府は亀玆きじ(新疆ウイグル自治区庫車クチャ)に、北庭都護は庭州ていしゅう(新疆ウイグル自治区烏魯木斉ウルムチ)におかれていた。
西征とは、この方面へ出征すること。

…軍中で用いたラッパのような管楽器。画角ともいう。

…旄頭は星の名で、昴のこと。
昴は胡人(匈奴)の象徴で、星が落ちる(流れ星)のは胡人が勢力を失う兆しだった。

羽檄うげきのことで、軍中から発する緊急の檄文。

渠黎…漢代の西域国名。現在の新疆輪台の南東にある。

…漢代匈奴王の称号。これは西域遊牧民族の首領を指す。

金山…アルタイ山脈のこと。新疆ウイグル自治区とモンゴル共和国との境をはしる山脈。

戍楼…国境警備の物見楼。

上将…大将軍、封常清をさす。

旗竿はたざお犛牛りぎゅう(ヤク『偶蹄類の動物』)の尾の飾りがついた旗。

平明…明け方。

雪海…西域湖の名前。パミール高原から天山山脈中の万年雪のある場所。

阴山…内蒙古自治区、オルドス地方の北方にある東西にはしる山脈。古来、匈奴の根拠地だったが漢の武帝のとき匈奴を討ち陰山を奪い、以後匈奴の勢力が後退した。



漢詩解説は以上になります。
今回の詩は、昴星の話しがとても興味深かったです。
後半の解説は明日、投稿します。

前回までは、漢詩解説と並行して
夫の出身である徳島や、現在住んでいる
沖縄のスポットを紹介していましたが、
今回から無くすことにしました。

理由としては、
漢詩の内容に集中してもらえるため
思い出の安売りをやめようと思ったため
などです。

また、今までのプライベートな投稿は
削除する予定はありませんので、これからも
引き続きお読みいただけます。
ぜひ、観光する際の参考としてお使いください。

徳島、沖縄のスポット紹介はまた、
ひとつの記事にまとめて投稿する予定です。


余計な話しが多くなって申し訳ございません。
この記事が漢詩や中国語に興味のある方に届いていれば幸いです。

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