#恋愛小説
わたしの、優しい悪魔【後編】
前回のお話はこちら……↓
いったい、雪人のほんとうの顔はどれなのだろう。
夕飯を作りながら、わたしはときおり雪人のことを思い出し、ぼんやりとしていた。裏表のある人だとは思う。けど、彼の本心が何なのかがよくわからない。
(わたしのスマホに自分の番号を登録したのって、心配だったから?)
深読みし過ぎだと自分でも思うけど、そう信じたくもあった。
ちくわとピーマンのきんぴら、豚肉の塩ダレ焼き、
わたしの、優しい悪魔【前編】
その日のバス停には、誰もいなかった。わたしと彼以外には。
キャンパスから出たら鼻の奥が、つん、と痛くなって、手のひらで鼻を覆うと雪が指先についた。12月の初めに降った雪はまだ小さく、少し湿り気を帯びたそれは、石畳の階段に音もなく吸い込まれていく。わたしは剥き出しの手に、はあ、と温かい息を吐きかけながら、正門を抜け、目の前にバスが通り過ぎて行くのを、あ、と間抜けにも口を開いて見送った。そして通
やすらかに眠りなさい
離さないで、と浩一はいった。少し怯えた声で、離さないで、と強くいった。
眠る間際になると、いつも浩一は不安がった。私がベッドから離れようとすると、浩一はびくりと身体をふるわせて、私の腕を引っ張った。どこにいくの? 行為のあとだから、なおさら、浩一は不安になるらしかった。
どこにもいかないよ、ただ水を飲むだけ。そう答えて、ようやく浩一の顔が少し緩んだ。すぐ戻ってきてね、と浩一はいう。でもその声