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(番外編)私たちはどう生きるか

「君たちはどう生きるか」
宮崎駿監督はこれまでの歴史を辿り、この作品でぶつけてきた。
私は突然遺言状を差し出されたような寂しさが胸につっかえている。

※お断り※
以下ネタバレを含みます。というか見ないと理解不能な書き方をしますので、ご覧になってから読んでいただくと良いのかと思います。

ひさびさの記事になりました。
3か月何してたか考えましたが、バードウォッチング遠出ということもせず、畑で作物を育てていましたね。暑さや鳥と闘いながら。笑
ま、そのことは夏が終わってから書こうと思います。

さて。
ジブリファンであり、野鳥好きである私が、アオサギの絵コンテ見たら期待しない訳ないですよね?
映画をようやく鑑賞してきたので、感想や考察など書いていこうと思います。
まもなく発売になる雑誌のSwitch9月号で監督の思いが語られるようなので、自分の気持ちが塗り替わる前にまとめておきたいなと思った次第です。


1.キャラクターと声

まずサギ男(アオサギ)の中身がハゲたオッサンには驚愕でした。
あんまり良い役ではないと事前情報があったので、性格の悪いクールなイケメンを想像してましたが、見事に打ち砕かれました。
それで声優が菅田将暉??!で、頭は混乱です。

プロモーションも無ければ、物語のネタバレも見ないで鑑賞することを貫いたので、勝手なイメージを抱いていた訳ですよ。“ジブリといったらこーいうキャラ設定だろう”とか。
ショック受けて劇場に足を運ぶ気力を少し失いましたからね。笑

サギ男

でもジブリを映画館で見てきたことを、ここでやめたくなかったんですよ。(意地です。)
結果、見て良かったと思っています。
この場面のサギ男の表情が悪そうなんですが、やり取りは面白くて。
鷺は見た目で判断しちゃだめですね?

また菅田将暉がここまで違和感なく演じていることにも驚かされましたし、映画の中で強烈な印象を残すキャラクターなので、単独ポスターになったことに納得できました。

眞人とサギ男

主役の眞人との絡みも強烈で、敵対する二人が互いを受け入れていく様子は社会人の上下関係を見ているかようでした。
扱いづらい新入社員に、社会に揉まれて捻くれた管理職が小言言いながらバチバチやってるのに、徐々に助け合って、さらっと退職していく。
結果眞人の成長に繋がるので、サギ男が導いたことには間違いないです。
繰り返し言いますが、サギ男に声を吹き込んだ菅田将暉が凄いです。
勝一登場には木村拓哉だ!でしたけど。笑
ハウルじゃなくて、木村拓哉だ!です。

主役の眞人については言及しませんが、背負う物が多くて苦しむ場面もあるので影の印象を持ちますが、最終的にはアシタカみたいな芯の強さがある青年でしたね。

ジブリの主役といったらこう!っていうキャラクターだったのがヒミ。天真爛漫かつ芯のある女性。

ヒミ

料理うまくて、ポジティブで、最強ママ。
男性が抱く理想の女性像のような。
(女性が抱く憧れの女性像ではない。)
ジブリといえばナウシカ、サン、ソフィーなど、ヒロインの独身が多いことに対して、今回は「子どもを産む女性」がポイントになっているので、珍しい設定だと思います。
…魔女の宅急便に出てくるパン屋のオソノさんを可愛くした感じかな。

これは私の感覚ですが、この映画に出てくるキャラクターは、前にどこかで見たような…が多いです。
例えばですが、
婆ちゃん達→爺ちゃん達(風の谷のナウシカ)
      婆ちゃん達(崖の上のポニョ)
夏子→エボシ御前(もののけ姫)
老ペリカン→乙事主(もののけ姫)
ワラワラ→こだま(もののけ姫)
キリコ→リン(千と千尋の神隠し)
インコ→湯屋で働く人たち(千と千尋の神隠し)

もう、大伯父に関しては宮崎駿監督に見えてしまいます。


2.鳥好きが鳥嫌いになるような

まぁサギ男の登場は不快感を抱くので、出てくる鳥=厄介者の印象を持ちます。
現実的に鷺は大型で鳴き声もうるさく、鷺山は糞害で木を枯らすし、厄介に思う方もいらっしゃるでしょう。正直、私も好きではありません。

インコも外来種の持込で野生化した問題に重なり、インコの国も狂気的に見えます。ですが、それでもその世界に営みがあることを認識して、生物の共存を問うところもまた、監督らしい表現です。

ペリカンに関しては海洋環境問題を思い起こしました。
老ペリカンが言ったセリフをはっきりとは覚えていませんが「住む場所を追われ、食べるものがなくなり、仕方なく他の命を襲うようになった」という表現があったかと思います。
もののけ姫では森、この映画では海。
いずれも人の手で奪ってきた現実を突きつけてきます。

この映画は鳥の声で警鐘を鳴らしています。

鳥が終始不快なまま終わる方には、難解な映画かと思いますね。

意図する仕掛けかどうかは分かりませんが、眞人が疎開したお屋敷シーンでは(姿はないのに)シジュウカラの鳴き声が聞こえてきたり、一瞬のどかさを感じとれる場面がありました。
最終的にはサギ男も眞人を助けるので、優しさも感じとれます。

脱線しますが、眞人がサギ男の抜け羽を使って矢を作るのですが、使った羽が「風切りの7番か!」と焦る場面があるんです。
これって鳥好きな人しかわからない用語ですよね。笑
飛ぶために重要な羽だったことから、初列風切り羽の7枚目を指しているのではないかと想像しました。7列風切り羽なんて無いので。


3.どう生きるか

命を繋ぐことであったり、命を維持するための犠牲であったり、命の尊さを痛感します。

ワラワラ


私は何度も泣いてしまったんですが、キャラクターまで素直に泣くんですよ?
“ここで泣かせないでよ〜、まだ後半に堪えておきたいのよ〜”と内心思いつつ、溢れる自分の情緒が心配になりました。笑

助けに行く夏子とばあちゃんたち

さておき。
この映画で大伯父が宮崎駿監督に見えてくる理由ですが、まず大伯父が「才能溢れる人でいろんな物を作ったけど、頭がおかしくなって突然居なくなった」と言われていたり。
13個の石(映画?)を積んで世界の均衡を保とうとしているけど、後継ぎには断られるとか。
監督がこれまでの作品を自虐的に表して、自分がいなくなった後の未来を案じているのではないか?と感じてしまったからです。
(あくまで私の感想です。)



スタジオジブリ存続に対する考察される方も居ますが、生命や環境問題に触れているので私はもっと広い問題提起ではないかと思いました。
仮に監督がこの映画で自分の意思を示してるとしたら、大伯父は石(自分の世界)が崩されても一切抵抗せず、後世に委ねます。

大伯父



意思は伝承しても、自分の真似ではなく、古い考えは捨てて自分たちの考えで時代を生き抜け。
というメッセージと捉えています。

墓の主が誰なのかわからない門に「我を学ぶものは死す」と書かれているのは、“己の道を行け”ということでしょうか。
いくつか消化不良な場面はあるので、Switch読んで答え探ししてみますかね。


見た人に「これから君たちはどう生きるのか」を問う、感慨深い映画になりました。
ジブリ史上難解で意見が割れるのは、正解が無いから。
それが「飽き足らず描いていく地球儀を回すように」生きるってことですよね?米津玄師さん。

見るか迷っている方は見ることを薦めます。
ただ情報量が多いだけに、余韻も凄いので、心に余裕を持って見てくださいね。


この記事、約3000文字になってしまいました。
最後までお読みいただきありがとうございました。
近いうち鷺の写真でも撮りに行きますかね。

ではまた!

いただいたご支援は活動に活かします。良い双眼鏡を買えるように頑張って記事を書きます。