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思想と表現をつなぐ、ストラテジーとクリエイティブのあるべき関係

戦略デザインファーム・BIOTOPEの「らしさ」をご紹介する本連載。この記事では、BIOTOPEのクリエイティブとストラテジーの関係について、過去事例を交えながらお伝えします。

佐宗邦威◎BIOTOPE代表。P&Gにてファブリーズ、レノアなどのヒット商品のマーケティングを手がけたのち、ジレットのブランドマネージャーを務めた。ヒューマンバリュー社を経て、ソニークリエイティブセンター全社の新規事業創出プログラム(Sony Seed Acceleration Program)の立ち上げなどに携わったのち、独立。

山本康喜◎デザインストラテジスト・デザインエンジニア。慶應義塾⼤学メディアデザイン研究科修了。Royal College of Art への交換留学。PwCコンサルティング・Experience Centerにて、消費財企業のVR PoCの導⼊⽀援。AIを経営に活用する新ソリューションの⽴ち上げ。ロボットベンチャーの新規事業機会創出の⽀援に携わる。

永井結子◎コミュニケーションデザイナー。ロフトワークにクリエイティブディレクターとして従事。その後、グラフィックレコーダーとして独立。ワークショップ等の対話の場を通じて、ビジネスシーンにおける想いや背景の文脈をグラフィックを用いて可視化し、より心地よく現場に浸透していく情報表現を追求。

始まりは、ストラテジーを形にするクリエイティブ

佐宗 2015年の創業当初から、ビジネスとデザインの掛け合わせで新しい価値を産んでいくイメージは持っていました。まず、新規事業やビジョンをつくるとき、ストラテジストがワークショップのファシリテーションを担い、想いを引き出すことで事業やビジョンの原型を創り、デザイナーが形にして世の中へ送り出していく、そんなイメージです。

ストラテジーだけだと概念で終わってしまうので、世の中に向けて形にしていくクリエイティブを担うチームの必要性は感じていたんです。なので、創業時からイラストレーションやグラフィックができるデザイナーは所属していました。それをチームとして組成したのは2021年、最近ですね。その後編集者やエンジニアといったメンバーが加わったこともあり、フォーマットを問わずに形にしていきたいという意図から「クリエイティブチーム」という名前にリネームしました。

永井 チームが編成されるまでは、クリエイティブメンバーとストラテジーメンバー間のコミュニケーションが難しかったんです。両者ともがプロジェクト内でどう関わればよいか分からず、手探り状態。私のようなデザイナーができることといえば、納品資料の見た目を整えるくらいという状況でした。

それを改善するために、まずはクリエイティブメンバー同士が横のつながりを持って、相談し合えるチームをつくろうと。それから、コンセプトやデザインフィロフィーをどうアウトプットに反映すべきかについてチームで話し合えるようになりました。

佐宗 ストラテジーとクリエイティブのバランスについては、いまでも悩み続けています。正直、両者が完全に並び立つのは難しい感覚はある。だけど、チームになってから対立構造ではなく、独自の役割として相互補完できるようになってきていると思います。

山本 僕もそう思います。ストラテジーメンバーはフロントに立ち、クライアントの想いややりたいことを引き出しながらプロジェクトを進めていきます。そんなとき、クリエイティブチームは良い意味で一歩引いた目でプロジェクトを俯瞰できるメンバーが多いので、「クライアントはああ言っているけれど、こうすべきだと思う」という自分たちの意志を吹き込んでくれるんです。

クライアントの想いややりたいことを受け止めつつ、自分たちの意志も持つ。その両方を行き来することで、クライアントのビジョンを描いていくことができる。クリエイティブチームは、そんな均衡を保つ存在だと思います。

白馬村のサーキュラービジョン
https://biotope.co.jp/project/2022/04/12/3175/

企業が持っている可能性に気づくデザインへ

佐宗 BIOTOPEのクリエイティブチームの強みは、経営レベルの議論を理解し、可視化することで解像度を上げられること。特に経営レベルの議論は高い専門性と経験が求められます。でも、クリエイティブチームのメンバーはその難易度の高い議論を理解しながら、クライアントがぼんやりとしか見えていない未来像や想いを具現化して解像度を上げたり、個性や独自性を見つけたりすることができる。BIOTOPEには欠かせない重要な役割を担っていますね。

永井 クリエイティブチームのメンバーは、制作フェイズだけではなく、プロジェクトの最初から議論に加わっています。だから、プロジェクトのディティールだけでなく、クライアント一人ひとりのキャラクターや口癖までも把握できる。最終的な形に落とし込むときにも、クライアントに寄り添ったクリエイティブがつくれるのだと思います。

山本 クライアントに「寄り添う」だけでなく、クライアントも見えていない自分たちの良さや世界観を具現化して提案することで新しい視点や気づきを与えることも大切ですよね。

佐宗 兆しはありますね。最近、クロスフィールズというNPO法人のリブランディングプロジェクトを支援しました。それまでクライアントが気づいていなかった組織の良さやらしさを、WEBサイトという形で具現化して見せたプロジェクトでした。その例から考えたとき、BIOTOPEがやっていることは「自分たちって誰?」という問いに向き合うことなのではないかと。

クライアント自身が持つ想いや強みなどの内面を知り、「自分たちはこんな存在であれるんだ」と気づくためのお手伝いをしている。そして、その内面が素敵な形で具現化されたら、組織が変わる。「変態のデザイン」とも言える、自分たちの可能性に気づくデザインができているのだと思います。内面が具現化されることで、地に足がついているんだけどワクワクして背伸びできるようになるんです。

NPO法人クロスフィールズのリブランディングプロジェクトで制作したWEBサイト
https://crossfields.jp/10th/

永井 その兆しは私もあると思っています。実をいうと、クロスフィールズのプロジェクトでは、あまり「寄り添う」という気持ちではやっていませんでした。これまで通り、クライアントのありのままを受け取り、等身大を具現化するのではなく、いかにクライアントの個性や独自性をより良く見せる形で具現化できるか、を考えていました。これからはより良い形でお客さんの内面を具現化し、自分たちの可能性に気づかせるデザインをしていきたいと思っています。

内臓から始めるブランディング

永井 「より良く見せる」といっても、ただかっこいい服を与えて背伸びさせるのではなく、漢方のように内臓からじわっと良くしていくようなイメージかな。まずは内部で同じ文脈を共有する人を増やした上で、外に発信できる状態が理想的だと思います。

佐宗 外面だけ取り繕っても、内面が伴っていないとむしろマイナスになる時代だからこそ、自分達の身体それ自体を強くしていかないと、持続可能なブランディングにはなりません。ミッション・ビジョン・バリューといった会社の思想という骨組みがあって、その周りの内臓や筋肉である組織文化があって、はじめて服が出てくるんですよね。だからこそ、まず土台として、組織や個々人のポテンシャルを引き出すビジョンやミッションを定めること。そして、その文脈を紡いで組織文化を醸成してから、外向けにブランディングをする。それが正しいアプローチだと思います。

世の中を見ても、思想・組織文化といった内面をきちんとつくってから、外向けに発信していく流れになりつつあります。もし"ブランディング”をした結果素敵なWEBサイトができたとしても、自分たちの実情や内面性とのギャップを感じることがあるかもしれません。その場合は、まず組織の内側のケアから始めるのが良いと思いますね。

山本 改めて、BIOTOPEにおけるクリエイティブの価値は、思想と表現をつなげられることだなと。表現手段として、思想だったらコピーライティングや編集があり、ビジョンだったらスケッチやビジュアライゼーション、動画があり、カルチャーだったらカルチャーデックのようなストーリーがある。インナーとアウターを思想レベルでつなげ、上流から下流まで一気通貫でできる会社としての可能性を感じています。

佐宗 ご興味がある方はぜひご連絡ください。お待ちしております!

Interview & text by Nicole Tateo
Edit by Ryutaro Ishihara
Thumbnail design by Minori Hayashi


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