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それって…どうなんでしょう

本も情報も、紙の媒体が好みである。

2年前の秋から、当時、東畑開人氏(「居るのはつらいよ」で大佛次郎論壇賞を受けたセラピスト)のコラムが掲載されていた週刊誌を購読している。

売りである醜聞スクープにはさほど興味がない。男女間の揉め事など、ほぼ同じパターンでつまらない。連日張り込んでスクープの種を拾う記者のメンタルは大丈夫か、とそちらの方が心配。

興味深い記事、コラムが多い。鈴木忠平氏のルポ「嫌われた監督 落合博満は中日をどう変えたのか」(筆力を堪能)、平松和子氏「この味」(初めて知る食べ物・食べ方)、清水克行氏「室町ワンダーランド」(教科書に乗らない歴史のトリビアに💡)、様々な業界人の「家の履歴書」(いしいつとむ氏のイラストが👍🏼)等々。掲載中の漫画、司馬遼太郎原作・鈴ノ木ユウ氏の「龍馬が行く」は、絵とストーリーにほれぼれ。映画レビューはあまり当てにならないけれど、新刊案内は役に立つ。

新聞記事に辛辣な"喝"👎🏾を入れるコラム「新聞不信」は、(丸)と署名入りで、社説に当たるのかなと見ているが、新聞へのツッコミに、ツッコミを入れて楽しめる。

元首相銃撃のあと、朝日新聞に、旧政権批判の川柳がずらりと並んだ事に、「朝日のいつもの権力叩きか」とあるのも期待通り。さらに川柳の選者の素性まで詳細に追うページも別に設け、スクープ記事に負けないしつこさである。敵と定めた紙面には、思考以前に、つい猫じゃらしのように反応してしまう、「いつもの朝日叩き」なのだ😇

亡くなったばかりの人を悪く言うのを控えるのは理解できる。功罪あったはずの政権の、"功"ばかりが取り上げられるのは当座は仕方がない。けれど、これを機会に、全てチャラにしようという動きを、メディアが挙って追随してどうする。

元首相の悲劇に至る流れを、(不謹慎ながら)大きなジグソーパズルにしてみると、重要なピースを置いた人物なり、団体なり、出来事が見えてくる。

長野行きが、何故、前日になって奈良に変わったのか、当初不思議に思っていた。

自民党候補の10年前の女性問題。他党サイドのリークがあったのかも知れない。与えるダメージが効果的になる、報道のタイミングを測ったのかも知れない。報道直後に応援演説が急遽キャンセルになった為と後で知った。

当日のSPや警察の落ち度は多々あった。本人も含め、居合わせた人々の、危機意識も薄かった。無理な日程変更による準備不足が、スキを招いた。そして、急な予定変更をさせた記事があった。

翌週の誌面には故人の功績や人柄を讃える人々の声。睦まじい夫婦仲のエピソード。容疑者の生育歴。カルト集団の荒唐無稽な教義。優勢と見られていた自民党候補者を、目論見通り失速させた記事は、書きっぱなし。個々の記事がバラバラで、節操がない。

編集部に久々の投稿をした。

📧…川柳が本音と思う人は沢山いると思います。そもそも権力をウォッチするのは、メディアの役割なのではありませんか。…この事件の流れを、貴誌がどう捉えているのか、メディアとしての矜持を示してください。…📧

積年の恨みを晴らすことに人生を賭して、容疑者が理不尽にも元首相を殺めたことで、cultと政界とのwin win の関係、長年に渡る数多の訴えに政府が腰を上げなかった理由が明るみになった。個々の政治家が関係を断てば済む話ではない。被害者を多数出している現状を検証して、政府は即対処すべきである。ほとぼりが冷めるとすぐ忘れてしまう私たちも、しっかり注視しなければと思う。

2年前、週刊誌を読んですぐ、読者コーナーへ初めての投稿をした。数日経って届いた茶封筒には、次の週の雑誌に添えて、丁重な手紙が。

📧…今週号○○ページに掲載させていただきました。ささやかですが、お礼として…📧 5000円の図書カード❣️ 迅速で丁寧な対応にも好感を持って、以来、購読を続けている。

ワイドショー、新聞雑誌各社横並びの報道も、ひとりのとんがった発信も、すぐに鵜呑みには出来ないぞ、それってどうなのよ、とひとまず何処かに引っ掛けて置く。時おり自分の中で咀嚼してみる。そんなふうに構える気持ちが最近ますます強くなった。

隣国への理不尽な攻撃を止める気配のない、かの国を知ろうと、あれこれ読んだ一冊が、モスクワ日本大使館勤務経験もある佐藤優「国家の罠」。

20年ほど前、北方領土返還に向けて尽力するも、鈴木宗男氏と共に背任、偽計業務妨害容疑で起訴された元外務省主任分析官の佐藤氏。無罪を主張して最高裁まで裁判闘争をした末、2005年、執行猶予付きの有罪が確定。後に文筆活動を始めた。

筆者の身に起きた小説のような展開。面白い!

当時の外交、政治、信頼、裏切り、拘置所での生活、検察の意図、仕事への矜持、とりわけ、担当となった検察官との取り調べのやり取りが秀逸。敵同士ながら、信頼関係を築いていく2人の会話は、映画の場面を見ているよう。知的で人間的な会話。ブレない美学。すごい記憶力と筆力。告発の書ではあるが、外交上の機微に触れる機密は生涯守る。良書である。

何故今この本に触れるかと言うと…

収監時、"外務省のラスプーチン"と揶揄され、太々しい風貌と相まって、怪しい悪僧の如くマスコミに刷り込まれたイメージの記憶と、全然違うじゃないか!そう仕向けた"意思🦠"が、読んでいくうちに、ありありと浮かび上がる。怖い。

貴方は本を書くのよと米原万里は励まし続けた

メディアに(メディアの裏の誰かから)ミスリードされるのは不愉快。ぼうっとしてばかりはいられない。本をもっと読まなくては。

投書への反応は無いけれど、編集部に届けばそれで良かった。





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