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「天に聴(まか)すのみ」江戸っ子ラストサムライ

人生を徹見・達観した人物とは、かくも胆が据わっているのかと感心する一節があるので少し長くなるが引用します。

目先の枝葉末節や己の損得にとらわれず、スカッとする一節である。

『維新の頃には、妻子までがおれには不平だったヨ。広い天下におれに賛成するものは一人もなかつたけれども…山岡や一翁には、後から少し分つたやうであつたが…おれは常に世の中には道というものがあると思つて、楽しんで居た。

また一時を断行して居る中途で、おれが死んだら、たれかおれに代わるものがあるかといふことも、ずいぶん心配ではあつたけれど、そんな事はいつさい構はず、おれはただ行ふべきことを行はうと大決心をして、自分で自分を殺すやうな事さへなければ、それでよいと確信して居たのサ。

おれなどは、生来人がわるいから、ちゃんと世間の相場を踏んで居るヨ。上つた相場も、いつか下る時があるし、下つた相場も、いつかは上る時があるものサ。その上り下りの時間も、長くて十年はかからないヨ。それだから、自分の相場が下落したと見たら、じつと屈んで居れば、しばらくすると、また上つて来るものだ。大奸物大逆人の勝麟太郎も、今では伯爵勝安芳様だからノー。

しかし、今はこの通り威張つて居ても、また、しばらくすると耄碌してしまつて、唾の一つもはきかけてくれる人もないやうになるだらうヨ。世間の相場は、まあこんなものサ。その上り下り十年間の辛抱が出来る人は、すなわち大豪傑だ。おれなども現にその一人だヨ。おれはずるい奴だらう。横着だらう。しかしさう急いでも仕方がないから、寝ころんで待つが第一サ。』(勝海舟「氷川清話」)

自らを「大豪傑」と語るあたりが江戸っ子ラストサムライ、勝海舟らしくてスカッとする。海舟は、青年時代の非常に貧しい暮らしの中で、剣術、禅、学問に真剣に取り組み、維新前夜には命を常に狙われながら国のために奔走していた人物。その過程で海舟は「胆力」が養われていった。


また、海舟と江戸城で会見することとなる西郷南州は、三十代の働き盛りに二度も島流しの刑を受け、約六年もの歳月を孤島で過ごした人物。西郷もまた、この歳月の中で学問に励み、独り静かに坐し、慎思することで「胆力」を養っていった。

まさに、江戸城での会見は「胆力」と「胆力」のぶつかり合い。その場面を想像し、ワクワク・ドキドキするのは私だけでしょうか。

「胆力」ある人物とは、『凡(およ)そ事を作(な)すには、当(まさ)に人を尽くして天に聴(まか)すべし』(佐藤一斎)を心得ている人物。
(※人事を尽くして天命をまつ、ということですね)

西郷の一貫した姿勢は「敬天」であった。海舟もまた、先の一節が物語るように「天」を意識し、そのもとに人生や国の行く末を達観できた人物。

このような人物がいたからこそ、世界の奇跡と言われる明治維新が成り立ったのでしょうね。

☆☆☆☆☆😊

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          日本経済新聞(2020年9月18日)

■withコロナにおけるオンライン講演・研修動画(主にオンデマンド配信)の一部も投稿したyoutube「こころ元気研究所チャンネル」もございます!

※ヘッダーのデジタル画は(第1回目の緊急事態宣言下で登園出来なかったため)幼稚園年長さんだった娘が僕の古いPCで遊んでいて描いたもの。ちびっ子画伯と呼んでいまして、このnoteのいろんなところに載せています。ちびっ子画伯展もよければどうぞ(^_-)-☆

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