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(小説)神さまはハンドメイドで(8191文字)

「愛って何だろう?」

しかし、お母さんからの返事は、無かった。

1.

 その日は市の図書館で夕方まで涼んでた。梅雨があけて蒸し暑かったから、避暑にもなるし。その帰り。
 出入り口でばったりはち会って、お互い立ち往生してしまった。白いハットの初老の男性と。
 初老の長身のその人は一瞬驚いて目を丸くしたが、帽子を脱いで丁寧にお辞儀をしながら、塞がれた道を開けてくれた。
 私は棒立ちしてしまったが、驚いてはいない。少し会釈しながら、開けられた道をそそくさと通り過ぎた。
 通り過ぎながら思った。上下とも白の若干しおれたスーツだ。風通しの良い麻っぽい生地のようだけど、流石に暑く無いのだろうか。私は半袖のセーラー服でも暑いというのに。
 
 彼も本を抱えていた。返却かな。

 ま、いっか。

 私はマンションの自宅に戻った。

「ただいま。」
「お帰り。今日はクラブは早かったのね。お夕飯にする?」
「まだ、いい。」
「そう…。」

 私は適当に返事すると、部屋にこもってベッドに身を投げた。そして借りてきた小さな古い本をパラパラとめくった。

「神さまの話」

 リルケだ。

 読んでるうちに眠くなり、はっと目が覚めたら夜中だった。
 冷や汗のようなものを感じ、熱っぽかった。適当にその日を処理して終えた。

2.

 もうじき夏休み。その日も市の図書館で夕方まで涼んでた。もうすっかり日本の夏で、蒸し暑かったから、避暑にもなるし。その帰り。
 また、出入り口でばったりはち会って、そして彼が抱えていた幾つかの本を落とさせてしまった。白いハットの初老の男性だ。
 私は急いで落ちた本を拾おうとしたが、

「大丈夫だよ、お嬢さんありがとう。」

 と言われて、彼の方が先に全て拾ってしまった。
 私は少し恥ずかしくなった。「お嬢さん」と言われたことが?胸が少しざわついていたが、それを努めて抑え、そして少し会釈しながら、開けられた道をそそくさと通り過ぎた。
 通り過ぎながら思った。前と同じ、上下とも白の若干しおれたスーツだ。暑く無いのだろうか。私は半袖のセーラー服でも暑いというのに。

 たくさんの本、読んだのかな。暇な老人?

 ま、いっか。

 私はマンションの自宅に戻った。

「ただいま。」
「お帰り。お夕飯できてるわよ。ねえそろそろクラブ、何か作ったの?」
「まだ何も。ごはん後でもらう。」
「そう…。」

 私は適当に返事して、部屋にこもってベッドに身を投げた。クラブでは何も作っていなかった。作りたいものが無かったのだ。「ハンドクラフト部」だっけ。何を作るんだろう?…。

 そもそも、私は、何がしたいのだろう?

 …考えても頭が真っ白で、何も浮かばなかった。

 真っ白。そういえばあの白いおじさん、何をしている人だろう。そうだ、以前からあの人、よく夕方に図書館に来ていたな。図書館の館員と通っている人たちは全部私の中でプロファイルできている。週一、二回、夕方五時ごろに来て、カウンターの館員と何か話しをして、あまり本を物色するでもなく帰って行く謎の紳士っぽい人だ。「お嬢さん」…。とりとめの無いことを考えているうちに眠くなり、はっと目が覚めたら夜中だった。
 やはり、冷や汗のようなものを感じ、熱っぽかった。何か黒いものを見た、としか覚えていない。

 どうしたんだろ私…。

 適当にその日を処理して終えた。

3.

 次の日は、遅刻ということにして遅い目に家を出て、一人のんびり通学路を歩いていた。
 空は相変わらず青く、突き抜けていた。幾つかの白い雲がかけっこをしていた。日差しはあまりに眩しかったので、直視できないので本当はどんな色形なのか、形容することは出来ない。確か、丸くて黄色いはずだ。でも時々青く見えることもある。
 私はどこか涼を求めていた。今日は風があって、紙くずが道端で舞っている程であったが、相変わらず蒸し暑かったのだ。すると街はずれの公園の木陰とベンチが目に入ったので、一休みしようかと思って向かった矢先、後ろからそっと、声を掛けられた。

「君、そっちに行かない方が良いですよ。」

 振り返ると、グレーの作業着姿の若い大人の人だった。多分、小役人。

「ほら、あそこホームレスの溜まり場なんです。」

 ああ、なるほど。それは残念。確からに彼らの「家」が幾つかある。
 私は少し会釈しながら、そそくさとそこを立ち去った。
 では、どこに行こう…?そうだ、学校に行くところだった。手には通学鞄を持っているのだし。

 休み時間のタイミングを見計らって教室に入ると、騒がしかった教室がピタッと静まり視線が集中するのを感じた。私は気にせず、つかつかと窓辺の自分の席に向かって座ろうとしたが直前で動作をやめた。机上に小さな花瓶があったのだ。それには黄色い花が一輪さされていた。それを三階の窓の外に投げ捨てようと掴んだが、思いとどまって床にそっと下ろすと、今度は机上のたくさんの落書きが目に入った。しかし、私の焦点は合っていなかったので何が書いてあるかは知らない。その上に鞄をドサと置いて、授業が始まるのを待ちながら、外の雲を眺めた。すると、再び教室はざわつき始めてゴミみたいにうるさくなったが私は気にしなかった。結局校舎では一言も発せず、授業を終えた。それからいつもの図書館に行き夕方まで暇を潰して、そしてマンションに帰った。今日は、白いおじさんと会わなかったな。

「ただいま。」
「お帰り。ねえ何日から夏休みなの?お夕飯もう少し待ってね。」
「うん…。明後日かな?」

 そうか夏休みか…。何をして過ごそう?

「夏休みは、クラブはあるの?」

 返事をせず、部屋に入って扉を静かに閉めると、そのまま考えた。

 夏休みになったら何をしよう?

 無益に過ごすことはしたくなかった。こんな暇な夏休みは十六年間生きてて初めてだった。とりあえず勉強をしよう、図書館で。決してバカにされたくない。勉強は本来得意で、何も苦じゃなかった。ただ、授業の進捗も分からずに闇雲に独学で勉強するのはなかなか骨が折れた。骨というか、気力が。それを何も無いところから・何の理由も目的も無いところから奮い立たせるのが、難しかったのだ。それは常に戦いだった。

 何で私が…。

 その考えが頭をよぎる都度、思考を停止せざるを得なかった。それに失敗すると、何故だか分からないが、胸が詰まって苦しくなる。うずくまらなくてはならない程にだ。それも失敗すると困ったことに次は、目に涙が溜まり始めるのだ。なので、それを抑えるのが大変神経を使う。

 何であんなつまらない学校に…。
 そもそも、学校って行かなきゃいけないんだっけ…?
 行かずに働くとか、どうなのかな…?
 お母さん、泣くかな…?

 そんなことを考えているうちに眠くなり、ベッドに横になったと思ったら、猛烈な不安と体の火照りを感じて目が覚めた。また、眠ってしまっていたのだ。夜中だった。
 やはり、冷や汗をかいていて、どっと疲れていた。何か真っ黒な、嫌な夢を見ていたようだったがよく思い出せない。

 何なんだろ私。どうして眠くなるのか…。
 もうじき死ぬんじゃ無いかな、私。
 誰か、泣いてくれる人はいるのかな。
 あの白い人は泣いてくれるかな。
 そうだ、仕事、教えてもらえないかな。
 学校をやめて、この歳で、仕事を始めるとか…ゴミだな、私。

 そこまで想像して、自然と目から涙があふれ落ちてくるのに身を任せた。そして、目をつむって、もうどうでもいいや、それより、夢の続きを見よう。最悪の、悪夢を。それが私に相応しい。そう思って、そのまま眠気に身を委ねた。

 翌朝、目が覚めても、結局夢が何なのか思い出すことはできなかった。

4.

 世間は夏休みに入っていた、多分。外は曇り空の昼下がり、家では居心地が悪くて、それでいつもの図書館に向かった。鉛のような雲はうねっていて、今にも雨が降り出しそうだったが、おかげでそれほど暑くない。途中、公園の側を通ったが、新しく「退去命令」の看板が目立っていた。ゴミが撤去されるなら、ここ使えるな、と思ったが、とっさに私は思考をやめて、傘を握りしめ、無心で、図書館へ急いだ。いや、無心では無かった。嫌なやつだ、私は。そう思いながら、それをも必死で考えまいと思考を抑えながら、であった。

 図書館は市役所の向かいの小川もせせらぐ広場の中にある。コンクリートむき出しのモダンな建築の大きな図書館は、街のシンボルだった。その正面入り口から入ろうとした時、また、ばったりはち会って、お互い立ち往生してしまった。その正体はやはりあれ、白いおじさんだと確信したが、私は目を合わせるのが嫌で、そそくさと通り過ぎて館内に入ろうと踏み込んだ、その時だった。

「神さまの話」

「…え?」

 私の手に持っている本のことだ。

「愛するということは、それは、どこからも、何も、貰わないことです。」

 私は後方上空から突然に声をかけられ、一瞬頭が真っ白になったが、驚いてはいない。それでとっさに振り向いて、少し怒ったように切り返してしまった。

「そんな事を言いながら、
 『むしろそれを、ただ一人の人間から、受け取りたいと望むことです』
 って続けてるじゃ無いですか…、意味が分からないです。」

「そうだね、どんな意味で書いたのだろうね。」

 何だ分からないのか、残念ね。でも、おじさんが真っ直ぐにそう言うので私、今怒ったように言い放ってしまった事、少し恥ずかしくなってしまったじゃ無いか…。顔が火照ってきた。彼の笑顔が、白さがあまりに眩しかったので、私は直視できなかったから、本当は微笑んでいたのか、そうで無かったのか、正しくは説明できない。あれ?多分、微笑んでくれてたように見えた。でももしかしたら私が訳の分からない反論をしたので、少し怒らせたかも…?

 そう思って、下からそっと彼を覗くように見上げたら、単に彼は微動だにせず、私のほうを、真っ直ぐに、真顔で見ていただけだった。微笑んでいるのでもなくて、怒っているのでもなくて?

 その表情に、どんな意味があるの…?

 私はちょっと胸がざわつくのを感じで、思わず、

「失礼します!」

 と言い放って、早足で逃げるように館内に入ってしまった。おじさんを、取り残して。会話の途中なのに。失礼なやつだ、私――。

 知らない人である。次にいつ会えるかも分からない。いつもしおれた白いスーツのおじさん。なぜこんなに気になるのか分からない。…私は胸がざわつくのを抑えて無心になることに必死だった。

 その晩から天候は大いに荒れて、警報も発せられた上に、連続で台風が来たから、数日間、私は家に、自室に閉じこもりきりだった。窓から外の暴風雨をもたらす鉛のようなうねる雲を観察していると、それは暴れる悪魔を必死で抑える神が戦っているイメージを想起されて、少し楽しんだ。神は劣勢だったからこの勝負が今度こそどちらに転ぶか分からない。そんなことを想いながら、割って入るように、考えてしまう事柄があった。

「愛って何だろう?」

 ガラにも無いことを。答えは何度考えても、どこにも見つからなかった。少しもアイデアが湧かない。私の辞書の「愛」の項目は真っ白だった。それはそうだ、私は愛したことも愛されたことも無いのだから。私は若干十六である。家族もいない。家族もいなかった。親の愛も覚えていない。ずっと祖父母に育てられたが、高校をあえて遠くに選んだのでそれで一人暮らしをさせてもらっているのだ。お盆には実家へ少し帰る予定ではあった。もう一度、「神さまの話」を借りようかしら?窓の外の鉛のようなうねる雲を見ながら、そんなことを考えていた。

〜後編〜

5.

 台風が過ぎた朝、チュンチュンと言う小鳥の鳴き声で目が覚めた。見ると外は突き抜けたような青で、幾つかの白い雲がかけっこをしていた。暑さは感じなかった。私は暗い少しひんやりした台所で冷蔵庫を開け牛乳を取り出すと、シリアルをふかして少し食べた。それから白いワンピースを着て長い髪をポニテにするなど準備して、はやる気持ちを感じつつ、図書館に向かった。

 途中公園に差し掛かったので、私は魔がさしたのか、横断して近道をした。普段私は「近道」などしない、あえて困難な道を行くのが好きだったから、今日はなにやら陽気だったということかもしれない。それで運が悪いことに、ベンチに腰掛ける白いハットに白いしおれたスーツの彼を見かけたので、さらに魔がさしたのか、自ら近づいて声をかけてしまった。

「よくなりましたね、天気。」

 彼はあごを両手で支えて何か考え事をしていたようだったが私に気が付いて、顔を上げて言った。

「そうだね、神さまが勝ったんだ。これから図書館かい?」

 私は彼が「神さま」と言ったことに少し驚いた。神との戦い。同じイメージを持っていたのか、それともまさか、以前私がその本を借りたことを知ってるのでわざわざ引き合いに出す新手のロリコンナンパか、とも一瞬思ったので、ムカついて、私はあえて挑戦する気分になってしまい、しかし、なんと提案してしまった。それもぶっきらぼうに。多分陽気だったせいもあるだろう。

「はい、もしかして行きます?一緒に。」

 私たちは図書館までの並木道を約十分、連れ立って歩いた。長身の白いおじさんと白いワンピの私。まだ風があって、紙くずが道端で舞っているそのうちの一つを彼が拾うのを目にしたが、その間いろんなことを話した。私が会話のイニシアチブをとって突飛なことを言うことで、彼の反応をみて魂胆を見抜こうという作戦だ。

「夜、夢を見るんです。真っ黒な夢を、何度も同じ夢を。」

「ほぅ、真っ黒な。それは何か見えてるのかい?何も見えてないなら、夢で無いかもしれないね。」

「あ、なるほど…。でも多分、あれは悪夢です。何かがいるんです、暗闇の中に。怖くなって目が覚めると、汗ぐっしょりで。」

「そうですか。では、何かで照らさないと見えないね。」

 そんなことを言いながら、彼は紙くずを両手でいじっていたが、手癖なんだろうか。そういえば白いしおれたスーツは相当汚れている。貧乏なのかな。気になるけど、それは無視してとにかく話しがしたかった。私の作戦はすでにどっかに行ってた。話題は学校のことになった。

「学校なんて、ゴミみたいなところですよ。勉強する意味なんて無い。」
 私は遠くを見ながら言い放った。

「勉強は嫌いなのかい?いつも図書館で勉強してるのかと思っていたが。」

「出来るから、勉強してるだけです。皆は出来ないのに必死に勉強してる。…いや、できないのに勉強しないで文句ばかり言ってる。群がって。…ばかみたい。」

「君は、学校が嫌いなのか、クラスメートが嫌いなのか、どっちかな?」

 …「君」、と言われたことは少しムッときた。「お嬢さん」、て呼んで欲しい、そう思って一瞬で悲しくなった。目の前が暗くなった。それに、この質問はいきなりストレートを決められた感じだ。

「…何もかも嫌い。私、働きたい。おじさんは、何をしてる人?」

 だから、私立ち止まってうつむいて、反撃のつもりで言ってしまった。仕事が何かだなんて。それも「おじさん」だなんて…。まるで、知り合いみたいじゃ無いか…。

 彼も立ち止まり振り向いて、私を見て言った。

「おじさんはね…。」

 そして彼は地面に片膝ついてかがみこんだかと思うと、こぶしにした片手をそっと私の目の前に差し出した。そして手の平を上にしてそれを静かに開いた。

 …それは小さなハートの折り紙だった。

 その大きな手の平の上には、チラシでできた、小さなハート型に折られた折り紙があった。

 私はそれに釘付けになった。それは輝いて見えた。なぜだか、胸が締め付けられる思いがした。動けなかった。おじさんは真っ直ぐ私を見ながら、震える私の手を優しくとって、そのハートを私の手の中に収めると、言った。

「教えない。」

「…!あ、ずるーい!」

 図書館までの並木道は、その枝葉の隙間から突き抜けたような青空が覗いていて、そして眩しい光がキラキラと差し込んでいた。

 白いおじさんは、その日を最後に、見かけなくなった。

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6.神さまはハンドメイドで

 二学期の始業式はサボったけど、次の授業には最初から出てみた。現代文の女の先生は一学期の間中、生徒から声が小さいといじめられ続けていたからか交代となり、新しい若い男性講師が赴任していた。それで、朗読を私指名されたから、今回は無視せずに教科書を手にばっと立ち上がると、教室は一気にざわつき始めてゴミみたいにうるさくなったが私は気にせずはっきりと朗読を開始した。

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 教室はいつの間にか息を殺したように静まりかえり耳をひそめていた。途中まで読むと先生が止めさせて次の人を指名しようとしたが、私は無視して読み続けた。

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 そこまで読んで、突然のことであるが、私は息が詰まった。

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 涙があふれてきて抑えることが出来なくなった。私は立ったまま肩を落として教科書に顔をうずめていた。困ったことに、嗚咽が止まらなかった。教室は息を殺したように静まりかえっていた。講師とクラスメート達は、驚いて私を見る者もいれば、黙ってうつむいている者もいるようだった。ただ、誰一人、文句を言うやつは居なかった。

 昼休み、いかにもな感じのおさげの子が声をかけてきた。いつも一人で本を読んでいる子だ。文芸部に入らないかと目を輝かせながら、彼女は言った。

 文芸部か…。何か部活をするのも悪くないかな。そうだ、それなら自分でクラブを作るのも悪く無いな。

 ハンドクラフト部とか。

 そして小さな神さまを作るのもいい。ハンドメイドで。

「愛って何だろう?」

 相変わらずそれは分らなかった。私は若干十六である。多分まだ早いのだろう。
 おさげの子に直球で聞いてみた。すると、彼女は、こんなことを言ったのだった。
 
 昔、愛知県に住むある子が言っていた。

 愛知県という名前が好きだと。

 彼女は

「だって、愛を知る、って書くでしょ?素敵じゃ無い?」

 と、言った。


〜結〜


あとがき

 実は、note界隈で「ハンドメイド」をテーマとした創作企画があるということで、いいな…、って思って、未発表オリジナル作品は書いたことが無かったのだけどやってみようかな、と思ってたらバァッとインスピレーションが湧いたので、下書きをしてたらそれだけで規定の二千文字を超えてしまい、応募は横目でよだれを垂らしながらも断念しました。私コミュ障だから何も言ってない、宣言しなくて良かった(笑)。それで1日かけて書き上げたら一万文字を超えてしまったのでなんども見直して極限まで語らないよう語らないように絞りきってこれです。pixivでもよく二千文字制限で書くコンテストがあるけど私には無理ですね…。

 彼女は、ひょんなことから高校入学と同時にしらけてしまって、友達を作ることが出来なくなってしまった。でも彼女は努めて平気なふりをしたくて、そのために心を殺して、そして負けず嫌いだからと言い訳をしつつ本当はいつでも学校に戻れるように勉強はしっかりして、それも心が乱れるのを抑えて必死に集中して続けて、学校に行きたくても行けない気分の時には「お母さん」に内緒でサボって、市の図書館に通ってる、そんな女の子です。それも心苦しいのを我慢して、たくさん嘘をついてしまってる。でも手に取る本は「神さまの話」救いを求めてる…。彼女は、闇に閉ざしてしまった押し殺した「心」を再び照らすことができたのでしょうか。そんなお話しです。

 誰だって、辛くって、自分の殻の中に逃げたくなる時はある。そんな時は、自分に、人に嘘に嘘を重ねてしまい、ますます闇の中を抜け出せなくなってしまうことって、ある。でも、そんな事はいつまでも続かないよ。「神さま」が与えてくれる、ほんの小さなきっかけ、もしそれをほんの少しでも素直に受け入れることができるなら、闇に光が照らされ、扉への道筋が示されることって、ある――。

 私の経験上、それを保証できるほど自信を持って言える訳ではありません。私だって今まさに絶賛闇の中です(笑)。でも、そうあって欲しいじゃ無いですか。どこかに「ヒント」が、「鍵」があって欲しいじゃ無いですか。そう願って、書きました。

 少しでも、あなたの心が照らされることになれば幸いです。

Beta 拝


楽しい哀しいベタの小品集 代表作は「メリーバッドエンドアンドリドル」に集めてます