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【どうする家康】まるで“時をかけるジジイ”⁉タイムリープSFを彷彿とする「悲劇のループ」を断ち切った鳥居忠吉の覚悟。第9回「守るべきもの」雑感

NHK大河ドラマ『どうする家康』第9回の雑感です。
前回の感想はこちら↓

(※以下、ネタバレ注意)
(※本記事のセリフの引用箇所は一部ノベライズに準拠しており、ドラマのセリフとは異なる場合がございます)

涙腺ドバドバ過ぎる!バスタオル用意しなきゃいけないくらい泣きポイントだらけの決着に

3回に渡って続いてきた「三河一向一揆編」が、ついに完結しました!めっちゃ泣きましたわ……壮大な映画のエンディングを迎えたみたいに。まじ、ティッシュやハンカチじゃ足らんかった。バスタオル用意しなきゃならないくらいでした。

って、18時からのBSプレミアムでイチ早く見てツイートしてましたけど、20時からの地上波勢のみなさん、いかがでした⁉ちゃんとアドバイス聞き入れててくれた??

本当、こんなに「泣く」ポイントが多かった回もないと思うんですけど……一年の長い大河として見たら、まだ序盤なのにさ。

逆に「どこがそんなに泣けた?」みたいにキョトンとされてる方もいらっしゃると思うので、一つひとつ解説していきたいんですが。恐らく、今週はそれだけで3本分記事が書けちゃう気がしますね……。

ということで今回は、まずは序盤のポイントから押さえていきましょう。

ドラマ始まって以来のどん底。家臣団のまとめ役・左衛門尉にまで謀反の兆しあり……⁉

キレ者の策略家・本多正信にまで裏切られたことを知り、「どうしたらいいのか分からぬ…。怖くてしかたがない」と寝間着姿のまま寝室に引きこもっている殿。

ホントこのシーンの殿は、ドラマ始まって以来のどん底と言っていいような状況ですよ。今まではどんなヤバイ状況でも、家臣までが自分を見放すという考えはなかった。

第1回で大高城から逃げ出し、平八郎に連れ戻されたときも、左衛門尉が「殿は、おひとりで雨に打たれ、お心の迷いを洗い流し、この窮地をいかにすべきか一心に御思案されていたのでござろう」なんてフォローしてくれていました。今回はそんな彼までもが吉良の書状を受け取っており、「即座に破り捨てようと思うたが…」なんて悩む始末。家臣団のまとめ役である左衛門尉の心さえ揺らがせるって、相当やばい状況だからね。寝巻のまま引きこもってる場合じゃねぇよ殿!

他の家臣たちも何を考えているかわからない。少なくとも士気はダダ下がり。小平太も「もともと気乗りしない戦。しかも先が見えない……。兵の士気が下がるのも、無理ございませぬな」なんて言っていました。またコイツ、「イケイケ」から「ひねくれ」にモードチェンジしちまってるじゃねーかw

もはや突破口になるようなものは何も無い……と思ったところで、まさかこの状況を一変させたのが、隠居の身である鳥居忠吉じいさんでした。

鳥居のじいさんが殿にせまった究極の二択。地獄の後者を選ぶ道だってありえた⁉

忠吉がムリヤリ殿の寝室に入り込んできて示したのが、二つの道。「家臣を信じる。ただし、その結果裏切られたら仕方ない」か、「謀反の疑いが少しでもある者を、ことごとく殺す」か。これ、めちゃめちゃ究極ですよ。今年から大河を観るのが初めての方にとっては「後者とか極端すぎるわ。あり得ないだろ」と思ったでしょうけど……あり得るからね!

まさに去年の『鎌倉殿の13人』で、鎌倉幕府を開いた源頼朝や、彼の死後に幕府のトップへと進んでいった執権・北条義時がたどった道こそが、後者でした。家臣が信じられないなら、恐怖心で従わせるしかない……「こいつは裏切っちゃアカン」と、強さを見せつけることですね。

また家康自身、鎌倉幕府の歴史をまとめた『吾妻鏡』の愛読者だったという話もあります。この時点で読んでたかどうかは不明ですが(少なくとも『鎌倉殿の13人』の最終回で家康が出てきたシーンは「1564年 三河」とあり、一向一揆の終戦直後だろうと想像できます)、それにならって「謀反人、皆殺し」を選ぶ可能性も無きにしも非ずだったと思うのです。

だから殿がどちらを選ぶかは、忠吉にも賭けだったんじゃないでしょうか。少なくとも第3回で、じいさんは、左衛門尉と数正が殿に織田方への寝返りを勧め、それができない場合は「お手討ちにしてくだされ!」と命を差し出そうとしたシーンを畑から見ていました。「嫌じゃ……嫌じゃ……」と言いながら刀を下げざるをえなかった殿の姿も。忠吉自身、離れた場所から一人、土下座をしていましたね。

その時とは違い、もしも殿が、今度こそ周りの家臣に示しをつけるため、疑いある者から家臣を殺す道を選んだとしたら。それでもいいように、こう一言付け加えていました。「殺すことにお決めなら、まず、わひからにしてくだされ。病で死ぬより、楽そうじゃて」と。

じいさん……笑ってたけどさ、マジで命がけの説得だったのよ。でも逆に、「わしが殺されて、家臣の結束が強まるなら、そんな最期もええじゃろ」とも思ったと思うんですよね。

もう……だから、忠吉に涙ドバー!ですよ。

まるで「時を駆けるジジイ」⁉裏切りのループから抜け出し、浮かべた笑みにもまた涙……

そして家康、寅モード発動。「わしについてこいとは言わん!主君を選ぶのは、お前たちじゃ。好きな主を選ぶがよい!わしは!お前たちを信じる!供をしたい者だけ参れ!」と熱いセリフを家臣たちに叫んで、皆を引っ張っていった殿もカッコよかったですね。これでようやく道が開けました。

ただそれよりも僕は、その後にこやかに笑みを浮かべながら皆を送り出すじいさんの姿が泣けました。なんせ忠吉、今まで家臣に裏切られて亡くなっていった先代、先々代の殿を見送ってきたのです。

「祖父君と父君は、信用する家臣の裏切りによって、それでお命を…。今でもよう考える。どうやったら避けることができたのか。どうやったら、お救いすることができたか」

そう後悔するようなセリフも、忠吉は口にしていました。僕、これ聞いて、タイムリープもののSFを思い出したんですよ……『STEINS;GATE(シュタインズ・ゲート)』とか『魔法少女まどか☆マギカ』とかありますけれども。どちらも、何度も同じ時間を繰り返すことで、避けられない悲劇をなんとか回避しようとしていくキャラクターの姿を描いているんですけど。本当、鬱になるのよ……何度やっても運命は変えられず、その度に彼ら、どんどん闇堕ちしていきますからね。

忠吉、まるで「時をかけるじいさん」だよ……何度やっても殿が忠臣に討ち取られてしまう。そんな殿を、ついに裏切りのループから救い出すことができたのが──つまり、ようやく「シュタインズ・ゲート」(=運命を断ち切った先の未来)にたどり着くことができたのが、今回の『どう康』第9回だったんだよ!

……なんて解説しても、知らない方には「ようわからん」と思われちゃうかもしれない。僕自身、他の視聴者とはまったく違うポイントで泣いてるんだろうなぁという自覚はありますが……アニヲタですみませんw

まぁSFじゃないので「タイムリープ」なんてしてませんけど、要は、「悲劇のループ」を繰り返してきたのは忠吉も同じということです。じいさんにとってもこれは、長年の後悔からようやく解放されたと。そこに泣ける展開だったと思うんですよねぇ。

家康が選択しただけで、なぜ戦況が一変したのか?ノベライズのセリフを頼りにひも解く

ところで、家康が「家臣を信じる」という選択を取ったのはいいんですが、観てる方にとっては「たったそれだけで、どうして簡単に戦況が変わるの?」と理解できなかった方もいらっしゃるかもしれませんので、最後に考察していきます。

例えば殿が金陀美具足を着て皆を率いていったときのセリフについて、ノベライズは少し違っていました。

「左衛門、東条を攻めよ。数正は大草を。六栗(むつぐり)の夏目は、深溝(ふこうず)の松平伊忠にやらせよ。ほかの者は、しばし休んでよい。本證寺は、わしが攻める!供をしたい者だけ参るがよい!」

第九章『守るべきもの』|小説『どうする家康一』

(※東条=吉良義昭、大草=松平昌久、夏目=夏目広次)

こちらは、岡崎城の主殿で平八郎が「これこれこうして勝つ、こうして鎮めるという道筋をお示しくださらねば、我らはこれ以上戦えませぬ」と言ったことへの、ある意味でアンサーになっています。つまり具体的に戦略を示してくれたことで、兵たちも戦いやすくなったんですね。

また、やっぱり家康自身が自分の責任を受け止めたからというのも、戦況が一変した理由に挙げられるでしょう。もう一度小平太のセリフを引用します。

「もともと気乗りしない戦。しかも先が見えない……」

これを逆に言えば、「気乗りして、先も見える戦」であれば勝ち筋も見えてくるということです。

これまではただ、家康が一向宗の寺から年貢を取り立てるという勝手な行動が招いた一揆。しかも、そのミスを招いた家康本人が「はよう何とかしろ!」とダダっ子のごとくわめいていたので、家臣の誰も「気乗りしない状況」が続いていました。

それがようやく、家康自身から率先して戦に出るようになった。一応、第8回の終盤でも家康が戦場に出ていましたが、この時点ではまだ家康自身の覚悟が定まっていないような状態でしたし、まんまと罠にはめられる形になってしまったのでした。

主君が自ら出てリーダーシップを発揮しつつ、「まずは家臣達に謀反を鎮めさせ、敵の中心地は自分が攻める」という明確な目的のもと攻略の道筋を示すことができれば、やはり官軍VS賊軍、有利なのは官軍の方です。改めて人間って、感情の生き物だなと感じさせられますね。

ちなみにドラマでは、いち早く吉良義昭たちを捕えていました。これも、また新たな謀反人を生み出さないために功を奏していたのではと思います。賊軍への見せしめにもなりますしね。

こちらノベライズでは順序も違い、最初は夏目広次を攻略して、吉良が連行されたのは一向一揆終結後になっていました。夏目広次は、家臣たちからの助命嘆願により謀反を許されて家臣団に戻ってきますが、ドラマではそこも一つの山場として描かれています。映像にした時に、戦況の変化の理由の一つとして説得力を持たせ、よりドラマチックになるよう、順序を入れ替えたのでしょうか。なかなかテクニカルなことをしていますね。(って、鑑賞ポイントとしてだいぶマニアック?w)

さて……本当に序盤を語っていくだけで1記事仕上がっちゃったよ。まだまだ語り足りないっすよ!むしろあと2回で足りるのか……頑張りますw

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