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頼朝、最後の野望。「蒲殿カンケーねーだろw」で善児死の闇。第24回「変わらぬ人」見どころ振り返り!【鎌倉殿の13人】

NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』第24回の感想です。

前回の感想はこちら↓

(※以下、ネタバレ注意)

えぇと……今週もまた地獄のような展開が続いています。大丈夫でしょうか視聴者のみなさん、ついて来れてる??

「もう源平合戦終わったんやろ!平和な日はいつになったら来るんだ!!」

って嘆かれてる方もいるかもしれないですけど。まぁ、「平和=みんな頭にパステルカラーのお花を咲かせた状態」ってわけにもいきませんから。たぶん今の世の中でもそう。少なくとも「兵士と兵士とが戦わなくて済む、戦の無い状態」を平和と言うのであれば、このドラマで描かれた時代の鎌倉だって、ある意味では平和だったに違いないのです。

でも常にトップは疑心暗鬼。ひょっとしたら誰かが武士の頂点の地位を奪いにくるかもしれない。そうするとまた、武士が兵を率いて、何百、何千、何万の人と人とが争わねばならぬ日がくるかもしれない。災いの芽があれば、ドス黒い花を咲かす前に、すぐにでも摘み取らねばならない。

当時の源頼朝(大泉洋)の心境は、そういう風だったと思うんですよね。その結果、御家人どころか身内すら信じられなくなったと。三浦義村(山本耕史)がまさにそのようなセリフを口にするシーンがありましたが、このときの状況をよく冷静に分析してるシーンだと思いました。彼らしいセリフでもありながら、視聴者にもこの頃の複雑すぎる頼朝の心をサクッと説明する、実によい表現でしたね。

……と、前置きが長くなりましたが。

第24回のお話は、前回の「曽我兄弟の仇討ち」もとい、「頼朝への謀反」のあとしまつからスタートします。

次期・鎌倉殿として認めてもらうための書状を、時期尚早に朝廷へ出してしまった蒲殿こと源範頼(迫田孝也)。すべては鎌倉を守るためにやったハズが、「これでは、私が鎌倉殿の座を狙ったと思われても仕方がない」ってところで、三善康信(小林隆)はすぐに朝廷への使者を戻させるのですが。もう次のシーンでは、その書状が頼朝の手に渡っているという……。

どうやら使者を、梶原景時(中村獅童)が取り押さえたみたいなんですよね。

そもそも、比企能員(佐藤二朗)が蒲殿をけしかけてしまったせいで始まったこの騒動。三善康信というウッカリさんがそれを援助して、大江広元(栗原英雄)がそれを頼朝にチクって。そして梶原景時が証拠を押さえるという……いや、なんだこの連鎖反応。地獄のピタゴラスイッチみたいになってますがw

比企能員もねぇ、お前が発端なんだから責任取れよってところなんですけど、これに巻き込まれたら比企一族の命運もヤバイ。妻の道(堀内敬子)から「お会いになってはいけません!」と止められ、「蒲殿すまん」と独り言みたいに呟いて終わりです。蒲殿が来たときには、道に「風邪で伏せっております」なんて伝えさせて面会謝絶するのでした。

蒲殿も「えっ」と言って虚空を見た後で、「風邪は寝るのが一番」と笑顔で言うんですけれども。このときの蒲殿も、単に「人がいい」とか「バカ」というわけではないと思うんですよね。比企が仮病を使ってるのはバレバレだったはず。それで「自分は比企にハメられた」ということもすぐ悟ったのでしょう。

でも蒲殿、「フザけんな!お前が悪いだろうが!」と言って無理にでもあがり込むような性格でもありません。比企がハメたと言うなら、そんなヤツの手なんか借りても、どうせ変な弁解しかしないでしょう。そもそも、御家人からハメられるような隙を作ってしまった自分の落ち度。

やがて比企邸を去った後で、北条義時(小栗旬)から「蒲殿の奥方は比企の出。この一見、比企殿が絡んでいるのではありませんか?」と最後まで信頼を寄せてくれるのにも、「比企は関わりない」と言い、自分のだけの力で何とか兄への信頼回復を務めようとします。本当、まっすぐなんだよ蒲殿は……。

でも、それがアダとなりました。起請文を書いて頼朝に出すも、大江広元からこんな難癖をつけられてしまいます。

「この起請文には、今後末代まで鎌倉殿に忠義を尽くすと書いてあります。すなわち、源氏嫡流の一門を降り、ただの御家人になるということ。にもかかわらず、署名には、源範頼とあります。起請文の誓いが、偽りである証拠」

出たーーーーーーーーーーーー!

そんな言いがかりがあるかよと思いましたけど。ほんと、一枚どころか二枚も三枚も相手が上手でした。こりゃあ、蒲殿だって心折れるよ……「もう結構にございます」って言っちゃいますよ。会社員だったらさ、こんな役員や社長がいるところで、今後も忠義を尽くして頑張れる気がしないもん。

というか、名前を名乗ることさえ許されないなんてね。個人的には、『千と千尋の神隠し』の湯婆婆かよとか思いましたよね。いや、違うか……。まぁ、実の兄のから「もう弟でもない、お前はただの家来だ」と言われているような感じ。こんなに悲しいことって他にないですよね。しかも、これも史実通りというからたまらん……。

とにかく頼朝をそばで支えようと思ったら、どれだけ人の心を失くしたらいいのかわかりません。やはり第20回「帰ってきた義経」あたりで義経(菅田将暉)が「兄のことなどどうでもよくなった」と言っていたのにも重なります。

ただこの場面で、蒲殿は命までは奪われませんでした。鎌倉を離れ、伊豆の修善寺に幽閉されることとなります。そこで北条時政(坂東彌十郎)に「兄のこと、よろしく頼む」とまっすぐな表情で語る蒲殿には、やはり離れていても最後まで兄を慕いたいという気持ちが溢れているようでした。これはまた、義経と違う最期が描かれるだろうな……ということで、一旦、こちらの「あとしまつ」パートは終了します。

さて、物語は大姫の縁談パートへ。

ナレーションでも解説された通り、後白河法皇が世を去ったために入内の件は白紙に。そこで頼朝は一旦、都で力を持つ一条高能(木戸邑弥)のもとに嫁がせようとしたのですが……。

やはり亡き許嫁である冠者殿 a.k.a 源義高(市川染五郎)のことが忘れられず、縁談は破綻。「政子、大姫のこと、何とかせよ!あれでは婿のなり手がおらぬぞ!」なんて頼朝は言います。いやいやそもそも義高を殺させたテメーが悪いんじゃねぇか……って、すでに100万回ぐらい言ってますけど。

そこでようやく大姫の心を変えてくれたのは、母・政子(小池栄子)でも、新たにインチキイタコ芸を身に着けた叔父・阿野全成(新納慎也)でもない。なんと過去、冠者殿の父である木曽義仲(青木崇高)に仕えていた巴御前(秋元才加)でした。

「面影が薄らいだということは、冠者殿が前へ進めとおっしゃっているのですよ」

と巴から笑顔で諭され、ついに大姫は入内を決意します。

けれどそこから、父・頼朝らと共に上洛し……

「その娘がたやすく入内できるなどお思いか?どこに行って誰に会うべきか、指南してくれとすがってくるかと思えば。厚かましいにもほどがある!」

丹後局(鈴木京香)に厳しく怒鳴られます。ヒドくね?

ただねぇ……SNSでも話題になってましたが、これって「試練」でもあると思うんですよね。こんなところで心を挫いてたら入内なんぞ夢のまた夢だぞ、と。その証拠に、この「圧迫面接」の最後には、

「さぁ、世間話はここまで。どこに行き、誰に会うべきか、ゆっくり指南いたしましょう」

だなんて、優しい笑顔で言うんです。これ、前のシーンで頼朝も「方々にたんまり土産を渡してきた。これで万事うまくいく」と言ってたので、たぶん丹後局にも、その先払いの「授業料」分はキッチリ支援してあげるよという思いはあったのでしょう。

ただ、これが『田舎のキラキラ姫君、シンデレラ入内ストーリー』なら先の展開も続いたのでしょうが、大姫はすでに一度、多感なころに人生で一番愛した許嫁に先立たれたというデッカイ心の傷を抱えてしまってるのです。そんな子が、こんな圧迫感に堪えられるはずもありません。夜な夜な館を飛び出してしまいます。

しかも、急に降り出してきた雨。体を濡らして凍えながら藪の中でしゃがんでいた大姫を見つけたのが……なんと三浦義村! ま た お ま え か 。

何だろうねぇ……八重(新垣結衣)さんのときもそうだったけど、つくづく北条家に関わってくるよね義村。今回も彼は、「鎌倉殿のことはお忘れなさい。北条の家のことも。人は、己の幸せのために生きる」なんて励ましながら大姫を救おうとするのですが。結局このセリフがフラグに。

この日の雨が原因で病に倒れ、鎌倉に戻っても病床に伏せってしまった大姫は、「私は、私の好きに生きてもいいんですか。好きに生きるということは、好きに死ぬということ」と言い、最期の時を迎えてしまうのでした。

これじゃあ、まるで義村が殺したようなもんやないか……。まぁ義村本人はそんなこと考えもしないでしょうけど(メフィラス星人だから……って、そのネタはもういいかw)。ただ、「義村が助けに来た→絶対に助からない」みたいな恐ろしいジンクスが成立してしまったような気がします。義村は死神かなにかか。

ちなみに大姫が逝くときの「ジジジ……」というセミの鳴き声も胸を打ちましたね。そう言えば許嫁の冠者殿も、セミの抜け殻集めが趣味でした。そんな冠者殿の導きのようにも聞こえましたし、死にゆくセミと大姫の死を重ねてるようにも思える凄い演出でした。

しかも史実でも、大姫が亡くなった「建久8年7月14日」というのは、現代の日付で「8月28日」のことみたいなんですよね。まさしく晩夏じゃん。これが史実通りって、凄くないですか?

逆に言うとですよ。ここでの大姫の最期のシーンを描くために、冠者殿のセミの抜け殻収集癖から何からと、前もってお膳立てしてきたようにも考えられます。あれ、ぜんぶフラグだったんか。ものすごい計算の上で成り立ってるすさまじい脚本すよ。三谷幸喜、鬼才すぎるでしょ……と、改めて唸らされます。

どうやったらこんな脚本書けるようになるんだろう……。やっぱり、『古畑任三郎』から『王様のレストラン』から、いくつもの実績を乗り越えた末の賜物ですね。

で、物語はいよいよ終盤。

死んでしまった大姫を前にして、諸悪の根源こと頼朝、また恐ろしいセリフを口にしていましたね。

「わしは諦めんぞ。わしにはまだ、なすべきことがあるのだ。小四郎、すぐに三幡の入内の話を進めよ」

これを聞いた政子の表情がですよ。「こいつマジかよ」みたいな顔してましたけど。ヤバすぎでしょうって……いくら征夷大将軍でも、ここまで人って、心を鬼にできるのかと思っちゃいますよね。

ただ、前回では「わしがなすべきことは、もうこの世に残ってはいないのか」などと哀愁漂わせる感じで、らしくないことを語っていた頼朝。よかった、本来の頼朝が帰ってきた!と思った方もいたかもしれませんが。

「誰かがわしを、源氏を呪っておる。思い当たるのはひとりしかおらぬ。やはり、生かしておくべきではなかったか。梶原平蔵を呼べ!」

やっぱりきたか……察しのいい人はお気づきの通り、はい、善児タイムでございます。ターゲットは……修善寺の蒲殿!結局、蒲殿で始まり、蒲殿で終わる回だったんですね。

善児も「来たぞ!」って感じで登場するではなく、まるで心霊映像みたいにピンボケ。それでも「何かいる」というのがわかる演出です。コワすぎだろw

次の場面では蒲殿に仕えていた農民夫婦を手にかけるのですが、1回目を見たときには「あれ、何もしてないのに急に倒れてる」って感じでしたね。2回、3回と映像を見返して、確かに善児が歩いているのはわかる。というか、歩くだけで殺してるんか?もはや人間じゃないですよ善児。今回も手際がいいってレベルじゃなかったですね。

呆気に取られてる蒲殿も、最期は正面からブスリと一撃。「なんでなん?」という蒲殿の表情がたまんなかったです。この世の無情を、ただ儚むような表情。怒りも憎しみもない、そこにはただ悲しみだけがありました。本当、蒲殿、関係ないやろ。呪詛とかまったく無縁の男が、ただ頼朝の腹いせみたいな感じで散っていきました。闇が深すぎる……。

これで、またSNSで広がる「蒲殿ロス」の声。蒲殿役を務めあげた迫田孝也さんにもやはり称賛の声が上がっていました。

『真田丸』にも出られてましたし、もうすっかり「三谷組」のひとりである迫田さんは、『ザ・マジックアワー』からの登用だったのですね。蒲殿役がこれでおしまいというのは悲しいですが、また次の作品でのご活躍も期待したいところです。

「三谷組」と言えばですが。今回の蒲殿暗殺の後で、善児の前に登場した少女にも注目が集まってました。実はオープニングのキャストにも「トウ」という人物名が。

この子を善児が連れ帰って育て上げる、という先の展開もすでに発表されていました。ここで出会ったのか……。

しかも、成長した姿のキャストは山本千尋さんとおっしゃるんですが、この方すごいんですよ!「武術太極拳選手として世界ジュニア武術選手権大会で金メダルを2度獲得」という実績があり、2022年7月公開の映画『キングダム2 遥かなる大地へ』にもご出演予定です。アクションシーンに期待が高まりまくりますね。

三谷作品にはアマゾンプライムビデオ独占配信ドラマ『誰かが、見ている』から初参加されていましたが。いやぁ、このドラマも面白いのでどこかでレビューしていきたいところ。

さてさて、長々と書いてしまいましたが、とりあえずこれぐらいにしときますか……いや、もっと書きたいことがあるのよ!義時と義村が酒飲んでるところにまだ10歳のハズの金剛(坂口健太郎)が付き合わされるシーンとか。飲み真似だけでしたけど、あれをガチの10歳にやらせてたらクレームも出ていたでしょう。「だからこそのキャスティングかよww」とか、いろいろ納得したりしました。

でもそんなこと一つひとつ書いてたら一生書き終わんなくなるよ。だって2回、3回と見直してたらさ、ぜんぶが見所になっちゃうんだもん。まぁ、記事を分けたらいいんですよね……今後、それも検討してみますw

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