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曽我兄弟の仇討ちの真相? #全部比企のせい で蒲殿ロスも間近に!第23回「狩りと獲物」見どころ振り返り!【鎌倉殿の13人】

NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』第23回の感想です。

前回の感想はこちら↓

(※以下、ネタバレ注意)

非常に情報量が多くて、どこをレビューすればいいかと非常に悩んだ回ではあります。とりあえず、1回観ただけじゃ感想まとめきれなくて、2回見ました。

ほんと、前半のコメディパートと後半のサスペンスパートの落差が激しすぎる展開ですよね。これ、コメディもサスペンスも描いてきた三谷幸喜のよくばり詰め合わせパックみたいな内容じゃないですか。ファン垂涎(すいぜん)ものと言いますか、本当、終盤に雨に降られていた頼朝(大泉洋)のセリフと正反対に「最高だ」と言うより他ないのですが。

まず前半の「鎌倉殿接待ゴルフ」……じゃなかった、「富士の裾野の巻狩り」パートですよね。そもそもなんでこんな大規模な接待をしなきゃいけないのかと言うと、先日の6月8日(水)にBSプレミアムにて放送されてた『英雄たちの選択』でも詳しく語られてましたけど、頼朝の嫡男・万寿(金子大地)の披露目の場とするためなんですよね。

本来、武士というものは戦で武功を上げてこそ認められるべきものなのですが、平氏を滅ぼし、平泉も制圧し、頼朝が征夷大将軍となったいま、戦する相手などいなかったわけです。

だったらもう、野生動物でも狩って腕を見せるしかない。「山の神に認められた」とか何とか言って、とにかく「万寿が次期・鎌倉殿として相応しい。これで源氏は安泰だ!」ってところを御家人たちに知らしめなければいけないってところで今回の物語です。

で、いきなり子役から大人の役者さんに成長していた万寿くん。烏帽子はかぶっていなかったのでまだ元服すらしていない(=まだ子供)なんですが。一気に時代が進んだねーと思いきや、実は頼朝の征夷大将軍(1192年)からたった1年しか進んでない、1993年のことだったそうな。

同じく、小四郎こと北条義時(小栗旬)の嫡男・金剛(坂口健太郎)も「成長著しい金剛」なんてテロップ出てきてつい笑っちゃいましたけど。これ、当時10歳だそうですよ。坂口健太郎、いくらベビーフェイスだからってどう見ても10歳には見えねえ……。

でも、それ言ったら『おんな城主直虎』に出てた阿部サダヲさんなんて、47歳で、12歳の竹千代(元服前の徳川家康)やってますからね。これはもはや「大河ドラマ的なオヤクソク」として見てもらった方が良いかと思われです。

また、万寿と金剛の描かれ方も対照的でした。さっそく鹿を仕留め、鶴丸(きづき)と共に喜々としてる一方で、万寿はウサギ1匹すら仕留められない。最終的に「動かない鹿を用意しろ」だなんて御家人たちが計らい、金剛が仕留めた鹿に細工をし、それを万寿に狙わせるという……。

しかも万寿、それすらハズしますからね。そこをサポートするのも御家人らの仕事。八田知家(市原隼人)殿が横からスナイパーのごとく矢を射、鹿が倒れるのも後ろで鶴丸が引っ張るという2段構えのサポートで、万寿の手柄を演出していました。

ていうか、引っ張ってたの、鶴丸だよな?録画した映像をスローモーションで見直しても紫の衣装しか判別できませんでしたけど……うん、たぶん鶴丸だ。何気にちゃんと活躍してるじゃん、八重さんが救ったもうひとりの息子よ。細かいところではありますけど、何気に泣いちゃうよ。

ただこの一連の計らい、万寿にはバレバレでしたね。「私はいつか、弓の達人になってみせる。必ず自分の力で鹿を仕留めて見せる」と言い、悔しい顔を見せながらも弓を放つのでした。だけどその弓が、比企能員(佐藤二朗)の足に見事に命中しちゃうんですけどね。いやぁ、もう最高です、ザマミロだよ!万寿くん、実はもうすでに弓の達人なんじゃねww

と、うまく前半のオチがついたところで、やってきましたよ後半パート。ここからがいよいよ本命、「曽我兄弟の仇討ち」もとい、頼朝への謀反パートでございます。

ザッザッと頼朝の元に向かう曽我兄弟の一向。「こっちは鎌倉殿の御寝所だ。何を企んでおる!」と、仁田忠常(ティモンディ・高岸宏行)殿が止めに入りますが。このときの仁田殿も強かったですね!曽我の兄・十郎(田邊和也)から背後から斬りかかられるもサッと避け、一対一の斬り合いを始めました。

このシーン、残念ながら最後まで描かれなかったですが、史実ではちゃんと仁田殿が十郎を仕留めている模様。このシーンを境に十郎の姿が見えなくなったのも、ドラマでも史実通り、討たれたということなんでしょう。

そして鎌倉殿の御寝所では、畠山重忠(中川大志)殿とその兵たちが、謀反人どもを迎え撃ちました。さすが頼りになる婿殿!でも、曽我の弟・五郎(田中俊介)はひとりまんまと御寝所に忍び込みます。アッー、爪が甘い!!

それでついに鎌倉殿を討ち取る――かと思いきや、実際に討ち取られたのは工藤祐経(坪倉由幸・我が家)でした。これ、初見のときは「あれ?どうしてお前がここに?」となった方も何人かいらっしゃったのでは、というシーンだったかと思います。よくよく見返してみると、比奈(堀田真由)の夜這いに向かった頼朝が、替え玉を使っていたんですよね。

確かに「替え玉になれ」なんて言ってるシーンはありませんでしたけど、頼朝が比奈の元に向かう前に、義時から比奈の居場所を聞き出していたのも祐経でした。頼朝が「頼む!」と安達盛長(野添義弘)の前で駄々こねてるシーンでも、ちゃんと「祐経が比奈の居場所を聞き出してくれた」というセリフで名前を挙げていました。

その後、安達殿がにこやかな笑顔を見せながら、頼朝ではなく祐経が寝ている様子を見ているシーンもあり……これだけ用意すれば、言わなくても祐経が替え玉になってるってことはわかるよね?という演出ですね。

ただ寝てるシーンなんて一瞬でしたし、しかも暗がりでしたし。「あれ?何で祐経?」なんて、初見ではやや混乱するシーンでしたけど。あと、大泉さんと坪倉さんが、暗がりだと何となく顔が似てる気がするんだよな……これもキャスティングの妙でしょうか。やはりこれだけ情報がモリモリだと、2回見てようやく理解できる演出部分もありますよね。

ともあれ、またもや夜這いのお陰で命拾いする頼朝。ただ終盤は、「だが、これまでとは違った。今までははっきりと、天の導きを感じた。声が聞こえた。だが昨日は、何も聞えなかった。たまたま助かっただけじゃ。次はもうない」なんて自分でしっかり死亡フラグ立ててるのがしんみりしてしまいました。頼朝ロスも間近やな……。



また、曽我五郎を捕らえたあとの義時の闇堕ちっぷりも進行していてやばかったですね。時政(坂東彌十郎)のパッパが「命だけは助けてやるわけにはいかねぇかなぁー」なんて言うのに「諦めていただくしかありません」なんて即答。

実際に五郎が「俺が狙ったのは頼朝なんだぁー!」と未練がましく叫びながら斬首の場へ連れていかれた後も、淡々と「以上でございます」と述べ、時政をゾッとさせていました。このときのパッパの表情、見ました?皆さん。「あの優しい俺のムスコ、いつの間にこんな冷酷な人間になっちゃったの⁉︎」みたいな。後々、時政VS義時の、親子間の確執が生まれるフラグもしっかり立てられましたね。

ただ、これも北条家を守るため。そのために用意した義時のシナリオというのが、曽我兄弟の襲撃は「仇討ちを装った謀反ではなく、謀反を装った仇討ち」というもの。これはもう、陰謀論でしかなかった「頼朝暗殺未遂事件」こそが正史だと言わんばかりのとんでもねえシナリオですよ。これを鎌倉殿に「末代まで語り継ごう」だなんて言わせて。こうなるともはや「史実無視」どころじゃありません。「新解釈・曽我兄弟の仇討ち」ですよ。

『鎌倉殿の13人』から「曽我兄弟の仇討ち」を知った人は、こっちを真実だと思いこんじゃうでしょうね。むしろ、個人的にはそれでいいとすら思えます。よくできた脚本というのは、正史すら塗り替える力があると思っています。まさにそれが起こった伝説回だったのではと思いました。

言うて、あの有名な幕末の偉人・坂本龍馬だってさ、ほとんど司馬遼太郎大先生の創作だとも言われてますしね。

なんで薩長同盟の真の立役者・小松帯刀より有名になっちゃったんだろうねぇ。それでもみんな坂本龍馬が好きやん。ワシも好きやし。福山雅治さんの『龍馬伝』もカッコよかったし。ええねんそれで。すまんな、小松帯刀!

……と、脱線してしまいましたが。もうほぼ闇堕ちしながらも、人間の心はまだ捨てきれないと言わんばかりに境界で揺れ動く義時の心。比奈とは何だかんだいい感じになってしまいますが、2人のラストのシーンでは、義時は「私は、あなたが思っているよりもずっと汚い」だなんて言い、壁を作ろうとします。

やっぱりまだ八重さんのことが忘れられないんですけど。そもそも義時、義経討伐の際に自分が関わってしまったということを、八重さんには最後まで打ち明けられずで終わっていたんですよね。

そこで2代目ヒロイン・比奈の強いところですよ。「私の方を向いてくれとは言いません。私が小四郎殿を想っていれば、それでいいのです」なんて……これはもう強いよ、負けだよ。八重さんにも見せられなかったドス黒い部分を、それも込みで受け止めてくれるって言ってくれてるんだよ。よかったね小四郎。比奈さんと共に、末永くお幸せに……。

なんて、なれないんですけどね、史実では……(後述)。ともかく、今は2代目ヒロインの誕生を祝福といきたいところです。



そして今回の物語、やっぱり最後は蒲殿こと源範頼(迫田孝也)フラグで幕を閉じるのでした。これさぁ、比企が悪い。完全にあいつのせいや。

大江広元(栗原英雄)もいちいちチクんなやぁ。頼朝の訃報(※誤報)を聞かされてイキリ立っちゃった蒲殿を、「まるで次の鎌倉殿になったかのようなお振舞でした」だなんて頼朝に吹き込んで。これは「上総介の悲劇」の再来か?

……なんて思いましたけど。広元は飽くまで冷淡な人だし、頼朝さま第一やし、事実をこれまで通り伝えただけなんだよな。蒲殿だって、比企に「鎌倉を守るため」だなんて凄まれちゃあな。もちろん、蒲殿にぜんぜん「兄も万寿も死んでたとしたら、次の鎌倉を継ぐのは俺だ!」という気持ちが1ミリもなかったかどうかと言われたらわかりませんけど。

でも、「頼朝、死んだんじゃないの〜?」みたいな感じで鎌倉がザワついてたシーンよ。政子と頼朝の次男・千万を育てていた義時の妹・実衣(宮澤エマ)ですら、「乳母となって育ててきた甲斐があったというものだわ」なんて酔狂なことを言い出していました。あれも、「権力が目の前にぶら下がれば、誰だってこうやって狂っていく」と印象づけるようなシーンだったと思うんですよね。

それでも、それでもですよ。ちゃんと頼朝が帰ってきた時の蒲殿の表情よ。少なくともその時点ではもう、「俺が次期・鎌倉殿だ」なんてなんも考えてないんだよ。「あー、良かった、ぶじ兄ちゃん帰ってきたー」みたいに、ほんとにホッとした顔してんだよ。

比企は前半で万寿の弓を足に食らってザマミロだったけど、そんなんで消せるような罪じゃないよねあれは。さっさと北条に滅ぼされてください……とか思うんだけど、そうなったら結局、ようやく義時になびいてくれた比奈ちゃんがな……うぅん、ほんと、ままならない展開でございます。

というか、今回の本編ネタバレだけじゃなく、つい先々の史実まで言い及んじゃいましたけど。「言うなよコノヤロー!」なんて思っちゃった方、ゴメンナサイ。でも大河ドラマってむしろ、先の歴史も予習していた方が楽しめると思うんですよね。「その史実をドラマでどう描くか」ってところが醍醐味ですから。

そんな感じでここ最近、平安末期〜鎌倉時代の知識ばっかですけど、どんどん濃くなってて脳汁出まくりです。きもちいいッス。この記事がそんな、大河予習の手引きになれたら幸いでございます。

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