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【どうする家康】浅井長政の裏切りは家康のせい?大河で描かれる「成長」が悲惨すぎる件。第13回「家康、都へゆく」もっと深掘り

NHK大河ドラマ『どうする家康』(以下、『どう康』)第13回のもっと深掘り感想です。
(※本記事は一部有料です。ドラマレビュー箇所はすべて無料でご覧いただけます)
前回の感想はこちら↓

(※以下、ネタバレ注意)
(※本記事のセリフの引用箇所は一部ノベライズに準拠しており、ドラマのセリフとは異なる場合がございます)

●イケメン大貫勇輔が演じる浅井長政登場!裏切りを告白するも、どう演じられたか

一週お休みして、いよいよ本日、第14回「金ヶ崎でどうする!」の放送となりますが。その直前に振り返っておきたいものがある。今回は浅井長政(演:大貫勇輔)ですね。

過去の大河でも何度もフィーチャーされてきた浅井長政。上野樹里さん主演の『江 ~姫たちの戦国~』では、主人公・江の父親役として時任三郎さんが好演されていたのが、個人的に今でもすごく印象に残っています。

なぜ浅井長政が、同盟相手であり、義兄ともなった織田信長を裏切ることになったのか。恐らく第14回でも詳しく語られることになると思うのですが、ポイントは信長が北方の朝倉義景に対する進軍を決めたことですよね。大河初心者の方には、ぜひ朝倉と浅井の関係にも注目していただきたいところです。

ともかく、信長サイドから見れば「裏切り者」のイメージが強い長政が、『どう康』第13回ではどんな描かれ方をしていたか。振り返って、考察してまいります。

●長政はなぜ家康の家臣をかばったのか。浅井の家臣らの言動からも見えてくる、裏切りの予感

そもそもまだ長政が出ていない、京の街での家臣同士の争いのシーンですけど。浅井の家臣らは、本多平八郎・榊原小平太コンビに向かって「この田舎侍が!」と言い放ち、さらに仕えている主が徳川家康だとわかるや、

「知っとるぞ。信長の犬じゃろ?弱みそ、クソみそ大名じゃ!」

とさらにバカにしていましたね。ここ、わりと重要だなと思うのは「信長の犬」という言い方をしたこと。自分たちも信長とは同盟関係であるのに、その信長に対してまでだいぶ軽んじた言い方をしているような印象も受けます。

もちろん、「あくまで同盟関係」として、信長と対等な仲であるのは家康も長政も同じ。それを家康に対しては「信長の犬」という言い方をして、「我々の立場は違う。お前らは従属関係だが、我々は対等だ」と言っているように取れなくもないですけれど。

ただ、危ういですね。長政が「兄上を……裏切る」と打ち明けたことから振り返って考えてみれば、家臣たちの言動からも「信長なんて、いつでも裏切ってやれるぞ」という気概が感じられたように思えます。

長政からすれば、家臣がそんなことを口走ったのが信長の耳に入るのはマズイ。信長に家康と共に呼び出されたとき、家康の家臣たちを庇ったのも「穏便に済ませてほしいと、我が妻にも頼まれましてな」という理由だけでなく、「家臣らの戯言を隠さねば」という意味合いもあったのではないかと邪推してしまいます。

●それでも納得がいかない?信長を前にしたときの、長政のあまりに自然体な演技

最終的に「裏切る」ことが分かっているから、どうしてもそれまでの長政の言動を振り返ると、結果として「打診的」だったようにも感じられます。ただ、初めて信長が京で過ごしている屋敷に長政が顔を表したシーンで、とても裏切りそうに見えなかったことは、改めて注目しておきたいと思います。

特に、「けんか?めっそうもない。のう?徳川殿」というセリフ。

細かいところながら、「これ、何度聞いても良いなぁ」と思うのは、「けんか」という3文字の言い方です。疑問形なのに語尾のイントネーションが「けんか?↑」と上がっているのではなく、「けんか↓」と下がっているところなんですよね。そんな言い方をすることで、感情に余裕が見えます。

演技をしようとしているのではなく、本心から言ってるような調子。それでも家康を庇おうと嘘を言っているわけで、演技は演技なんですよ……。つまり、「演技だけど、演技に見せないよう心に余裕を持って言っているというのがわかる」演技だったと。

その喋り方一つで、個人的には「コイツめちゃくちゃデキるやつやんけ……!」と唸らざるをえないシーンになっていたのです。

さらには、地球儀を回す信長に対して言ったセリフ。「南蛮人は、我らより実に多くのことを知っております。そんな小さな島の中でいさかいをしていては、日ノ本そのものが、南蛮に取られるかもしれませぬ」なんて聡明な意見も口にしていました。

これ、その直前に家康が「ハハハ…この世が、そのような形ならば、我らは皆、下に滑り落ちまする」なんて冗談のように笑ってスベり散らしているのとの対比にもなって、めちゃめちゃ長政の「デキる奴」感が際立っていましたね。

信長を前にしたときの長政の台詞は、打算的だったのか、それとも本心からだったのか。ドラマ2周目以降はともかく、1周目のときにはまだ本心のようにも聞こえました。信長の望む通りのセリフを言い、あまりにも完璧な振る舞いを見せる長政。言葉をそのまま受け止めるなら、信長に陶酔しているようにすら思えましたし。

特に、「そんな小さな島の中でいさかいをしていては、日ノ本そのものが、南蛮に取られるかもしれませぬ」と、この大局を見据える力があるなら、将軍と共に日ノ本を統一しようとしている信長を裏切ることになるなんて、やっぱり納得がいかないんですよ。

●家康と共に信長の元を去る時、長政の心はすでに決まっていたのか?それとも……

それで、家康と別れる直前で言ったセリフにつながるわけですが、

「一度でいいから、腹を割って、心ゆくまで語り合ってみとうござった」

このセリフが「ござった」と過去形になっている点に注目して、「ああ、この時点で長政は、そんな日がもうこないことを知ってるんだね。つまりこの時点では裏切ることを決めていたんだ」なんて考察もSNSでは見ましたし、僕も当初はそれに同意していたんですけど……。

檜尾健太さんのドラマレビューを見てみると、長政が「ござった」と言った後、「いずれ、そのような折もございましょう」と家康がやんわり返したことで、長政が浮かべた表情についても言及されているんですよね。

この動画の解説を見た後でドラマを見返すと……確かに、悲しむような、ショックを受けたような、絶妙な顔をしているんです、長政……。

つまり長政の「ござった」は、「もう叶えられない過去」だったのではなく、「たった今から二人だけで語り合いましょうよ」という提案だったと。それを家康が、本心なのか社交辞令なのか「いずれ」というやんわりした返しをしたことが、長政にはショックだった、というシーンだったんですよ。

結論として、やはりこの時点で、長政にはまだ信長を裏切ることについての葛藤があったのだと思います。本人としては大局を見据える力があるのに、しかし個人的にどうしても従えないものがある。それを信長と対面したときには、「悟られまい、悟られまい」とうまい演技でやり過ごすんですけれど、本当にどうするかはまだ決めかねている。

「私は、三河国を守り抜いてこられた徳川殿のご苦労を思い、我が身の糧としてまいりました」

長政、そんなセリフも口にしていましたよね。家康についてはお市の方からいろいろ伺っているということも言っていますけど、だとしたら第4回の「清須でどうする!」で、かつて仕えていた今川から「たすけて せな」の血文字書状を受け取って苦しんでいた様子だって、伝わっていたかもしれません。

氏真を信頼し、仕えていながら、援軍を送ってもらえず、裏切って信長についた家康。そして今、信長を信頼し、同盟を結んでいながら、朝倉を攻めることを知って裏切ろうとしている長政。

きっと、「家康だったらわかってくれるはず」という気持ちと、「家康だったら、それは間違った判断だからやめろと止めてくれるかも」という期待が、このときの長政には半々ぐらいにあったのではないでしょうか。まだ決めかねている段階で、家康の答え一つによっては、長政の判断を変えられる可能性もあった。

それを思うと……やっぱりこの先の展開もめちゃくちゃドラマチックなんですよ。「家康があのとき、長政と二人で腹を割って話せていれば」という思いも、視聴者に与えることになります。ある意味では、「あの場面で家康が止められなかったせいで、長政が裏切ることになった」と。そこから踏み込んで「長政の裏切りの責任は、家康にある」と言っても過言ではない展開になっていたように思えます。

もちろん、フィクションではありますし、歴史にifは無いともよく聞く言葉ですけれど。ドラマとして「あのとき、ああしていれば」という展開を入れておくことは、そこにとてつもない感情の起伏を生むことになるのです。

要は「鬼脚本」ってことやな……!毎回言ってる感じですけどw

●これからの長政の描かれ方。それを目の当たりにした家康は……?

さぁ、そしてこれからの長政がどう描かれていくのか……第14回の予告で「ゆけ~い!」と号令をかける長政、さらには石川数正が「実直な御仁…だからこそ裏切るということでは」と評価している様子だけが見られました。

加えて先週公開された「新章開幕」の2分PR動画では、さらに、家康が「義の男であるが故に、裏切るということもあろうかと!」と誰か(信長?)に伝えている様子も描かれています。

そして長政に対する信長の仕打ちが、また家康の心を惑わせていくことになるのではと予感させるようなセリフも。

「やつは、わしを試しておるんじゃ。裏切れるものなら裏切ってみよと!」

この「やつ」というのは、恐らく信長のことでしょうね。家康も信長に対して葛藤する瞬間が描かれるのか。そしてそれが、また家康自身の成長をも促すということになるのでしょう。

「成長」というと、少年漫画などでは「良いもの」として捉えられるんですけど。大河ドラマでは決して、良い面ばかりではないのですよ。あらゆる裏切りを乗り越え、死を乗り越え、そして心が死んで非情になっていくことも、大河ドラマではひとつ、主人公の「成長」として描かれます。まさに、『鎌倉殿の13人』の、北条義時がたどった生き様のように。

そして4月9日には、本編の放送がなかった代わりに、「特別編 乱世を生きる女たち」という10分間のPR映像が放送されました。こちらも公式サイトからご覧いただけるようになっています。

これがまた、エモいのよ。特に最後のシーン、木彫りの兎を瀬名に託しながら、「この乱世、弱さは害悪じゃ。これは、わしの弱い心じゃ。ここへ置いていく」と言う家康の姿も見られました。

このセリフで感情ぐちゃぐちゃになるんです……これを見せたいがための、「弱い家康」だったのでしょう。ここからようやく「強い家康」が描かれていくという喜びもある反面、瀬名が愛していた弱い家康がいなくなってしまうという悲しみも、両方が描かれているシーンになりそうです。

そうやって見返すと、第13回「家康、都へゆく」は、ひたすら家康が京の都に浮ついて、コンフェイトのために右往左往し、お偉いさんにも会って腹をも下すただのギャグ回だったわけではなく、いろいろなことのターニングポイントにもなる重要なシーンがちりばめられていた回だったと思えます。

特にね、お市の方と再会し、赤子を抱き上げるシーンがですね……あの茶々という赤子、後に「淀殿」と呼ばれる、秀吉の側室になる女性ですよ。あとはもう、わかるなッ!皆まで言わんぞ!それを思うとマジで地獄なんよ。

さすがにここまで深掘りしていくと、第14回、マトモな精神状態で見れる回な気がせんわ……心を強くして放送に臨みましょうね……。

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