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【どうする家康】創作回で1話消費できる必然。服部半蔵は「小さな元康」だった。第5回「瀬名奪還作戦」もっと深掘り

NHK大河ドラマ『どうする家康』第5回のもっと深掘り感想です。
前回の感想はこちら↓

(※以下、ネタバレ注意)

服部半蔵は「小さな元康」。置かれた状況が殿とソックリ!

お待たせしました……お待たせしすぎたかもしれません!

いよいよ服部半蔵に関する深掘りレビューを、丸々1本分使って書いていこうと思うんですけど。いやぁ、ずっと書きたかったのヨ!『どうする家康』の中でも個人的な最推しキャラになるかもしれないです。

「え、推しは元康(家康)じゃないの?主人公だよ?」って突っ込まれそうですけど。いやいや、聞いてくださいよ。細かく分析していくうちにこの服部半蔵、キャラクターのポジション的にも、ひょっとしたら元康とだいぶ近い位置にいるんじゃないかと思っちゃいまして。

まずは服部半蔵の生い立ちから振り返っていきます。こちらドラマでも触れられていましたが、父・服部保長の代で、元康の祖父である松平清康に仕えていたとのことでした。

その父・服部保長、調べてみると、元は伊賀出身の忍者だったとのことなんですけど。一時期は室町幕府の将軍様にも仕えており、その際に松平清康公と会って意気投合して仕えるようになった、とかいう話も。なにそれ、そのエピソードだけでドラマ1本作れそうw

正成の父親で初代服部半蔵にあたる服部保長は伊賀国(現在の三重県伊賀市)の出身の忍者だったようで、一時期は室町幕府の12代将軍にあたる足利義晴に仕えていたようです。
その後、家康の祖父にあたる松平清康が義晴に謁見する際、たまたま保長と知り合う機会があり、意気投合して清康に仕えたという記録が残っています。

服部半蔵は忍者ではない?本能寺の変後の活躍や子孫も解説!|日本の歴史の面白さを紹介!日本史はくぶつかん

で、ドラマの酒井忠次の話によれば、清康公は、保長に「家中の探りを任せておりました」とのことでしたが……「が、ご存じのように祖父君は家臣に裏切られ、それが命取りに。のみならず、跡をお継ぎになった殿のお父君も、また同じように」と石川数正。

服部保長、おめぇがちゃんと目を光らせてたはずなのに、なんで松平家の2代にわたって家中から裏切り者を出してしまったんじゃ!ということで役を解かれ、保長は無念のうちに病死してしまったとのことなんですけど。

それを継いだ息子・服部半蔵(正式には「服部半蔵正成」という名らしいですが、ドラマに合わせて本稿では彼を「半蔵」と呼びましょう)が形ばかりの服部家を守っているとのことでした。

なんかもう……この時点で元康とすごい境遇が似てません?元康は三河一国の主ですけど、本人は当初、今川の人質として過ごしてきたわけですし。本領の岡崎城にも山田新右衛門(天野ひろゆき)とかいうでっぷり太ったオッサンが居座っていました。今川の家臣が城を預かり、言ってみれば松平家だって、そのときは「形ばかりの城主」だったわけです。

(てか、『第4回「清須でどうする!」もっと深掘り』記事に続き、また山田新右衛門の名前を出しちゃったな。本編では一瞬しか出てきてませんでしたけど……「誰だっけそれ」とか言わないであげてよw)

そして、家臣たちですよね。形ばかりの城主にだって、「殿、殿~!」と仕える者たちがたくさんいたわけですが、それを元康も当初は、ありがたがるどころか「なんてみすぼらしいんだ」と嘆くような目で見ていました。

服部半蔵も、また。「服部党」という配下を抱えており、「散散ばらばら」とは言われつつ、例の「戦国ピタゴラスイッチ」を使えば一瞬で集合するようなデキる集団だったわけですけれども。

それでも半蔵は「義も忠もねえ。銭のためならなんでもやる卑しき連中じゃ」や、「哀しき奴らだ」と言って、彼らのことをあまり良くは思っていませんでした。この心境も元康の最初のころにソックリ。SNSでは「半蔵は小さな元康だ」と指摘されていた方もいらっしゃいましたけど、まさにその通りだと感じざるを得ません。

2回目のタイトルロゴは「半蔵回スタート」の合図?ネガティブで慎重派なところも元康に似たキャラづけ

だからこそ、第5回では主役を張れるほどのポジションに服部半蔵が据えられたんですね。ついでに言うなれば、僕、雑感のときに指摘してるんですけれども。「今回はOPが2回あるのか」「タイトルロゴも2回目」と。あれこそ、「ここから『小さな元康』である、服部半蔵の物語がスタートしますよ」という合図だったのではと感じました。

ひとまず最初のミッション、瀬名との密書のやりとりに成功したところで早速トラブルが。当初は瀬名とお子達2人を救い出せばよかったはずが、瀬名の侍女からの言伝で「関口家もろとも」救い出してほしい、ということに目的が変わってしまいました。

これを「今川の御一門衆、関口氏純を岡崎へお連れすることができれば大手柄じゃ」とポジティブにとらえる本多正信。「関口殿とご家来は武士じゃ。内側に味方の兵ができたと考えればよい」と調子のいいことを言っていました。ここ、何気に正信というキャラの性格がよく出てるセリフだと思うんですよね。どんなピンチも、見方を変えてチャンスととらえる強さ。

そして、「俺は、できるかできねえかは考えません。やれと言われたことをやるだけで」と大鼠。穴熊も「銭さえもらえりゃ」と笑い、プロフェッショナルな姿を見せていた服部党ですけど……。

彼らの言葉に押される前の服部半蔵は、「無茶じゃ」「いかん、多すぎる」とネガティブ。彼らから説得されている間も、終始険しい表情を浮かべていました。やはりここも当初の元康にそっくり。基本的に慎重で、やや臆病ぎみなキャラ付けがされているような印象を受けます。

「俺ら服部党は、まだ死んじゃおりません」虎の心を目覚めさせる半蔵。次なる策へ

そして、潜入計画がばれ、無念にも鵜殿長照らから殺されていく服部党。残されたのは手負いの大鼠と半蔵のたった2人となったとき、「ここで死にまさぁ」と言った大鼠に「俺も戦う!」と半蔵は返すのですが。

「たわけ!半蔵様が死んだら、誰が俺らの妻や子に銭を渡してくださる。服部党はまだまだおります。俺らの子や孫が。どうぞやり遂げて、銭をたぁんとくれてやってくだせぇ!」

マジでここは名シーンでしたね……半蔵と服部党の関係がよく描かれたシーンであり……。服部党が何のために戦ってるのか、確かに銭は銭なんですけれど、銭を得たその先に「子や孫を守るため」というより崇高な目的があったことが知れた非常によいシーンでした。

なおかつ、手負いでニヒルに笑いながら大鼠が言うと、すごい泣けるのよ……その直後、大鼠が武士に飛び掛かるさまもめちゃめちゃかっこいいの。あっさり斬り捨てられるどころか、むしろ大鼠の方が優勢にも見えましたからね。

たとえ任務が失敗しても、最後の最後まで戦い抜く服部党。やっぱり強かった!情報が漏れてさえいなければ、必ずやり遂げていただろうと感じさせる最期でした。

やがて岡崎に帰ってきて、正信の横で一人泣きはらす半蔵……。武士が他人に涙を見せるなんて、本来なら恥だと思うんですよ。けれどそのときの半蔵の中には、大鼠の最後の言葉が渦巻いていたような気がします。

「何とかやり遂げなければ。死んでいった党員たちのためにも、これを乗り越えねば」。そんな気持ちが高まっていたから、正信に隠すことなく、リベンジを思いながら涙の表情を見せていたように感じます。

「俺ら服部党は、まだ死んじゃおりません」

そう言い、次の策を元康に伝える半蔵。そのときの彼は、もはや臆病な兎ではありませんでした。虎の心を持った立派な武士になっていたと思うのです。

(オマケ)証拠が消された以上「無かった」とも言い切れない。7歳児の視聴者を見習え⁉︎

いよいよ来週は、鵜殿長照の息子たちを生け捕りにするという、「史実として語られる」エピソードへとつながっていくわけですけれど。

今回は丸々1話が創作ということで、「そんな史実に無い話、要る?」なんて批判の記事もネットで見かけました。

ただ、今回の話がなければ「先に鵜殿長照の息子たちを生け捕りにするの?それなら最初から瀬名を救出してた方が早くない?」みたいなドラマとしての展開にツッコミも入りそうですし。

なにより今後、服部半蔵というキャラクターを生かしていくためには無くてはならない話だったと感じています。

そしてここが肝心なんですけど、ドラマを見ていて「あったかもしれない」と感じさせる部分がありました。元康から瀬名に送られた密書が、火にくべられて燃やされるシーン。あれを放送当時テレビで見てたとき、「なんで燃やしてるの?」とうちの7歳の娘が聞いてきたんですけど。

「秘密の手紙だから、誰にもバレちゃいけないんだよ」と答えつつ……逆に言うと、手紙があのシーンで燃やされているということは、こんな瀬名救出計画が無かったという証拠もない、ということに気づいたんですね。

証拠がない以上は、ドラマとして描くのだって自由ではありませんか。もちろん、大きく史実を歪められて賛否を呼ぶ回だってあるでしょうけれど、今回の物語はむしろ「あったかもしれない」歴史の余白として、もう少し寛大に楽しめる物語だったのではと思うのです。

なにより、うちの娘から「なんで燃やしてるの?」なんて質問が出てきたことに驚きでした。7歳児の方が「史実だなんだ」という知識がない分、よっぽど真剣に好奇心を持ちながらドラマを鑑賞できているということですね。

こういう視点は、僕自身も見習わねばなりませんね……。

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