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父・村田高詩のこと

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父、村田高詩について書いたものをまとめました。 父は59歳でパーキンソン病と診断されてから18年になります。介護度5。 特養に入所している為、3年間面会が叶いませんでした。やっ…
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#1970年代

朋あり遠方より来たる

朋あり遠方より来たる

2019.11.1 STUDIO T&Yブログより転載
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先日父が久しぶりに来店したのは、この方に会うためでした。
本池秀夫さん。
革人形師。
アトリエMOTO’S主宰。
鳥取県無形文化財保持者。

十数年ぶりの再会。
父と本池さんの出会いは四十数年前、父のゴローズ時代にまで遡る。
その頃ゴローズの工房は青山のマンションの一室で、本池さんは同じマンションの上階に住ん

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村田高詩HOSTORY 2

村田高詩HOSTORY 2

2019.5.6
国鉄を辞め、生まれ育った北海道を出て、布団と画材とわずかな衣類だけを背負い汽車で上京した父。

国鉄時代に貯める筈だったお金は結局貯まらなかった。貯金はほとんどない。

先ずは、一足早く上京していた知人のアパートに転がり込んだ。

札幌のデッサン教室で知り合った翼夫(ヨクヲ)さんは桜ヶ丘に六畳一間の部屋を借りていた。

六畳一間。

ヨクヲさんもよく転がりこませてくれたものだと思

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村田高詩HISTORY 1

村田高詩HISTORY 1

2019.3.10
私の家の近くの介護施設に入所した父に、この頃から少しずつ昔の話を聞き取り始めました。

第1話は北海道編。

私の父、村田高詩は北海道は滝川で生まれ岩見沢で育った。
未熟児で生まれ、体はあまり強くなかったものの手先が器用で、雪で二階建ての城を作ったり、柳の枝で弓や木刀を作っては友だちに配るような少年であった。
まだ小学校に上がる前のこと。
仲良くしていた向かいのお家の倉庫の中か

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父記録 6/12【ここ数日が山場です〜The second season 】

父記録 6/12【ここ数日が山場です〜The second season 】

雨。
昼前、犬にハーネスを着けていると電話が鳴った。父の病院からだ。
朝方から高熱が出て酸素濃度低下、肺炎も悪化しているという。
「何時ごろ来られますか」
「すぐ行きます。」
ハーネスを着けたままの二匹が玄関まで見送ってくれた。納得いかない顔をしていた。
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レントゲン写真に写った父の肺には再び白いもやがかかっていた。
「ここ数日は急な呼び出しがあるかもしれません。エクモ

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父記録 2023/5/2

父記録 2023/5/2

5/2
晴れ。暑い。
犬の散歩から帰って犬の足を拭いたら犬の体も熱くなっていた。
段々と季節が変わってゆく。
薔薇は今日もモリモリ咲いている。

今日の父は両手にミトンを嵌めていた。
今朝、少し興奮して暴れて抜いてしまったそうだ。
パーキンソンの症状で、父は動きや力の制御が出来なくなることがある。
体は痩せ細っているのに、力の入っている時は私が精一杯頑張っても一人では静止できないほど強い。
「面会

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