Barbara Murata Tomomi

バーバラ村田です。 STUDIO T&Y代表、村田朋未です。 株式会社ムラタ制作所代表取締… もっとみる

Barbara Murata Tomomi

バーバラ村田です。 STUDIO T&Y代表、村田朋未です。 株式会社ムラタ制作所代表取締役です。 https://murata-creative.com/

マガジン

  • 父記録2023

    2023/4/2からの父の記録。 父は60歳でパーキンソン病と診断されてから17年になります。介護度5。 特養に入所している為、3年間面会が叶いませんでした。やっと面会が制限付きで解禁された矢先に誤嚥性肺炎で緊急搬送され、入院。 限りある時間を書き残しておきたく、日々の記録を綴っています。

最近の記事

豊岡のお坊さん

豊岡演劇祭ストリート、初めての参加でした。 旧豊岡市役所前で各日バーバラビット二回ずつ、閉会セレモニーの後、旧市役所内の稽古堂にてかたわれ。 再会や出会いが沢山ありました。 初日の夜、夕ご飯を買いにナイトマーケットに行ったらどこも売り切れで、ひもじい思いですぐ向かい側にあった焼肉屋さんで牛丼のテイクアウトを頼んだ。 牛丼を待っていると 「ちょっと一杯飲ませてやー。チューハイ。」 と勢いよく入ってきたカジュアルお洒落なおじ様。 「なんかそこで大道芸やってたからちょっと観て10

    • 父記録 2023/7/17【なちゅやしゅみアルバム】

      「わーわーわー!うるさい?うるさいでしょ、うるさいあたしがうるさくしに来たわよーとっちゃえとっちゃえー」 母が元気よく声をかけたかと思うとおもむろに父のアームカバーを外し始めた。 返す刀で蒸しタオル。父の頭ぐいぐいと拭く。 「乱暴でしょ?乱暴で鳴らした由美子さんだからね!」 父はされるがままになっている。由美子さんの夫歴半世紀超だからな。 ガンバお父さん、私は足を拭くよ。 「『乱暴だなあお前は。朋ちゃんみたいに優しく出来ないのか〜?』って思ってるでしょ。出来ないのよ〜」 父

      • 父記録 2023/7/16【もう一度、】

        母はお休み。 7/13、私がお休みでひとりで面会に行った母から 「お父さん、『もう一度…』って言うのよ。もう一度、もう一度、なにしたいの? あたしはもう一度、大学通りを犬、一匹でいいから連れてさ二人で散歩したいな。 もう一度、お店に行きたい?家に帰りたい? ってお母さん色々訊いたんだけどお父さん、『もう一度…もう一度、』って。なんだか分からなかった。」 と電話があった。 私からも、訊いてみる。 「お父さーん。ね、もう一度、もう一度、何したい?」 「大学通り歩きたい?犬散歩し

        • 父記録7/10〜12

          7/10 晴れ、暑い 今日も目をぱっちり開けていた。 「お父さんうちに居ないから、喋る相手居ないから、今までよく二人で喋ったなあと思ったわよ。うるさかったかしら〜?」 母がいたずらっぽく父に話しかけた。 「お手手拭こうかー?」 父の手はいつも固く握りしめられている。 「お父さんの右手。よく頑張ったね、たくさん作ったね。お疲れ様右手。」 話しかけながら父の拳と腕を揉む。 母が笑いながら繰り返す。 「お疲れ様、右手!」 7/11 母「お父さんが喋るとみんな嬉しいのよ」 看護師さ

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          父記録 2023/7/9 【かっこいいヒゲ】

          晴れ時々雨。暑い。 今日は母はお休み。 「お父さーん。昨日ゆきおさん来てくれたでしょう?よかったねえ」 蒸しタオルで頭、顔、手、足を拭いて揉む。 「お父さーん、顔拭きますよー」 ゴロゴロ 「外は暑いよ〜」 ゴロゴロ 父はよく笑い、よく返事してくれた。 何かを一生懸命言っていたが、聴き取れない。  「お父さん今日は沢山返事してくれてうれしいなー。でもゴロゴロがあるからよく聞き取れないんだー。痰吸引してもらう?どう?どうかなー?」 ゴロゴロゴロ テレビでは相撲中継が流れている。

          父記録 2023/7/9 【かっこいいヒゲ】

          父記録 2023/7/6【小舟の時間】

          晴れ、暑い 母と二人で病室に入ると看護師さんが痰吸引中だった。 父は酸素をつけていた。 「今朝ちょっと酸素濃度が下がってしまって、今念のため酸素をつけてます。 なかなか痰吸引がうまくいかなかったりが続くと下がってしまうんですよね。 村田さーんご家族見えましたよー。」 痰吸引が終わった。 「お父さん、よかったね、楽になったねー」 「最近ね、いいですよね。『暑いですか?』『あつくない』とか『苦しいですか?』『苦しくない』とか、おはよう、とかね、やりとりが看護ノートにズラーっと

          父記録 2023/7/6【小舟の時間】

          父記録 2023/7/5 【ゴローズとステーキとレディボーデンと天下市】

          曇りのち雨 昨日から父は再び個室に移動となった。 久しぶりにゆっくりのびのびした面会。 父は目を開けていた。 母と二人で父の頭と顔と手足を拭く。 「どうした〜?大丈夫〜?ここにいたら安心ね〜危なくなったら助けてくれるからね〜」 母が歌うように話しかけた。 父の胸は少しゴロゴロしていた。 「お母さん、お父さんが看板屋さんの時ずっとお父さんのお弁当作ってたのよ。少ない予算で工夫して。お父さん痩せてたし、お金なかったし。あの頃、オイルショックもあって大変だったのよ。お父さんにな

          父記録 2023/7/5 【ゴローズとステーキとレディボーデンと天下市】

          父記録 2023/7/2【リフレイン】

          晴れ、真夏のよう。 今日は母はお休み。 父の呼吸は今日もゴロゴロと鳴っていた。 暖かいおしぼりでそっと父の顔を拭く。 頬におしぼりを当てるとちょっと気持ちよさそうな顔になった、気がした。 頭を拭くとちょっと顔を顰めた。 耳を揉む。 足がタオルケットの中で絡まっていたので直す。竹竿みたいな脚。 足も暖かいおしぼりで拭いてマッサージした。 首の付け根が凝っていた。揉む。 少しゴロゴロが小さくなった気がした。 帰り際、ナースステーションの前を通ると看護師さんが追いかけてきた。 「

          父記録 2023/7/2【リフレイン】

          父記録 2023/6/29【おにぎりと金目鯛】

          晴れ、暑い、暑い 店が立て込んで時間ギリギリに病院に駆け込んだ。母はロビーで本を読んでいた。 母の鞄にはいつも本と、新聞の切り抜きが入っている。スマホは持たない。 今日の父は穏やかな顔をしていた。 「金目鯛を上等な日本酒で煮たの。おいしく出来たから、きっとお父さんが好きな味だからともちゃん食べて。」 母が保冷剤で包んだタッパーを差し出した。 「お父さんには煮汁。舐められたらいいんだけど。」 小さなペットボトルに詰めた金目鯛の煮汁。 父は今日もゼロゼロしていた。 「う

          父記録 2023/6/29【おにぎりと金目鯛】

          父記録 2023/6/28【幸せでありますように】

          晴れ、曇り、雨 気圧が不安定で、湿度が高い 母と二人で病室に入ると父は目を開けていた。今日はいい顔をしている。 呼吸はずっとゼロゼロしている。 主治医の先生から説明を受けた。 「今は敗血症と肺炎の治療をしています。 これが落ち着くまでは転院も保留となります」 病状としてはある程度落ち着いて来てはいるものの、転院するには不安定だということ。 良くはないが、この病院にまだもう少し居られるのはありがたい。 「お父さん、顔きれいにしようねー」 顔を拭くと父は「あーあー」と悲しそ

          父記録 2023/6/28【幸せでありますように】

          父記録 2023/6/24

          晴れ ゆきおさんと。 「アニキーゆきおだよ、わかる? アニキお肌きれいだね、ツヤツヤだね。 髪の毛もなんだか黒くなったみたいだよ。 頭使わないからかな?アニキー、頭使いなよ、アニキー。 アニキー、見える?目、開かないの?」 父は胸をゼロゼロ鳴らしながら眠っていた。 反応はない。 ふたりで父の顔や頭を拭いた。 30分経った。 「アニキ、また来るよー。ゆきおだよ、わかる?アニキ、わかる?」 父が目を開いて小さく、けれどはっきりと頷いた。 ゆきおさんはまた近いうちに入院する。 「退

          父記録 2023/6/24

          父記録 2023/6/23

          6/23 天気は忘れた。 福太(犬)が前夜から下痢と嘔吐を繰り返していた。 数日前から胃腸の調子が悪そうだったのだ。 いや、たぶん2週間くらい前から具合が悪かったのだ。でも食欲はあるので夏バテかな?くらいに思っていた。余裕がなかった。ごめん福太…。 週末、病院が休みだったのでおかゆを炊いて小分けに食べさせてみたりしたが、嘔吐も下痢も酷くなるばかりで、朝イチでかかりつけの動物病院へ向かう。 おそらくウイルス性胃腸炎だろう、とのことで薬をもらった。 昼に帰宅してすぐに首都圏子ど

          父記録 2023/6/23

          父記録 2023/6/21【30分】

          晴れ。 また薔薇が咲き始めた。 春先の薔薇より小ぶりで数も少ない。 今日から父は大部屋に入った。 大部屋とはいえ、ベッドの周囲には充分なスペースがあり、カーテンでしっかりと仕切られていた。父のベッドは窓側だった。 個室の時と同じく、大きな窓から空と緑が見える。 今日も父の呼吸はゼロゼロだ。 母とふたりで父の頭や顔や足を拭いた。 母はなぜかベッドの手すりまで拭いていた。 「お父さんの仕事でともちゃんが食えるようになったのよ、よかったわね」 母が父に話しかける。 いやまあ食え

          父記録 2023/6/21【30分】

          父記録 2013/6/20【ゼロゼロ】

          晴れ。 今日から大部屋。福太、下痢嘔吐。 なんだか、短くてつまんないわね ゆったりとした、たまに手持ち無沙汰な2時間が、せわしない30分になった。 6/20 父の胸がゼロゼロ鳴っている。呼吸が荒い。 「んー…ゼロゼロ…ん〜ゼロゼロ…」 「お父さーん」 「…ゼロゼロ」 「お父さーん」 「ん〜…ゼロゼロ…」 「おとうさーん、明日から大部屋に移動になるよ。面会時間は30分になっちゃうけどね、毎日来るから大丈夫だよ〜」 「…ゼロゼロ…ゲホゲホ」 「お父さん、ゲホーって咳したら痰出る

          父記録 2013/6/20【ゼロゼロ】

          父記録 2023/6/18

          晴れ、夏日。 父の日である。 母はお休みで、一人で面会に向かった。 今日も父は眠っている。 穏やかで、すっきりとした顔をしていた。 「お父さん、おはよう。お父さん、きたよ、おはよう」 何度か声をかけると父は微かに言葉にならない声を出した。 「お父さん、聴こえてる?」 と訊くと「ああ…うん…」と掠れた声で返事をしてくれた。 「今日は父の日だからね、お父さんにお礼を言おうと思って。」 カーテンを開けてベッドサイドに腰掛けて、父に伝えておきたいことを一人で喋る。 「お父さんが倒

          父記録 2023/6/18

          瓶詰めの記録

          父が緊急搬送されてから二ヶ月になろうとしている。正直、こんなに長く記録を書き続けるとは思っていなかった。 父は危篤状態を乗り越えて病状は低空飛行ながらも安定し、かと言って良くなる訳ではなく、がくんと落ちたら少し這い上がり、けれども元のところには這い上がり切れずに少しずつ少しずつ坂を下っていっている。 二ヶ月前の緊迫した時期を過ぎて、今はただただ時間を作って会いに行き、母と二人で思い出話をしながら父の体を拭いたりマッサージする毎日。 それをただただ記録して、書き起こしてい