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よるべない日々①

2020年1月中旬。
私は学生時代のサークルの仲間と共に、小さなライブハウスでパントマイムライブの準備をしていた。
その日の朝だったか、中国で謎の感染症が流行り始めたという報道があった。
小さなライブハウスで、みんなでお客さんの為の席をぎゅうぎゅうに並べながら、「謎の肺炎?みたいのが武漢で流行ってるらしいよ。」「怖いね」なんて言い合ったのを覚えている。
ライブは大入り満員だった。後輩たちも沢山観に来てくれた。
若い頃一緒にパントマイムを始めた仲間たちが30年近く経った今でもこうして続けていて、久しぶりに一緒に舞台に立っている。亦楽しからずや。
帰りの車の中で「またやりたいね。」なんて話したりした。
2月。
高円寺の小さなバーやら渋谷のカフェレストランやらでショーをした。
マスクをする人がちらほらと増え始め、東京ではアルコール消毒液が品薄になってゆき、海外での感染状況がテレビやSNSに流れ始めた。
香港の友人から「必要ならマスクやアルコールウェッティを送る!」とメッセージが来て、「大丈夫」と返した。
まだ大丈夫、きっと大丈夫。

2月後半。
父の居た特養が閉鎖され、私は大阪でのイベントに出演した。
会場はなかなかの入り。マスクについては覚えていない。新幹線の中では着けていたかもしれない。
東京では既に手に入らなくなっていたアルコール消毒液を大阪で買った。
コロナはひたひたと、けれども思った以上に早足で近づいて来ていた。

2月末
高円寺の小さなバーで自主イベント。
開催を少し逡巡したが決行。
会場の全テーブルにアルコールウェッティを置いた。
マスクを着けている人が増えて来ていた。

3月末
出演予定のイベントが直前に中止となった。
気がつけばすぐ後ろにヤツがいた。
ここから先の舞台、イベントは軒並み中止となり、
経営しているジュエリーショップの臨時休業を決めた。
4月7日、緊急事態宣言。
「緊急事態宣言」という響きに狼狽えながらも当初は
1ヶ月くらい、いや3ヶ月はかかるかもな。
そんなふうに思っていた。




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