Barbara Murata Tomomi
2023/4/2からの父の記録。 父は60歳でパーキンソン病と診断されてから17年になります。介護度5。 特養に入所している為、3年間面会が叶いませんでした。やっと面会が制限付きで解禁された矢先に誤嚥性肺炎で緊急搬送され、入院。 限りある時間を書き残しておきたく、日々の記録を綴っています。
昔々、光洋さんが子連れでエジンバラの演劇フェスに出演した時のこと。 私は当時ロンドンに留学していたこともあり、お手伝いに行った。 光洋さんは妻子連れで来ていて、奥…
2020年4月7日緊急事態宣言。 店が閉まり、街に人気がなくなりスマホばかり見る日々。 ものすごい勢いで「配信」が始まった。 配信演劇、配信ライブ、配信大道芸、配信ワー…
2020年1月中旬。 私は学生時代のサークルの仲間と共に、小さなライブハウスでパントマイムライブの準備をしていた。 その日の朝だったか、中国で謎の感染症が流行り始めた…
「ほらー気持ちいいでしょ、鼻の穴ふさいじゃえー!」 母が歌うように言った。 蒸しタオルで父の顔や頭や足を拭く。 「あー気持ちいい気持ちいいねー。嫌なの?どっちなの…
父の恩師、ゴローさんの10th Memorial にお招き頂いて、母と夫と三人で参加してきました。 夫には父のペンドルトンジャケット、帽子、ゴローさんに作って貰ったベルトを着…
オパールの付いたフェザーネックレスを着けた若者がやってきた。 ぼろぼろになってしまったレザーブレスを差し出して、「母のものなんですが、革の交換出来ますか?」と言…
上野でのフェスティバル出演の後、加納さんと一緒に母の家に向かった。 預けていた加納さんの財布の修理が出来上がったと言う。 母の家に着くと柴犬じろうがゆらゆらと尻尾…
豊岡演劇祭ストリート、初めての参加でした。 旧豊岡市役所前で各日バーバラビット二回ずつ、閉会セレモニーの後、旧市役所内の稽古堂にてかたわれ。 再会や出会いが沢山あ…
「わーわーわー!うるさい?うるさいでしょ、うるさいあたしがうるさくしに来たわよーとっちゃえとっちゃえー」 母が元気よく声をかけたかと思うとおもむろに父のアームカ…
母はお休み。 7/13、私がお休みでひとりで面会に行った母から 「お父さん、『もう一度…』って言うのよ。もう一度、もう一度、なにしたいの? あたしはもう一度、大学通り…
7/10 晴れ、暑い 今日も目をぱっちり開けていた。 「お父さんうちに居ないから、喋る相手居ないから、今までよく二人で喋ったなあと思ったわよ。うるさかったかしら〜?」 …
晴れ時々雨。暑い。 今日は母はお休み。 「お父さーん。昨日ゆきおさん来てくれたでしょう?よかったねえ」 蒸しタオルで頭、顔、手、足を拭いて揉む。 「お父さーん、顔拭…
晴れ、暑い 母と二人で病室に入ると看護師さんが痰吸引中だった。 父は酸素をつけていた。 「今朝ちょっと酸素濃度が下がってしまって、今念のため酸素をつけてます。 な…
曇りのち雨 昨日から父は再び個室に移動となった。 久しぶりにゆっくりのびのびした面会。 父は目を開けていた。 母と二人で父の頭と顔と手足を拭く。 「どうした〜?大丈…
晴れ、真夏のよう。 今日は母はお休み。 父の呼吸は今日もゴロゴロと鳴っていた。 暖かいおしぼりでそっと父の顔を拭く。 頬におしぼりを当てるとちょっと気持ちよさそうな…
晴れ、暑い、暑い 店が立て込んで時間ギリギリに病院に駆け込んだ。母はロビーで本を読んでいた。 母の鞄にはいつも本と、新聞の切り抜きが入っている。スマホは持たない。…
2024年3月14日 13:44
昔々、光洋さんが子連れでエジンバラの演劇フェスに出演した時のこと。私は当時ロンドンに留学していたこともあり、お手伝いに行った。光洋さんは妻子連れで来ていて、奥さんが音響。娘のなおちゃんは三歳。上演中にひとりになってしまうなおちゃんの子守りをするのが私の役目。劇場の地下が宿泊部屋になっていて、夕ご飯の後なおちゃんが眠ったところを見計らって光洋さんと奥さんはそうっと舞台に向かう。「起きませ
2024年2月22日 02:43
2020年4月7日緊急事態宣言。店が閉まり、街に人気がなくなりスマホばかり見る日々。ものすごい勢いで「配信」が始まった。配信演劇、配信ライブ、配信大道芸、配信ワークショップ。ツイキャスやインスタライブでパフォーマンスやおしゃべり配信をする人も増え、打ち合わせや稽古、飲み会までもがzoomになった。無観客開催が普通になって、「有観客」という不思議な言葉が生まれた。今まで大道芸や舞台やラ
2024年2月19日 02:49
2020年1月中旬。私は学生時代のサークルの仲間と共に、小さなライブハウスでパントマイムライブの準備をしていた。その日の朝だったか、中国で謎の感染症が流行り始めたという報道があった。小さなライブハウスで、みんなでお客さんの為の席をぎゅうぎゅうに並べながら、「謎の肺炎?みたいのが武漢で流行ってるらしいよ。」「怖いね」なんて言い合ったのを覚えている。ライブは大入り満員だった。後輩たちも沢山観に
2023年12月25日 00:31
「ほらー気持ちいいでしょ、鼻の穴ふさいじゃえー!」母が歌うように言った。蒸しタオルで父の顔や頭や足を拭く。「あー気持ちいい気持ちいいねー。嫌なの?どっちなの?足も拭いちゃえ〜」「ヨガの先生がね、足首あっためるといいって」母は頭、私は足。手分けして父の体を蒸しタオルで拭く。昨日母と選んだ小学生時代の夏休みの写真をプリントしてボードに貼って持って来ていた。珍しく週末にお店を休んで遊園地
2023年12月18日 21:07
父の恩師、ゴローさんの10th Memorial にお招き頂いて、母と夫と三人で参加してきました。夫には父のペンドルトンジャケット、帽子、ゴローさんに作って貰ったベルトを着けてもらいました。このペンドルトンは偶然にもゴローさんとお揃い。母は「ありがとう、うれしい。誰かがこのコート着てるの見ると、胸がほかほかっとするわね。いつもこんな感じの人が隣にいたから」と言いました。四人でゴローさん
2023年12月9日 01:55
オパールの付いたフェザーネックレスを着けた若者がやってきた。ぼろぼろになってしまったレザーブレスを差し出して、「母のものなんですが、革の交換出来ますか?」と言う。レザーブレスはとても珍しいタイプのものだった。革は吟面があちこち剥げてくたくたになっている。長年着けてくださっていたのだろう。少し時間はかかるが修理は可能なことを伝えてブレスレットをお預かりした。「Instagramで見たこの
2023年10月31日 03:17
上野でのフェスティバル出演の後、加納さんと一緒に母の家に向かった。預けていた加納さんの財布の修理が出来上がったと言う。母の家に着くと柴犬じろうがゆらゆらと尻尾を振りながら出迎えてくれた。母は次から次へとテーブルに食べ物を並べる。トロサーモン丼、もずく、めかぶ、マグロのお刺身、白滝と牛肉の煮たの「アイスクリームも買っておいたのよ」ハーゲンダッツ。「こんなの作ったの。」リンゴとレーズン
2023年9月27日 02:30
豊岡演劇祭ストリート、初めての参加でした。旧豊岡市役所前で各日バーバラビット二回ずつ、閉会セレモニーの後、旧市役所内の稽古堂にてかたわれ。再会や出会いが沢山ありました。初日の夜、夕ご飯を買いにナイトマーケットに行ったらどこも売り切れで、ひもじい思いですぐ向かい側にあった焼肉屋さんで牛丼のテイクアウトを頼んだ。牛丼を待っていると「ちょっと一杯飲ませてやー。チューハイ。」と勢いよく入って
2023年7月31日 23:49
「わーわーわー!うるさい?うるさいでしょ、うるさいあたしがうるさくしに来たわよーとっちゃえとっちゃえー」母が元気よく声をかけたかと思うとおもむろに父のアームカバーを外し始めた。返す刀で蒸しタオル。父の頭ぐいぐいと拭く。「乱暴でしょ?乱暴で鳴らした由美子さんだからね!」父はされるがままになっている。由美子さんの夫歴半世紀超だからな。ガンバお父さん、私は足を拭くよ。「『乱暴だなあお前は。
2023年7月31日 09:46
母はお休み。7/13、私がお休みでひとりで面会に行った母から「お父さん、『もう一度…』って言うのよ。もう一度、もう一度、なにしたいの?あたしはもう一度、大学通りを犬、一匹でいいから連れてさ二人で散歩したいな。もう一度、お店に行きたい?家に帰りたい?ってお母さん色々訊いたんだけどお父さん、『もう一度…もう一度、』って。なんだか分からなかった。」と電話があった。私からも、訊いてみる。
2023年7月31日 08:46
7/10晴れ、暑い今日も目をぱっちり開けていた。「お父さんうちに居ないから、喋る相手居ないから、今までよく二人で喋ったなあと思ったわよ。うるさかったかしら〜?」母がいたずらっぽく父に話しかけた。「お手手拭こうかー?」父の手はいつも固く握りしめられている。「お父さんの右手。よく頑張ったね、たくさん作ったね。お疲れ様右手。」話しかけながら父の拳と腕を揉む。母が笑いながら繰り返す。「
2023年7月31日 04:19
晴れ時々雨。暑い。今日は母はお休み。「お父さーん。昨日ゆきおさん来てくれたでしょう?よかったねえ」蒸しタオルで頭、顔、手、足を拭いて揉む。「お父さーん、顔拭きますよー」ゴロゴロ「外は暑いよ〜」ゴロゴロ父はよく笑い、よく返事してくれた。何かを一生懸命言っていたが、聴き取れない。 「お父さん今日は沢山返事してくれてうれしいなー。でもゴロゴロがあるからよく聞き取れないんだー。痰吸引し
2023年7月31日 03:05
晴れ、暑い母と二人で病室に入ると看護師さんが痰吸引中だった。父は酸素をつけていた。「今朝ちょっと酸素濃度が下がってしまって、今念のため酸素をつけてます。なかなか痰吸引がうまくいかなかったりが続くと下がってしまうんですよね。村田さーんご家族見えましたよー。」痰吸引が終わった。「お父さん、よかったね、楽になったねー」「最近ね、いいですよね。『暑いですか?』『あつくない』とか『苦しい
2023年7月31日 02:14
曇りのち雨昨日から父は再び個室に移動となった。久しぶりにゆっくりのびのびした面会。父は目を開けていた。母と二人で父の頭と顔と手足を拭く。「どうした〜?大丈夫〜?ここにいたら安心ね〜危なくなったら助けてくれるからね〜」母が歌うように話しかけた。父の胸は少しゴロゴロしていた。「お母さん、お父さんが看板屋さんの時ずっとお父さんのお弁当作ってたのよ。少ない予算で工夫して。お父さん痩せて
2023年7月22日 02:43
晴れ、真夏のよう。今日は母はお休み。父の呼吸は今日もゴロゴロと鳴っていた。暖かいおしぼりでそっと父の顔を拭く。頬におしぼりを当てるとちょっと気持ちよさそうな顔になった、気がした。頭を拭くとちょっと顔を顰めた。耳を揉む。足がタオルケットの中で絡まっていたので直す。竹竿みたいな脚。足も暖かいおしぼりで拭いてマッサージした。首の付け根が凝っていた。揉む。少しゴロゴロが小さくなった気が
2023年7月21日 04:33
晴れ、暑い、暑い店が立て込んで時間ギリギリに病院に駆け込んだ。母はロビーで本を読んでいた。母の鞄にはいつも本と、新聞の切り抜きが入っている。スマホは持たない。今日の父は穏やかな顔をしていた。「金目鯛を上等な日本酒で煮たの。おいしく出来たから、きっとお父さんが好きな味だからともちゃん食べて。」母が保冷剤で包んだタッパーを差し出した。「お父さんには煮汁。舐められたらいいんだけど。」