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父・村田高詩のこと

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父、村田高詩について書いたものをまとめました。 父は59歳でパーキンソン病と診断されてから18年になります。介護度5。 特養に入所している為、3年間面会が叶いませんでした。やっ…
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#ゴローズ

Kさんのこと

Kさんのこと

2019.7.26 バーバラ村田facebook投稿より

今日は父の介護施設の引越しでした。
民間の有料老人ホームから、区内特養のショートステイへ。

父は59歳でパーキンソン病の診断を受けました。
そこから9年間、次第に休みがちになりながらも仕事を続けましたが、ある日店の前で動けなくなり、救急搬送され入院。
37年続けた店は閉店し、長野で療養生活を送ることになりました。
自宅での生活、老人保健

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朋あり遠方より来たる

朋あり遠方より来たる

2019.11.1 STUDIO T&Yブログより転載
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先日父が久しぶりに来店したのは、この方に会うためでした。
本池秀夫さん。
革人形師。
アトリエMOTO’S主宰。
鳥取県無形文化財保持者。

十数年ぶりの再会。
父と本池さんの出会いは四十数年前、父のゴローズ時代にまで遡る。
その頃ゴローズの工房は青山のマンションの一室で、本池さんは同じマンションの上階に住ん

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金のお守り

金のお守り

私が19の時に父からもらった純金のチャーム。

父がゴローさんに名入れしてもらったもの。

ゴローさんにとって私は小さい時のまま止まっていたらしく、いつも父は「赤ちゃん元気?」と訊かれていた。なんなら19歳の時も。

ゴローさんに初めて会った時点で3歳だったので既に赤ちゃんではなかったのに。

19の私はこの小さな金のチャームの価値などまるで分かってなかった。

インディアンジュエリー、シルバージ

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父のたからもの

父のたからもの

2019.3.1
創業時に店内に置いていた村田高詩手彫りのレザー看板。

現代美術活動を経てゴローズに入社した父は、レザー彫刻を主に担当していました。

独立する時にゴローさんから頂いた肩書が「goro’s brother」。

父は、言葉に言い尽くせないほど嬉しかったそうです。

「ゴローさんと2ショット写真とか撮らなかったの?」

と訊くと、

「恥ずかしくて…言い出せなかった」

と父。

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四十二年ぶんの指輪〜さいご

四十二年ぶんの指輪〜さいご

2019.2.16
父の指輪物語、最終章。
ゴローズのみとさんはとても親身に探してくださったけれど、やっぱり作りかけの指輪は見つからなかった。しばらくして父は「やっぱり由美子に指輪を買いたい」と言った。サプライズで贈りたかった父のために私はこっそり母の薬指のサイズを測り、父と夫と三人で原宿に向かった。夏だった。

四十年以上前の、父の古巣。

原宿に来るのは父にとって一体何年ぶりだったろう。

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四十二年ぶんの指輪〜その2

四十二年ぶんの指輪〜その2

2019.2.14のブログより

父がゴローさんに結婚指輪をお願いしてから一年ほど経ったある日。
突然ゴローさんから父に電話があった。
父は相手がゴローさんだとわかった瞬間にビッ!と背を伸ばし、「…はい!…はい、一人です!」
と答えた。
「こども、何人?」と訊かれたそうだ。
「じゃあイーグルを三羽飛ばそう」とゴローさんは言って、電話は切れた。
父は緊張しっ放しだった。
そして「ああびっくりした。急

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四十二年ぶんの指輪〜その1

四十二年ぶんの指輪〜その1

2012年に私がブログに書いた記事を紹介させてください。

父・村田高詩の師匠・ゴローさんに対する想いを少し、知って頂けたらと思います。
*ゴローさん:高橋吾郎さん。東京・原宿のシルバージュエリーブランドgoro’s 創始者であり、日本に於けるインディアンジュエリーブランドの先駆者でありカリスマ的存在。

【四十二年ぶんの指輪】

2012.1.19

唐突ですけど、父が母に結婚指輪をプレゼントす

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父記録 2023/7/5 【ゴローズとステーキとレディボーデンと天下市】

父記録 2023/7/5 【ゴローズとステーキとレディボーデンと天下市】

曇りのち雨
昨日から父は再び個室に移動となった。
久しぶりにゆっくりのびのびした面会。

父は目を開けていた。
母と二人で父の頭と顔と手足を拭く。
「どうした〜?大丈夫〜?ここにいたら安心ね〜危なくなったら助けてくれるからね〜」
母が歌うように話しかけた。
父の胸は少しゴロゴロしていた。

「お母さん、お父さんが看板屋さんの時ずっとお父さんのお弁当作ってたのよ。少ない予算で工夫して。お父さん痩せて

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父記録 2023/6/18

父記録 2023/6/18

晴れ、夏日。
父の日である。
母はお休みで、一人で面会に向かった。

今日も父は眠っている。
穏やかで、すっきりとした顔をしていた。

「お父さん、おはよう。お父さん、きたよ、おはよう」
何度か声をかけると父は微かに言葉にならない声を出した。
「お父さん、聴こえてる?」
と訊くと「ああ…うん…」と掠れた声で返事をしてくれた。
「今日は父の日だからね、お父さんにお礼を言おうと思って。」
カーテンを開

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父記録 6/12【ここ数日が山場です〜The second season 】

父記録 6/12【ここ数日が山場です〜The second season 】

雨。
昼前、犬にハーネスを着けていると電話が鳴った。父の病院からだ。
朝方から高熱が出て酸素濃度低下、肺炎も悪化しているという。
「何時ごろ来られますか」
「すぐ行きます。」
ハーネスを着けたままの二匹が玄関まで見送ってくれた。納得いかない顔をしていた。
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レントゲン写真に写った父の肺には再び白いもやがかかっていた。
「ここ数日は急な呼び出しがあるかもしれません。エクモ

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父記録 2023/4/28

父記録 2023/4/28

4/28
晴れ。あたたかい。
窓を開けると薔薇の香り。
ピエールドロンサールも咲き始めた。
からだが重い。
疲れが出てきているな、と思う。

母と病院で落ち合う。
「早く着いちゃってね、駅ビルでスニーカー三足も買っちゃった」
母はまだまだ歩く気だ。
担当の先生と面談。
肺炎は小康状態。
胃管からの栄養、薬、水分は現在問題なく送れているが、パーキンソンの影響で血圧が乱高下するのが少し心配。
胃ろうを

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