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絶望なんてできないんだよ。明日何が起こるかもわからないんだから。

週末の土曜日の早朝、今にも雨が落ちそうな空模様の中夫はゴルフに出かけて行きました。おかげで私の朝家事を早々に終えて、ここ数日格闘していた中村文則さんの「カード師」を読み終えることができました。

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占いを信じていない占い師であり、違法カジノのディーラーでもある僕に舞い込んだ、ある組織からの指令。それは冷酷な資産家の顧問占い師となることだった──。国内外から新作を待望される著者が描き切った、理不尽を超えるための強き光。新たな代表作、誕生!(Amazon内容紹介)

著者の前作「逃亡者」も500頁ありましたが、本作も負けず劣らずと450頁余の長編。先日東野圭吾氏のミステリー長編を読んだばかりですが、本作の著者中村文則氏の長編は、いつも深いテーマを問題提起された作品が多いので、グッと注視して読み進めました。

題名のとおり、主人公はイカサマを専門とするカードゲームのディーラーで、同時にタロットで人の未来を占う、占い師でもあります。
当然の如くポーカーを主体としたカードゲームの様子や、占いのタロットの意味が描かれる場面が多く出てきます。トランプは知っていても、ポーカーのゲーム内容、タロットに馴染みのない私にとって、その場面についていくのに実は悪戦苦闘しました。

そんな私でも違法賭博場でのポーカーゲームのやりとりは手に汗を握るような場面で、著者らしい巧みな心理描写が冴え渡っていました。

中盤に登場する「錬金術師の手記」「魔女狩りの記録」「ナチス政権下広場の短い記録」、さらに後半に描かれる阪神淡路大震災、オウム真理教事件、東日本大震災そして現在も解決しない新型コロナウイルスは、主人公と彼を顧問占い師に迎えた佐藤という資産家にとって大きな事件であり、自然災害を除き、人間にとって先行きが不透明で困難な時代に、象徴的で起こり得た事件だと著者は描いています。

そしてこれまで出会ってきた惨劇に私たちは、いつどこでそれが起こるかがわかる予知能力の無さに、著者はこう語らせます。

陥りやすい心理自分で何かを選び決めるのは、人間にとって本来苦痛なのだ。自分の考えを一時的に放棄し、他の誰かに決めてもらうことを望むから占いというものがある。p166

最後に今新型コロナウイルス問題の早期終息を祈っている私たちに

やはり絶望なんてできないんだよ。明日何が起こるかも、わからないんだから。p451

と著者は主人公がめくり占うタロット占いと同様、解釈次第で世の中を変えることができるというメッセージを送ってくれました。

いつにも増して、時代を追い、深層心理に迫り、今生きる人へのメッセージを発する著者の著作に拍手を送りたいと思います。

今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

本作は今日の「王様のブランチ」でも紹介、著者中村文則氏のリモートインタビューを受けていました。是非ご一読いただければと思います。

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