新川万詩郎

ほぼ毎日19時頃に創作の文章をアップしています。 365日後に自分が創作に何を見い出す…

新川万詩郎

ほぼ毎日19時頃に創作の文章をアップしています。 365日後に自分が創作に何を見い出すのかを確認するために

記事一覧

ピエロ

君が左で僕が右 いつの間にか決まった並びで歩くようになった 特に意味はないけれど ただ心地が良いからそうなっただけ 深夜の内容の無い電話も すっぴんのまま目の前で酔…

新川万詩郎
10時間前
1

笑顔でいて

君が涙を流しても 僕にはどうすることもできない 頬を伝って落ちてしまう前に すくい上げることも叶わない 時が経ち色あせてしまうペンキのように 大切にしたい記憶もやが…

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心を温める歌がある 悲しみに寄り添ってくれる歌がある 幸せを祝福してくれる歌がある 人生を支える歌がある 好きな人と結ばれた時にも 恋人と別れた時にも 誰かに背中を…

1

カササギの橋

春は桜を眺め暖かくなり始める季節を感じ 夏は人混みの隙間から手を繋ぎ花火を見上げた 秋は人懐っこい猫を撫で 冬はプレゼントし合った手袋をつけて雪を見た 君と歩いた…

2

ルーヴルの朝

早朝にホテルから出ると 空気は朝の清々しさを感じるが空はだいぶ明るい 目的がないただの散歩の行き先は とりあえずルーブル美術館の方へ向かうことにした 日本と比べる…

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大人になってわかるとこがある 毎日まだ起きている子供に顔を合わせるために 遅くない時間に帰るのが容易でないことが 親になってわかることがある 仕事の後に遊んでと駄…

8

花空夜行

この街のどこにこんなにも人がいたのか そう思うような人の波をすり抜けるように歩く 非日常の中に連れゆく君と 離れ離れにならないように ドーンドーンという破裂音が近…

彼女だった人

君の寝息が首をくすぐる 多少の寝苦しさも感じながら 起きてしまわないように動かないようにする 広い方がいいと奮発して買ったダブルベッドも 君がくっつくから左端ばかり…

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パーマ

僕はモブだ “なんとかを探せ”の本の中ではじの方に スペースを埋めるために書かれている風の人間だ 人は内面が重要だって言われて育ってきた だけど目から入る情報に人…

1

サカサマコトバ

辛い時 落ち込む時 ついていない時 不幸せな時 心と言葉を逆さまにする 辛くないし 気分上々 ついているし 幸せだ 胸の気持ちが口に出るなら 逆に口に出した言葉が胸の…

3

胸の中のシーソー

「カロリー消費したいから一駅歩くから送るよ」 君と少しでも長くいたい僕の願望を 値引きシールが重ね貼りされたような 安い誘い文句で誤魔化した それなりに都心に近い…

新川万詩郎
10日前
5

はじまりのファンファーレ

心を写すような空模様 長く続く雨の日々も 青に染まるパノラマも 二人を包む景色になるだろう 花束を持って向かい合い 目を合わし交わした約束は どこに刻まれるわけでも…

新川万詩郎
11日前
4

僕は猫

僕はどうやら猫という生物らしい 興味はないけどスコティッシュフォールドという 種類だそうで同じ仲間は耳が垂れているらしいけど 僕の耳はピンと立っている 僕の主は背…

新川万詩郎
12日前
3

甲羅

強張った表情で見つめ返す その奥に潜むかもしれない 悪意に飲み込まれないように 人の肌の色をした硬い甲羅が 棘を立ててあらがうのは 柔らかく脆い内側を 食い荒らされ…

新川万詩郎
13日前
2

『いたい』

下北沢の駅を一つ通り越して わざわざ池の上で降りて静かな道を 下北沢へ向かって歩く あの賑やかで明るくて若いエネルギーが 密集している光景が今の僕は見たくなかった …

新川万詩郎
2週間前
2

電気ポット

キッチンからパンが焼ける音がして 昔からある緑色のトースターが「ガシャン」と鳴く 貰い物で揃えたダイニングテーブルセットの いつものところへ座ると母が朝食を並べる …

新川万詩郎
2週間前
7
ピエロ

ピエロ

君が左で僕が右
いつの間にか決まった並びで歩くようになった
特に意味はないけれど
ただ心地が良いからそうなっただけ

深夜の内容の無い電話も
すっぴんのまま目の前で酔い潰れて寝ていても
友達以上恋人未満
それも心地が良いからそうなっただけ

そう君が言うからそうなっただけ

手を引いたり小突いたり触れることはできるのに
肝心な心の方はまるで幽霊のように君をすり抜ける
君の好意は僕のとは種類が違うの

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笑顔でいて

笑顔でいて

君が涙を流しても
僕にはどうすることもできない
頬を伝って落ちてしまう前に
すくい上げることも叶わない

時が経ち色あせてしまうペンキのように
大切にしたい記憶もやがて薄れてしまうだろう
そこにしか僕はもういないから
どんな声をしていたのかも
やがて思い出せなくなるかも知れない
体温も匂いも当たり前に存在していたのに
もう感じることはできない

でも悲しみも苦しみも同じようにいずれ薄れゆく
その存

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歌

心を温める歌がある
悲しみに寄り添ってくれる歌がある
幸せを祝福してくれる歌がある
人生を支える歌がある

好きな人と結ばれた時にも
恋人と別れた時にも
誰かに背中を押して欲しい時にも
苦境を乗り越えたい時にも
心を響かせる歌がある

だから僕は歌を作る側になった
誰かの心に寄り添いたくて
でも今の僕は
聞きたくないものに蓋をするために歌がある

自分が描いた夢の先は
その夢を曇らせていくばかりか

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カササギの橋

カササギの橋

春は桜を眺め暖かくなり始める季節を感じ
夏は人混みの隙間から手を繋ぎ花火を見上げた
秋は人懐っこい猫を撫で
冬はプレゼントし合った手袋をつけて雪を見た

君と歩いた遠くの海まで続く長いこの河川敷は
君と過ごした思い出が溢れている
移りゆく季節の変わりが二人の背景を彩っていた

川の向こう側に僕
渡ってこっち側に君が住んでいたから
天の川だねと僕が言うと
なら川にかかる橋はカササギの橋だねと君が言う

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ルーヴルの朝

ルーヴルの朝

早朝にホテルから出ると
空気は朝の清々しさを感じるが空はだいぶ明るい
目的がないただの散歩の行き先は
とりあえずルーブル美術館の方へ向かうことにした

日本と比べると頼りなさのある信号機や
歩きタバコで人目を気にせず吸い殻を
道端に捨てるパリの人を横目に進む

途中どうやら今日ストライキか何かがあるようで
ライフルを持った警備隊員が道を塞ぎ
ここは通れないと促される
もう少し先のノートルダム大聖堂

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父

大人になってわかるとこがある
毎日まだ起きている子供に顔を合わせるために
遅くない時間に帰るのが容易でないことが

親になってわかることがある
仕事の後に遊んでと駄田をこねる子供の
相手をするのに相当な体力が必要なことが

家庭を持つとわかることがある
経済的余裕を求めて頑張るほど
家族と一緒に過ごす時間が短くなることが

“父の日はお父さんに感謝を伝えましょう“
そう決められていたから
思春期に

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花空夜行

花空夜行

この街のどこにこんなにも人がいたのか
そう思うような人の波をすり抜けるように歩く
非日常の中に連れゆく君と
離れ離れにならないように

ドーンドーンという破裂音が近づくほど
人々が色めき立っていくのがわかる
歩行者天国となった道の両脇は
たこ焼きや焼きそばなんかの屋台が並び
その提灯の灯りが非日常感をさらに演出する

びっしりと人が並んでいる河原沿いに着き
たまたま空いた特等席とは言えないけれど

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彼女だった人

彼女だった人

君の寝息が首をくすぐる
多少の寝苦しさも感じながら
起きてしまわないように動かないようにする
広い方がいいと奮発して買ったダブルベッドも
君がくっつくから左端ばかりに寄っていたね

でも今はベットでは二人の間に空間がある

週末にはおしゃれなレストランに行って
閉店まで二人は色んな話をしていたね
何が食べたいと聞くと決まって焼肉というのが
笑っちゃうけど美味しくて
身震いするような仕草が好きだった

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パーマ

パーマ

僕はモブだ
“なんとかを探せ”の本の中ではじの方に
スペースを埋めるために書かれている風の人間だ

人は内面が重要だって言われて育ってきた
だけど目から入る情報に人は左右されるのも
いくらか生きてくると分かってくる

鏡を見れば見るほど典型的なこのモブ顔を
どうにか自らの手で変身させてあげたい
ああ、小さい頃は楽しかったな

そんな風に思いに老けている今
目の前には美容室で頭に色とりどりのカールを

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サカサマコトバ

サカサマコトバ

辛い時
落ち込む時
ついていない時
不幸せな時

心と言葉を逆さまにする
辛くないし 気分上々
ついているし 幸せだ

胸の気持ちが口に出るなら
逆に口に出した言葉が胸の気持ちにもなるはず
だからサカサマコトバには前向きになる力がある
夜の公園で僕に奢らせた
缶コーヒーを飲みながら君が自身満々に言う
君なりの自己敬拝らしい

疲れてもいないし
全部うまくいく
頭もしっかりしているし
明日も楽しみだ

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胸の中のシーソー

胸の中のシーソー

「カロリー消費したいから一駅歩くから送るよ」
君と少しでも長くいたい僕の願望を
値引きシールが重ね貼りされたような
安い誘い文句で誤魔化した

それなりに都心に近いこの辺りでは
となりの駅までは高架下を歩いて十数分ほどの長さ
僕に残されたタイムリミット

さっきまでの店が美味しかったとか
明日の仕事が憂鬱だとか
話したいこととは別のものが空を舞う

等間隔で設置されたLEDの街灯が
二人の影を伸ば

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はじまりのファンファーレ

はじまりのファンファーレ

心を写すような空模様
長く続く雨の日々も
青に染まるパノラマも
二人を包む景色になるだろう

花束を持って向かい合い
目を合わし交わした約束は
どこに刻まれるわけでもなく
二人で守る大切なもの

寄り添うように並んだ道が重なり
息を合わせて一緒に踏み出す
純白は花びらに包まれ
歌声が未来を照らす

喜びはあなたと共に 悲しみもあなたと共に
幸せとは小さな光の粒
一緒に集め心のカゴいっぱいになった時

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僕は猫

僕は猫

僕はどうやら猫という生物らしい
興味はないけどスコティッシュフォールドという
種類だそうで同じ仲間は耳が垂れているらしいけど
僕の耳はピンと立っている

僕の主は背の大きな男の人で
撫でてくれるしブラシで毛をとかしてくれるし
何よりこのピンと立った耳が好きと言ってくれる
大好きな人間だ

僕が生まれて間もない頃に主とその彼女に
連れられて今の家にきた

彼女も優しくしてくれるし遊んでくれるから

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甲羅

甲羅

強張った表情で見つめ返す
その奥に潜むかもしれない
悪意に飲み込まれないように

人の肌の色をした硬い甲羅が
棘を立ててあらがうのは
柔らかく脆い内側を
食い荒らされないための尊厳

全ての手足を失っても 這いつくばるように
残酷なエピローグが待っていようと
意識と実態が切り離されるて
抜け殻になるその時まで

無意識の群行
無責任な躊躇
無秩序の快楽
無慈悲な冒涜

思考を止めたら飲み込まれる

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『いたい』

『いたい』

下北沢の駅を一つ通り越して
わざわざ池の上で降りて静かな道を
下北沢へ向かって歩く
あの賑やかで明るくて若いエネルギーが
密集している光景が今の僕は見たくなかった
道端で立ち話しているグループも
カフェの中で見つめ合うカップルも
あの日の僕らが重なるのが嫌だったから

30人でいっぱいになる様な小さなライブハウスで
僕は目立たないように一番後ろの席に座る
客席と同じ高さの薄暗いステージには
アコー

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電気ポット

電気ポット

キッチンからパンが焼ける音がして
昔からある緑色のトースターが「ガシャン」と鳴く
貰い物で揃えたダイニングテーブルセットの
いつものところへ座ると母が朝食を並べる
何年も前の日常がそこにあった

コンロでは食後のコーヒー用にと
火にかけられたヤカンがシューシューと
熱そうな息を吹いていた

「最近の電気ポットは早くて安全で良いんだよ」
そう教えてみても母は「へー」というだけで
まるで興味がなさそう

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