缶ビール
人もまばらな終電を降り
駅を出てすぐのコンビニで
2本の缶ビールを買って帰る
徒歩8分のアパートまでの道のりは
もうプシュッと開けてしまいたい衝動を
抑えてくれる
真っ暗な部屋は僕を迎えてくれる様子もなく
明かりをつけてもその空気は変わらない
帰り道の時間分ぬるくなった気がする
缶ビールを冷蔵庫にしまい
失った冷たさを取り戻そうとする
服を脱いでもまだ取り戻せない
シャワーを浴びてもまだ取り戻せない
髪を乾かしてもまだ取り戻せない
歯を磨いてもまだ取り戻せない
明日も早いから布団に入って
取り戻すのを待とう
目が覚めると冷蔵庫の中には
冷たさを取り戻していたビールが
何本も何本もあった
その日僕は仕事を辞めた
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