大須知院

音楽好きな月給鳥です。クラシック、ロック、ジャズ、民族音楽など。クラシックは古楽から現…

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音楽好きな月給鳥です。クラシック、ロック、ジャズ、民族音楽など。クラシックは古楽から現代音楽まで幅広く。聖地巡礼するくらい好きなのはバッハとブルックナー。 エッセイ集 https://bachundbruckner.hatenablog.com/archive

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仕事や人間関係に疲れたときに聞きたい音楽五選-バロックから現代まで

 ストレスだらけの毎日でも、音楽はひとときの安らぎを与えてくれる。  ため息が増えてきたときに聞きたい音楽を五つご紹介。 A.ペルト:ヌンク・ディミティス Nunc dimittis  無伴奏混声合唱による祈りの音楽であり、究極のヒーリングミュージックでもある。 リゲティ:ピアノ練習曲第1巻 より 第5番 Arc-en-ciel(虹)  単なるエチュードを超えた、癒しのピアノ音楽。  このほか第3巻の第15番(White on White)や第16番(Pour Iri

    • ブルックナーの交響曲聞き方ガイド(入門編)

       ブルックナーの交響曲は、クセが強い。  曲の長さ、音楽の展開方法、オーケストレーション、いずれもロマン派屈指のクセの強さである。  一方で、作曲者の生前から今日に至るまで、熱狂的な信奉者やマニアックな愛好家がいるのもまた事実。  彼らはただの変わり者なのだろうか。あるいは、ブルックナーの交響曲にはどんな秘密が隠されているのだろうか。  今回は、ギュンター・ヴァント指揮、ハンブルク北ドイツ放送交響楽団による往年の名演奏をめぐりながら、ブルックナーの交響曲の魅力に迫っていきた

      • シャコンヌとフーガ、メヌエット-暗明暗のBACH音楽

         バッハの音楽には、暗-明-暗の三部構成を明確に聞き取れるものがいくつもある。  短調の主題(暗)で始まり、長調の中間部(明)を経て、短調主題の再現(暗)で終わる三部構成は、シンプルながら効果抜群である。  今回は、そのなかでも中間部が圧倒的な存在感を放つ三つの名曲をご紹介。 シャコンヌ 無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番より、シャコンヌ。    言わずと知れたシャコンヌ。  ここに聞くのは21世紀のシャコンヌ演奏最前線である。  変奏曲の一種としてのシャコン

        • 17世紀オランダ絵画展 https://www.osaka-art-museum.jp/sp_evt/dresden-vermeer2022

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        • ブルックナー関連まとめ
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          ブルックナーの知られざる名曲三選-小品から見えてくるブルックナーの音楽像

           ブルックナーと言えば交響曲だが、魅力的な小品から彼の音楽の全体像を再構成することも可能である。  今回は三つの小さな名曲を通じて、ブルックナーの音楽作品全般に通ずる普遍的な特徴について見ていきたい。 1.リーベラ・メ Libera me [WAB22](1854年) 師である聖フローリアン修道院長の告別式のために書かれた作品である。  作曲当時、ブルックナーは三十歳。  どことなくモーツァルトのレクイエムの一節を思わせるような曲調であり、あるいはモーツァルトに少なからず影

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          トロイトマン・オルガンで聞くバッハのオルガンコラール

           ベルリンからハノーファー経由、合計3時間の鉄道の旅を経て、中世以来の鉱業都市であるゴスラーに到着する。  ゴスラー近郊のグラウホーフには聖ゲオルク修道院がひっそりとたたずみ、我々を聖なる時間へと導く。  修道院教会のオルガンはバッハ存命中の1737年にクリストフ=トロイトマンによって製作されたもので、幸いにも、現在に至るまで当時の姿をほぼそのままにとどめている。  ジルバーマン系のオルガンに典型的な、波打つようなファサードが実に美しいが、なにより、オルガンのさまざまの音

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          無敵のモーツァルトとクラシック音楽の愉しみ

           サウンドの直感的な快、これこそ音楽における唯一の真実あるいは「第一定理」だろう。  クラシックはもちろん、ジャズやロック、ブルース、ボサノヴァに至るまで、みな音楽はひとしく楽しいものだ。  その点で言えば、私を音楽の原点に立ち返らせてくれるのは、いつも決まってモーツァルトのオーケストラ曲である。  ハフナー交響曲は、ほとばしり出る音楽の愉悦である。  鮮度抜群、キレッキレの第一楽章は、まさに序曲にふさわしい。  駆け巡る音階はエネルギッシュでハツラツ、晴れやかにして爽快

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          カール・ズスケの芸術-私が敬愛するヴァイオリン奏者について

           カール・ズスケは旧東ドイツを代表するヴァイオリン奏者である。  参考までに、ドイツ・シャルプラッテン・リマスタリング・プロジェクトのブックレットによれば次の通り。  さて、バッハの有名なガヴォットは、彼の魅力をありのままに伝えてくれる。  テンポ、フレージング、アーティキュレーション、どれをとってもまさにお手本のような演奏だが、退屈さは皆無、むしろ聞けば聞くほどに彼の音楽の揺るぎのなさ、実直さに深く魅了される。  それでいて彼の音楽は実に気さくで、素朴ですらあり、妙な

          カール・ズスケの芸術-私が敬愛するヴァイオリン奏者について

          ブルックナーの交響曲聞き方ガイド(中級編)

           ブルックナーの交響曲は、とてつもなく長い。  演奏会で聞くにせよ、録音で聞くにせよ、集中力を保ち続けるのは至難の業である。長大な交響曲を最初から最後まで聞き通すコツはないのだろうか?    ブルックナーの交響曲を一曲丸々聞き通すには、各楽章ごとに、曲の構成(つくり)を押さえた聞き方が必要になってくる。  逆に、曲の構成さえ理解すれば、ブルックナーの交響曲は非常に明晰で聞きやすい。    中級編の今回は、交響曲全般に共通する構成の特徴を概観した上で、《交響曲第8番》(1887

          ブルックナーの交響曲聞き方ガイド(中級編)

          ブルックナーの合唱曲の魅力-ブルックナーのAve Maria

           ブルックナーは、今でこそ交響曲作曲家として知られているが、生前は多かれ少なかれ「交響曲の制作に(大変失礼ながら無謀にも)挑戦するオルガニストないし教会音楽家」として認知されていたに過ぎない。  晩年に至ってようやく一部の交響曲作品が(友人や弟子たちの心尽くしの、あるいは行き過ぎた支援介入改ざんによって)聴衆に受け入れられていったが、ブルックナーの(オリジナルの)交響曲の全体像は、作曲者自身の死を迎えてなお依然として不明瞭なままであった。  本人の死から三十年ほど経過した1

          ブルックナーの合唱曲の魅力-ブルックナーのAve Maria

          ラジオとの再会と最近よく聞くラジオについて

           郊外に引っ越して、初めてクルマを買い、そして久方ぶりにラジオを聞くようになった。クルマがもたらしたのは、ラジオとの再会だった。  小学時代はNHKFMの《青春アドベンチャー》を聞いては想像力をたくましくさせたものだ。  中学高校時代は同じくNHKFMの早朝の古楽番組が目覚ましだった。  大学時代は、それこそ金はないが暇を持て余す幸福な日々だった。四六時中、おしゃべり中心のネットラジオを聞いては孤独を慰めていた。  生まれてこの方、自分はずっと郊外に住んでいるという根拠の

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          バッハおすすめインスト九選-朝に聞きたい珠玉の器楽曲集

           休日の朝、一杯のコーヒー、バッハとともに爽やかな一日の始まり。  聞き方は人それぞれ。全集中で聞いても聞かなくてもバッハは逃げない。彼の音楽はいつも私たちとともにある。  今回は暮らしを軽やかに彩るバッハの名曲を九つ紹介する。 1.ブランデンブルク協奏曲第2番より第1楽章 トランペット、オーボエ、リコーダー、ソロ・ヴァイオリンの四人による華麗なる競演。  これぞまさしく目覚めの一曲。  トランペットの輝かしい響きで清々しい朝を迎えられること間違いなし。 2.無伴奏ヴァイ

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          BACH平均律クラヴィーア曲集第1巻という愛-私的重要作五選

           バッハの《平均律クラヴィーア曲集第1巻》は、彼の音楽世界の「ミクロコスモス」である。 前奏曲とフーガという対比的な取り合わせ作品が全部で24セット。  ハ長調から始まるこの曲集は「ドレミファソラシ」にまつわる全24の調を順行する「宇宙旅行」である。  今回は本曲集の要となる作品五つを独自の視点で厳選。  紹介にあたっては、あえて前奏曲とフーガをそれぞれに切り分ける等、可能な限りコンパクトとなるよう心がけた。 1.嬰ハ長調 フーガ 小川的遁走曲-陽。  これぞまさしくバッ

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          西洋音楽史おすすめ参考書三選-点と線と面

           クラシック音楽に興味を持ち、入門本や名盤紹介本、作曲家解説本などを一通り読んだあと、西洋音楽史への理解をもう少し深めたい人向けの参考書を紹介する。  紹介にあたっては、今後のクラシック音楽人生をより豊かにするための基礎的教養を深めることをねらいとし、具体的には以下を基本的な選定基準とした。 ・入手しやすく、平易でわかりやすい記述であること ・西洋音楽史の全般にわたって、バランスよく述べられていること ・近年の音楽史研究が反映されていること 1.すぐわかる! 4コマ西洋音

          西洋音楽史おすすめ参考書三選-点と線と面

          ヨハネ福音書におけるさまざまな比喩表現が非常におもしろい。比喩だけ取り出して見ていくたのしみ。

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          オルガンコラール史におけるバッハ-自由奔放な最終相続人

           オルガンコラールというジャンルにおいて、バッハはどのように位置付けられるのか。  同一コラール旋律に対する複数人の作品の聞き比べを通じて明らかになるのは、このジャンルの「最終相続人」としてのバッハである。 1.オルガンコラール聞き比べ 今回はお題(コラール)はこちら。  マルティン・ルターが作詞したコラール《Komm, heiliger Geist, Herre Gott》(来たれ、精霊、主なる神よ)である。ルター本人が手がけたということもあって多くの音楽家がこのコラー

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