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バッハおすすめインスト九選-朝に聞きたい珠玉の器楽曲集

 休日の朝、一杯のコーヒー、バッハとともに爽やかな一日の始まり。
 聞き方は人それぞれ。全集中で聞いても聞かなくてもバッハは逃げない。彼の音楽はいつも私たちとともにある。
 今回は暮らしを軽やかに彩るバッハの名曲を九つ紹介する。

1.ブランデンブルク協奏曲第2番より第1楽章

 トランペット、オーボエ、リコーダー、ソロ・ヴァイオリンの四人による華麗なる競演。
 これぞまさしく目覚めの一曲。
 トランペットの輝かしい響きで清々しい朝を迎えられること間違いなし。

2.無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第3番よりプレリュード

 孤高のヴァイオリンは、伴奏なし。

 様々な表情を見せながら爽やかに駆け抜ける三分半。
 十六分音符の森の中に織り込まれた旋律(メロディライン&ベースライン)は少なくとも三つ以上、つまりは一人三役
 
 ヴァイオリンという楽器のポテンシャルに真正面から向き合った、バッハの傑作のひとつ。

3.ブランデンブルク協奏曲第5番より第1楽章

 フルート、ソロ・ヴァイオリン、キーボード(チェンバロ)の三人による競演、と言いつつも本当はチェンバロ奏者のための作品。

 フルートとヴァイオリンによる清涼感あふれるデュオと、その背後で息をひそめるチェンバロ。
 しかして開始五分、待ちくたびれたチェンバロはついに後景から前景へ。徐々にボルテージを上げていくチェンバロとそれに呼応するかのように道を譲りはじめるその他のメンバー。スポットライトはチェンバロへ。
 こうして華麗に荒ぶるチェンバロ、まるで即興、独壇場。

 楽譜通りに弾いてこれほどの疑似即興性である。
 バッハの記譜センス、恐るべし。いわんや実演をや。

4.チェンバロ協奏曲第2番より第3楽章

 とにかく明るいチェンバロ。
 とにかく楽しいアンサンブル。

 晴れの日にも、雨の日にも、暴風雨でも、人身事故でも、バッハの音楽は止まらない。
 暗い顔をしていたって始まらない。
 軽やかに涼やかに、駆け抜ける音楽の喜びに、ただその身をゆだねるがよい。
 毎日の通学、通勤のお供にぜひ。

5.ヴァイオリンとチェンバロのためのソナタ第3番より第4楽章

 まさにアレグロ(速く)の曲。

 一気呵成に駆け抜けていくヴァイオリンとチェンバロ。
 一陣の風、颯爽とゆくバッハ。


 アップテンポでノリノリの音楽は、正義。

6.チェンバロとヴァイオリンのためのソナタ第2番より第2楽章

 濃縮され、磨き上げられたアレグロ。

 快活で生き生きとした主題に導かれ、曲は後半に向けて徐々に熱を帯びていく。
 後半にさしかかると、ヴァイオリンはアルペジオの翼を広げ、チェンバロは上行音型で空高く舞い上がる。
 その頂点、圧倒的な高みからのゲネラルパウゼ(総休止)、そして冒頭主題の再現。
 
 わずか三分間で圧倒的な構成と演奏効果を実現した稀有な作品である。

7.ブランデンブルク協奏曲第4番より第1楽章

 ソロ・ヴァイオリンと二本のリコーダーを軸とした魅惑のアンサンブル。
 リコーダーの清らかな音色が魅力的なのはもちろんのこと、ヴァイオリン奏者冥利に尽きる一曲でもある。

 ソロ・ヴァイオリンは最低音から最高音まで縦横無尽に駆け巡り、ときには三つの弦にまたがる幅広跳躍のメロディを奏で、またあるときには一人で三和音をかき鳴らす。
 簡単そうに聞こえるが、このソロ・ヴァイオリンのパートは超絶技巧のオンパレードである。

 ちなみに、最終楽章である第3楽章は「これぞドイツバロック!」の音楽である。興味のある方はぜひ。もちろんヴァイオリンもリコーダーも大活躍。

8.ヴァイオリン協奏曲第2番より第3楽章

 お手本のような最終楽章。
 楽しい音楽の時間もそろそろおしまい。
 
 名残惜しくも、爽やかに。
 後味よろしく、余韻に浸りつつ。

9.チェンバロ協奏曲第4番より第3楽章(オーボエ版)

 原曲はオーボエ協奏曲とも言われているだけあって、実に歌ごころに溢れた逸品。
 エンディングにふさわしい曲調と、なによりオーボエの歌がたまらない。
 
 ベルリンフィルのオーボエといえばこの人。
 バッハをこよなく愛する氏による演奏でお別れを。

10.まとめ

 弦楽器、木管楽器、金管楽器そして鍵盤楽器、そのいずれにも精通するバッハは、職業音楽家(作曲家)として常にオールラウンダーであった。
 今回紹介した九曲は「バッハへのいざない」であり、また同時に「ドイツバロック音楽へのいざない」でもある。

 バッハは楽しい。バロックは爽快。
 それは僕の原点であり、また未知なる未来の音楽ファンの原点でもありうると信じてやまない。