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バッハ関連まとめ

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バッハ関連の記事についてまとめています。
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記事一覧

BACH音遊び-対位法職人の休日-インヴェンションから平均律を超えて

 バッハのハ長調は、お手本のお手本である。  ド・レ・ミ・ファ・ソという最も基本的なテーマで、作曲家として、どこまでのことがやれるか。  ピアノで必ず通る道、しかしてこれこそバッハのハ長調の原点。  対位法の基本は、二声である。  では、これを三声に拡張するとどうなるか。  こうしていよいよ本格的なフーガの扉が開かれる。  ド・レ・ミ・ファ・ソという何のひねりもないテーマで、四声フーガが書けてしまう。(そして、それをハ長調からロ短調まで、全24の各調性に拡大することさえ

BACHオルガンコラールのモダニズム-オルゲルビュヒラインよりBWV641

 40秒ほどの、なんということもないコラールである。  それがバッハの手にかかると、こうなる。  原曲とは似ても似つかぬスーパーウルトラアレンジ。  話はそれだけではない。  300年前のドイツ・プロテスタント文化圏に特有の音楽は、そのまま現代人に直接響く。  コラール旋律はソプラノ、以下アルトテノールバスはほぼ伴奏に徹する、極めて古典派ロマン派的な音楽。だからそのままピアノで弾いてもなんの違和感もない。  これをジャズトリオでやっても、クラシックオーケストラでやって

シャコンヌとフーガ、メヌエット-暗明暗のBACH音楽

 バッハの音楽には、暗-明-暗の三部構成を明確に聞き取れるものがいくつもある。  短調の主題(暗)で始まり、長調の中間部(明)を経て、短調主題の再現(暗)で終わる三部構成は、シンプルながら効果抜群である。  今回は、そのなかでも中間部が圧倒的な存在感を放つ三つの名曲をご紹介。 シャコンヌ 無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番より、シャコンヌ。    言わずと知れたシャコンヌ。  ここに聞くのは21世紀のシャコンヌ演奏最前線である。  変奏曲の一種としてのシャコン

トロイトマン・オルガンで聞くバッハのオルガンコラール

 ベルリンからハノーファー経由、合計3時間の鉄道の旅を経て、中世以来の鉱業都市であるゴスラーに到着する。  ゴスラー近郊のグラウホーフには聖ゲオルク修道院がひっそりとたたずみ、我々を聖なる時間へと導く。  修道院教会のオルガンはバッハ存命中の1737年にクリストフ=トロイトマンによって製作されたもので、幸いにも、現在に至るまで当時の姿をほぼそのままにとどめている。  ジルバーマン系のオルガンに典型的な、波打つようなファサードが実に美しいが、なにより、オルガンのさまざまの音

なぜバッハとブルックナーは特別なのか-私のクラシック音楽遍歴

 聖地巡礼するほど好きな作曲家というのは、そうそういるものではない。ちなみに私にとってのそれは、バッハとブルックナーである。  バッハ(Johann Sebastian Bach, 1685-1750)は言わずと知れたドイツ東部で活躍したバロック時代の音楽家であり、ブルックナー(Joseph Anton Bruckner, 1824-1896)はウィーンで活躍した後期ロマン派時代の音楽家である。 1.音楽との出会いと別れ 今でこそガチガチのクラシック音楽ファン(それもドイツ

BACH平均律クラヴィーア曲集第1巻という愛-私的重要作五選

 バッハの《平均律クラヴィーア曲集第1巻》は、彼の音楽世界の「ミクロコスモス」である。 前奏曲とフーガという対比的な取り合わせ作品が全部で24セット。  ハ長調から始まるこの曲集は「ドレミファソラシ」にまつわる全24の調を順行する「宇宙旅行」である。  今回は本曲集の要となる作品五つを独自の視点で厳選。  紹介にあたっては、あえて前奏曲とフーガをそれぞれに切り分ける等、可能な限りコンパクトとなるよう心がけた。 1.嬰ハ長調 フーガ 小川的遁走曲-陽。  これぞまさしくバッ

バッハおすすめインスト九選-朝に聞きたい珠玉の器楽曲集

 休日の朝、一杯のコーヒー、バッハとともに爽やかな一日の始まり。  聞き方は人それぞれ。全集中で聞いても聞かなくてもバッハは逃げない。彼の音楽はいつも私たちとともにある。  今回は暮らしを軽やかに彩るバッハの名曲を九つ紹介する。 1.ブランデンブルク協奏曲第2番より第1楽章 トランペット、オーボエ、リコーダー、ソロ・ヴァイオリンの四人による華麗なる競演。  これぞまさしく目覚めの一曲。  トランペットの輝かしい響きで清々しい朝を迎えられること間違いなし。 2.無伴奏ヴァイ

G線上のアリア論-BACH音楽の普遍性(前編)パレストリーナからバッハへ

 バッハの代表作である『G線上のアリア』はクラシックというジャンルを超えて、今なお多くの音楽家にインスピレーションを与え続けている。  『G線上のアリア』の魅力はどこにあるのか? 楽曲分析や歴史的背景を踏まえながら、近年の動向や21世紀の最新アレンジも含めて、この曲をできるだけ多角的に見ていきたい。  前編となる今回は《パレストリーナからバッハへ》と題して、主に分析や歴史をテーマに『G線上のアリア』の魅力を再検討する。 1.メロディ×4の旋律美 『G線上のアリア』の魅力は

G線上のアリア論-BACH音楽の普遍性(後編)アレンジの魔力と逸脱

 バッハの超有名曲をできる限り多角的に見ていく本稿について、前回は《パレストリーナからバッハへ》と題して、メロディや楽節構造の分析を通じて曲の魅力(旋律美と構造美)を再検討した。また、中世ルネサンスバロックに共通する作曲原理(旋律の重層化)を俯瞰し、バッハが過去の作曲家(特にパレストリーナ)から多くを学んでいたことについて指摘した。  前編はこちら。  後編となる今回は《アレンジの魔力と逸脱》と題して、『G線上のアリア』の様々な演奏を紹介する。  先入観を持たず、まずは聞

G線上のアリア論-BACH音楽の普遍性(番外編)和楽器によるバッハ演奏

 和楽器(日本の伝統楽器)によるバッハ演奏を聞いたとき、以下の記事の構想を得た。  今回は番外編と称して和楽器によるバッハ演奏をいくつか紹介したい。 1.無伴奏チェロ組曲第1番プレリュード 琴によるバッハの無伴奏作品の演奏。  琴独特の音のゆらぎも含め、低音から高音まで楽器の音色をじっくりと深く味わうことのできるこの曲は、もはや琴のための作品と言っても過言ではない。 2.無伴奏フルートのためのパルティータより《サラバンド》 続いては尺八によるバッハの無伴奏作品の演奏であ

オルガンコラール史におけるバッハ-自由奔放な最終相続人

 オルガンコラールというジャンルにおいて、バッハはどのように位置付けられるのか。  同一コラール旋律に対する複数人の作品の聞き比べを通じて明らかになるのは、このジャンルの「最終相続人」としてのバッハである。 1.オルガンコラール聞き比べ 今回はお題(コラール)はこちら。  マルティン・ルターが作詞したコラール《Komm, heiliger Geist, Herre Gott》(来たれ、精霊、主なる神よ)である。ルター本人が手がけたということもあって多くの音楽家がこのコラー

BACH音楽の精髄としてのコラール-ライプニッツとオルガニスト・バッハ

 16世紀から17世紀にかけて、ドイツ・ルター派系の職業音楽家の重要な仕事は「コラール系楽曲の新作アレンジの提供」であった。バッハにおいても事情は異ならない。むしろ彼の場合、就職先の都合上、仕事のほとんどがコラール系楽曲の新作アレンジであったとも言える。 1.コラールとは? ドイツのルター派におけるコラールは、教会に集う会衆のための教会歌である。歌詞は母語であるドイツ語で書かれてあり、旋律は平易で歌いやすい。  当時のカトリックは、そうではなかった。讃美歌(ラテン語)は特権