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ひねくれ偏食家の、読書挑戦録

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「流行っているものは読まない」と意地をはってきた、ひねくれ者(偏食もち)が、本を読み、世界を広げて行く過程の記録もろもろ。 他にも、読書や本に関するエッセイ・コラムを集めています
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2024年2月の記事一覧

内田康夫『薔薇の殺人』読後録

内田康夫『薔薇の殺人』を読了。
宝塚がからむ話、というあらすじだけは読んで記憶していたが、実際に読んだのは今回が初めて。
犯人の動機は何となく予測していたが、最後の最後になって、真相が少しずれたところにあったとわかる。(この「ずらし」が上手い)
犯人の結末も含め、ほろ苦い読後感が残る。(被害者自身には何の落ち度もないから尚更)
私はやはりガチガチのロジックや、トリックの妙よりも、ドラマ性のある話が

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内田康夫『華の下にて』~降り積もった花弁の下にあるもの

内田康夫『華の下にて』~降り積もった花弁の下にあるもの

ミステリーを意識的に読もう、と思い立って二冊目は再び内田康夫。
華道がテーマと聞いて、なんとなく心惹かれて手に取ったこの『華の下にて』は、氏にとっては百冊目になる作品だそうな。

京都を舞台に、華道の家元の家系にからむある「秘密」をめぐっておきる殺人事件がテーマ。
伝統と革新、男と女、老人と若者。様々な対立がここにからむ。

読み通して見た時の印象は、たとえるなら幾重にも分厚く降り積もった花弁の山

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型の話~内田康夫『終幕のない殺人』を読みながら

サスペンスのシナリオを書くため、ミステリー小説に意識的に触れるようにしたいな、と思っていたので、ここ数日ベッドの中で内田康夫の『終幕のない殺人』の文庫本を読んでいた。
赤川次郎といい、作家さんの初期は「本格」を意識した固めの作品が多い気がする。
この『終幕のない殺人』は、「本格」の中でも古典的作品『そして誰もいなくなった』を下敷きにしているのがよくわかる。

本格ミステリーは、トリックやストーリー

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