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【旅エッセイ71】足元の紅葉

悩んでいたり憂鬱だったり、足元ばかり見て歩く日がある。「遠くへ行きたいな」と、そんな時は旅に出ることを想う。

何をしたって、憂鬱な日は憂鬱。考えるのは遠くの青い空。ここにはない青い海。目の前の景色は灰色に見えて、顔を上げる気も起こらない。

ため息を吐けば幸せが逃げると言われ、弱音を吐けば後ろ向きと言われ、前向きになれ、上を向け、うつむくな、良かったことを数えろ。とにかく明るく元気に進めと、生き辛い世の中からはそんな声ばかり聞こえて来る。

秋の空のように麗らかな心で生きたいと願ってる。でも、前を向けない日だってある。ダメな時はダメなんだ。遠くへ行きたい。

心はわだかまり、悩んだり苦しんだり、疲れ果ててもう動けないんじゃないかと思う。遠くへ行きたい。どこか遠くへ。

歩き疲れて立ち止まり、じっと足元を見る。
何もかもが憂鬱に思える、そんな時にでもふと気がつくことがある。

散った紅葉が、足元で美しく輝いていた。



また新しい山に登ります。