自分で自分を幸せに生かす覚悟【佐々涼子「エンド・オブ・ライフ」】
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自分で自分を幸せに生かす覚悟【佐々涼子「エンド・オブ・ライフ」】

小河アヤナ@インタビューライター

「なんで生きるんだろう」

数年前、仕事を終えて家へ帰りながら考えた。

しばらく考えてから出た私なりの結論はこうだ。

「生まれたから生きるのか」

この本は、著者の佐々涼子さんが京都で訪問治療を行う渡辺西賀茂診療所を通して出会った人たちを中心に書いた、ノンフィクションだ。

佐々涼子さんとは……

ノンフィクション作家。1968年生まれ。神奈川県出身。早稲田大学法学部卒。日本語教師を経てフリーライターに。2012年、『エンジェルフライト 国際霊柩送還士』(集英社)で第10回開高健ノンフィクション賞を受賞。
2014年に上梓した『紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている 再生・日本製紙石巻工場』(早川書房)は、紀伊國屋書店キノベス!第1位、ダ・ヴィンチBOOK OF THE YEAR第1位、新風賞特別賞など数々の栄誉に輝いた。
2020年、『エンド・オブ・ライフ』(集英社インターナショナル)で第3回Yahoo!ニュース|本屋大賞 2020年 ノンフィクション本大賞を受賞。

題名の「エンド・オブ・ライフ」という言葉は初めて聞いた。

佐々さんが書かれているように人生の質を表す「クオリティ・オブ・ライフ」はよく耳にする。

もちろん日々生きる質を高めることは大切だ。

しかし本書を読んで、自分の「エンド・オブ・ライフ」について考えることも必要だと感じた。

ついつい死は遠いことだと当然のように思ってしまうが、そんなこと誰にもわからない。

みんな生まれたら死ぬのだから。


スピリチュアル・ペイン


自分が経験することもできなくて、他の人の経験談も聞くこともできない、死。

だから、死って怖いんだと思う。

日本で生まれ育った私でも、漠然とした死後の世界のイメージはある。

「天国は善、地獄は悪」のような感じだ。

小学生のとき授業で見た「蜘蛛の糸」の映像が怖かったのをよく覚えている。

でもそれらは生きている人が想像して創り上げた世界だから、本当にあるのかは誰もわからない。

*  *  *

「スピリチュアル・ペイン」=「魂の痛み」という言葉が作中に出てくる。

“自分の人生の意味を考え、存在が無になることを想像して絶望する苦しみ”のことだ。

病気による肉体的な痛みも怖い。

だけどそれとは違って、魂の痛みは薬で治せない。

「この人生でよかったのだろうか」

「自分の存在は忘れられてしまうのだろうか」

つながることで生きてきたから、存在がなくなってつながれなくことに恐れてしまうのかもしれない。

目に見えないこと、経験できないことはわからないから怖い。

一緒にいる人たちの当たり前の日常は続いていくのに、独りぼっちで未知の世界に飛び込んでいく。

一人で死ぬって怖いんだろうな、きっと。


自分を自分で幸せに生かす覚悟


診療所で働いていた訪問看護師の森山さんが言っていた言葉。

生きたようにしか、最期は迎えられないからね。

病気になった途端、考え方などが変化するなんてことはないんだ。

自分なりに考え、自分なりの選択をしてきた結晶が自分だから。


私がもし突然死と向き合うことになって絶望したとしても、「これまでの自分も最高だったよな!」と一瞬でも思えるようになりたい。

どんなことを全力でやって生きても、後悔は必ずあるんだろうと思う。

でも自分の心に従ったことをやっていれば、それが支えになってくれるはずだ。

もしかしたらこの記事だって支えの一つになるかもしれない。


私は自分の意思で生きた軌跡をたくさん貯めたい。

だれかの口コミとかに頼らずに、五感を最大限に使って自分の命をたくさん感じたい。

それはきっと、自分の意思で自分を幸せに生かす覚悟を決めることからはじまるんじゃないか。

生きることをだれかに委ねるのではなく、自分の人生に責任をもつこと。

*  *  *

がん患者となった森山さんはこうも言う。

僕には、人に腹を立てたり、何かを悲しんだりする時間はないんですよ

そうだ。生まれたときから死にだれもが向かっている。

時間は無限ではない。

当たり前だと思っていることは、当たり前じゃない。


天国に単身赴任


亡くなった患者さんの奥さんが、旦那さんは「天国に単身赴任に行った」と言っていた。

「遠いところに行くけれどつながっている、そしてまた会える」というような優しい感じがする言葉だ。


森山さんやある患者さんが亡くなったときは、拍手が起こったと書かれていた。

遺されるのは寂しいけれど、天国へ単身赴任に旅立つ人を拍手で見送る。

それは、その人が生きたことを尊重することなんだろうな、と思った。

*  *  *

診療所の渡辺院長は自身の役割についてこう語る。

僕らは、患者さんが主人公の劇の観客ではなく、一緒に舞台に上がりたいんですわ。みんなでにぎやかで明るいお芝居をするんです

死に向かう人はその事実だけでも、暗く悲しく不安になるはず。

だからこそ「死は悲しいもの」だけにならないように周りの人たちが一緒になって関わっていくことも、死に向かう人を尊重することだ。


死から学ぶこと


佐々さんが多くの患者さんと触れ合ったことで、学んだことを書かれている。

好きなように生きた人に教えられることもあるのだ。もっと堂々と好きなように生きてもいいのかもしれない。どのみち、誰にも迷惑をかけずに生きることなど不可能なのだから
亡くなりゆく人は、遺される人の人生に影響を与える。彼らは、我々の人生が有限であることを教え、どう生きるべきなのかを考えさせてくれる

一人だけで生きていたら「死」も一人だけのものだ。

でもそうじゃない。

必ずだれもがだれかと関わって、つながっている。

つながることで命は生まれるし、生かされていくし、なくなっていく。

だから「お互い様」で敬称もつくんだろう。

共に生きている人を尊重する。

その意識を持つだけでも、世界の見え方は変わるのかもしれない。

気を抜いている場合ではない。貪欲にしたいことをしなければ。迷いながらでも、自分の足の向く方へと一歩を踏み出さねば。大切な人を大切に扱い、他人の大きな声で自分の内なる声がかき消されそうな時は、立ち止まって耳を澄まさなければ。そうやって最後の瞬間まで、誠実に生きていこうとすること。それが終末期を過ごす人たちが教えてくれた理想の「生き方」だ

私も気を抜いていられない。

今、心はなんて言っている?

「お腹がへったからなんか食べたいな」

そっか、まずはなにか食べようか。


「当たり前」に感謝しながら。


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小河アヤナ@インタビューライター
駆け出しインタビューライター/#ぶんしょう舎 にて記事掲載/#SHElikes/元小学校教員/教育/静岡出身・東京在住/趣味は旅行、読書/沖縄、辛いもの、散歩、料理が大好き