マガジンのカバー画像

異世界キャンプ 10-12話

18
運営しているクリエイター

記事一覧

12話、ストーンフラワー(4)

「出来たよ?」
「あ、ありがとう」

(ラーナの無表情って怖いわー)

「リリの言った通りにしたけど、確かに切り落とした部分は食べられそうにないね」
「や、やっぱりそうよね……ほかは大丈夫そう?」
「うん、美味しそうな匂いだね!」

 リリは凍り付いた、笑顔だがラーナの目が笑ってない。
 その笑顔のままラーナはイヴァに問いかけた。

「それと、イヴァ?」
「なんじゃ?」
「ボクの分も、お酒出してく

もっとみる

12話、ストーンフラワー(3)

 そのまま暫くは、ラーナが種を集めては、酔っぱらいのイヴァが収納魔法で詰め込む収穫? を100発ほど続けた。
 すると急にストーンフラワーの勢いが無くなってきた、リリには心なしかストーンフラワーが疲れているように見えた。

(終わりかな? もう少し欲しかったなぁ……)

 すると急にストーンフラワーが大きく膨らみだした。

「あいつら逃げる、イヴァ弓!」

 ラーナは何かを察したのか、イヴァに指示

もっとみる

12話、ストーンフラワー(2)

「ここだねっ!」

 カルラ・オアシスの街並みがまだ遠目に見える程の距離で腰に手を当てラーナが仁王立ちする。
 そこかしこに大きな岩石が転がっている街道、馬車が通れるように岩を退けただけの舗装もないずさんな街道。
 後ろにはジョッキを片手に酒を飲む二人とリリがラーナを見ていた。

(なんでソフィアエール飲みっぱなしなの?)

「ソフィアはなんでついてきたの? ギルドで飲んでればよかったじゃない」

もっとみる

12話、ストーンフラワー(1)

「ストーンフラワーってなに?」

(前世のわたしでも聞いたことのないモンスターだわ、名前の通りなら岩でできてる花とか?)

「ボクもよく知らないけど、ジャイアントスコーピオンより強いらしいよ? 戦ってみたいなぁ」

 クエストボードを眺め聞くリリの問いかけに、ラーナが明るく言う。

(怖っ! わたしは会いたくないんですけどー!)

 そこには新しく張り出された張り紙に大きく危険と書いてある。
 近

もっとみる

11話、デザート対決(8)

「改めて、説明を求めてもよろしくて?」
「っあ! はい……」

(揉めてるのにいいのかな?)

「アーモンドについてはソフィアの秘薬を使っています」
「肝油とは秘薬のことだったのですね?」
「はい、ナッツの香りをより良くすると思ったから、使わせてもらったの」
「確かに、いい香りでしたわ」

 聞いていたソフィアが、自慢気に胸を張る。

(ソフィアを褒めたわけじゃないんだけど……)

「それで、ジャ

もっとみる

11話、デザート対決(7)

「ラーナ持っていってもらっていい?」
「はーい!」
「ソフィアとアンは自分で取りに来てね!」
「運んでくれてもいいじゃないか」
「イヴァに運ばせるのは不安なのよ」
「なんじゃとー!」

 リリは一皿、ラーナが三皿持ってクラウディア達へと渡す。

(あれ? クリスタがクラウディアの後ろの定位置に戻ってる、ちゃっかりしてるなぁ)

 二人はお皿を置くと、自分たちの席に戻る。

「雲のパンケーキです、ど

もっとみる

11話、デザート対決(6)

【雲のパンケーキ ~魔法とモンスターのファンタジー仕立て~】

「なんとか間に合ったぁ! っさ、残りも仕上げましょ」

 三人はせかせかと動き、お皿に次々とパンケーキが並ぶ。

 ゴゴーン! ゴーン! ゴゴーン! ゴーン!

「ついに二の鐘が鳴ったねっ! 食べようじゃないかっ!」

 鐘の音と共に、勢い良くキッチンに入ってきたソフィア、その後ろに続くアン。

(ッププ! 待ち構えてたわね、二人共け

もっとみる

11話、デザート対決(5)

 リリがキッチンに戻ると、ちょうどイヴァがアイテムボックスから、数々のものを出している。

「遅くなってごめんね! ソフィアに捕まちゃった」
「おかえりリリ、こんな感じでいい?」

 器には、もったりとした生地。
 小麦粉のダマになった所もなく、空気を含み白っぽくなっている。

(最高、もう美味しそうー)

「じゃ卵白を三分の一とベルモットも入れちゃって」
「三分の一?」
「状態の悪い所から入れる

もっとみる

11話、デザート対決(4)

 ギルドの中は相変わらずの喧騒。
 態勢を変えず、全体を眺めるように座っているアン。
 受付に置いてある灰皿には、山のように吸い殻が積み上がっていた。

「リリ嬢ちゃん、どうした? もう出来たか?」
「もう少しですよー、ソフィアに肝油を貰いに来ました」
「っお! そうか、ソフィーならあそこにいるよ」

 顎をくいっと動かし、ソフィアを指す。
 ソフィアは猫獣人とリザードマンに絡み、ご機嫌にエールを

もっとみる

11話、デザート対決(3)

「ラーナありがとう、続きをやりましょう」
「はーい」

 リリが横目でイヴァを見ると、まだトントンと小麦粉を振るっていた。
 なのでラーナの説明を先にする。

「それじゃあ、次にいこっか!」
「うん!」
「レモン汁を入れて、お砂糖は3回に分けて入れながらフワフワになるまで混ぜますよ」
「っん! なんで3回に分けるの?」
「良い質問! 3回に分けることによって、泡がきめ細かくボリューミーになるの」

もっとみる

11話、デザート対決(2)

 ラーナの手際の良さに安心したリリは、イヴァを見ることにする。

(イヴァは大丈夫かなー?)

 ドサッ! ザザー!

 イヴァは机の上に直置きしたザルに向かって、ドバーッと全てを出していた。
 逆さにした布袋から、小麦粉が勢いよく落ちると、粉が舞い上がる。

「っうわ! 煙たいのじゃ! ゴホッゴホッ」

 左手で手の前を仰ぐイヴァとリリ。
 リリは天を仰ぎたい気持ちになった。

(マジかコイツ、

もっとみる

11話、デザート対決(1)

 リリ達が買い物を終え、ギルドに戻ってくると、既にギルド内では小麦粉の焼ける、香ばしい匂いがしていた。

「んー良い匂い! これは焼き菓子かなー」

(クラウディアだっけ? 彼女はなにを作るんだろう? 勝敗よりも異世界のお菓子に興味があるわ)

「パンの匂いがするー、でも少し酸っぱい匂いもするよ?」
「ラーナは相変わらず鼻が良いわね」
「エへへッ、ま
ぁーね」
「ラーナはパン好き?」
「好きだよ!

もっとみる

SS、リリの戦い

 ある日の冒険者ギルドでの交渉。
 リリは元会社員として、冒険者として、そして自分の利益のため、気合を入れる!

(負けっぱなしは性に合わないわ、次こそ銅貨一枚でも多く勝ち取るわよ!)

 リリの相手は、ギルド職員の制服に身を包んではいるが、盗賊と言ったほうが納得できる面持ちの受付嬢、アンドレア・オーティス、通称[アン]である。
 元冒険者であったこともあり、戦闘も事務も両方こなす、豪快だが敏腕と

もっとみる

10話、姫騎士とメイド(5)

 目を見合わせるクラウディアたち、四人が少し目配せをしたあとに、クラウディアが答える。

「いいでしょう! クラウディア=リューネブルクの名にかけて全力で挑む事を五大神様に誓います!」
「よし、これでオッケーだね」
「オッケーじゃなーい」
「リリちゃん、水を差さないでおくれよ」

(っえ? わたしが悪いの?)

「ラーナちゃん今回食べたいものは? うんと高いものでいいよ!」
「ボクはお菓子を食べて

もっとみる