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【くらしの東洋医学 鍼灸で元気に】腹痛下痢と東洋医学

千葉市内、千葉駅すぐ、女性と子ども専門鍼灸院『鍼灸 あやかざり』です。いつも【くらしの東洋医学 鍼灸で元気に】の記事をお読みいただき、ありがとうございます。

通勤や通学で電車に乗った途端にお腹がキューっと痛くなって、せっかく乗ったのにすぐ降りないといけない、駅のトイレを探す…そんな経験をお持ちでお困りの方、結構いらっしゃるのではないでしょうか?

今回は、このようなつらい悩み、切迫する腹痛下痢の症状について、その原因・治療方法・食養生について、西洋医学・東洋医学の両面からみていくことにしましょう。
本文中では、東洋医学における腹痛下痢についての考え方、鍼灸治療によるアプローチについても取り上げます。

では、どうぞ最後までお付き合いください。


1.腹痛下痢の原因

通勤や通学の途中、特に電車やバスの中でお腹が痛くなり、目的地に着く前にも関わらず途中下車をせざる負えない。
なんだかとても悲しいですよね。
朝起きた時からお腹の調子が悪いのならまだしも、会社や学校に行く途中で毎日のようにトイレに行かなければならないとなると、それだけで通勤や通学が億劫になったり、仕事に影響が出てしまいます。
普段は大丈夫なのに、受験や会議など大切な日に限ってという方もあるかもしれません。
こうした腹痛が繰り返し起こるために、休みの間は大丈夫だったのになぜ?…と気になっている方も多いのではないでしょうか。

乗り物に乗っているときに急な腹痛が起こる原因としては、朝食の消化不良や食あたり、車内の空調によるからだの冷えなどがあげられます。
また、精神的な原因として、次のようなことがあげられます。

  • 満員電車による自律神経のバランス崩れ

  • 職場や学校生活に対する不安やストレス

  • トイレがない環境に長時間置かれること

このような症状を長期に渡って繰り返すような場合、西洋医学的には『過敏性腸症候群』という疾患の可能性があります。
『過敏性腸症候群』は、腹痛下痢などの消化器の症状を慢性的に繰り返しているのに、検査をしても腸に異常は見られない、という疾患のことです。
この疾患の日本人における有病率は非常に高く、10~20%程度とい調査結果も報告されています。
『過敏性腸症候群』の症状としては、以下のようなものがあります。

  • 日々の通勤・通学で電車に乗ると腹痛に見舞われる

  • 排便後に痛みが和らぐ

  • 排便後に残便感がある

  • トイレに駆け込んで症状が治まっても、またすぐに痛みを感じる

  • 休み時間のたびにトイレに駆け込む

  • 症状のせいで外出が億劫に感じる

  • 寝ている時、休日などには症状が出ない

『過敏性腸症候群』は、何度もトイレに駆け込む症状から『各駅停車症候群』と呼ばれることもあります。
各駅停車と聞くと、のんびりゆったりという印象を受けますが、症状をみれば笑っていられない一大事です。
症状が何日にもわたって繰り返されたり、我慢できないほどの痛みがある場合にはQOL(Quality Of Life:生活の質)の低下にもつながりますので、一度、医療機関を受診して大腸に異常がないかどうか検査を受けておくことも必要ですね。

2.西洋医学によるアプローチ

腹痛下痢の原因となる疾患には、急性虫垂炎、胆石症、腸閉塞、尿路結石、胃・十二指腸潰瘍、胃腸炎、急性膵炎などがあります。
女性であれば子宮筋腫、子宮内膜症などの婦人科系の病気も原因となりえます。

また、近年、社会の変化に伴うストレスの増加に関連して電車内での腹痛にの原因として注目されているのが、先にご紹介をしました『過敏性腸症候群』です。

医療機関では、問診や血液検査、尿・便の検査などが行われ、必要な場合には、内視鏡検査やCT検査、超音波検査等が行われます。
検査の結果、腸に異常がなく、腹痛の原因となる病気が隠れていない場合に『過敏性腸症候群』という診断がなされることが多いようです。

治療には薬物療法や食事療法、心理療法などがあり、薬物療法では症状に応じて効果が期待できる薬剤が医師により処方されます。
また、心理面での影響が症状に強く関連している場合には、心療内科やメンタルクリニックの受診をしてみることをすすめられることもあります。

『過敏性腸症候群』の場合、生活習慣の乱れや、精神的なストレスなどで症状が悪くなることが多いため、食習慣や睡眠などの生活習慣を見直したり、ストレスの軽減を図ることも大切ですね。

3.東洋医学における下利の原因と治療方針

下痢には、腹痛を伴うものと腹痛を伴わないものがあります。
今回は腹痛下痢を含め、「下痢」というものについて東洋医学的な原因とその治療方針をみていきます。
東洋医学においては、排便回数が増加し、大便が希薄になって、はなはだしいと水様の大便が噴出するものを「泄瀉(せつしゃ)」といいます。

3−1.外気の影響(寒湿、湿熱)

季節・天候の変動などにより外邪(病気の原因となりえる外的なもの)が身体に入り込み、脾胃(脾と胃の臓)に影響を及ぼすと、飲食物の消化吸収機能に障害をきたして、下利の症状を発症します。
外邪の中でも、脾胃に影響を及ぼしやすいのは、寒さ、暑さ、湿気です。
寒さとは、いわゆる外気の冷えのことですが、そのほかにエアコンによる冷え、生ものや冷たいものを食べすぎることによる冷え、なども含まれます。
暑さの代表的なものには、いわゆる夏場の暑さがあります。
また、脾の臓は湿気に弱い性質をもつことから、暑さと寒さに湿気が加わると、消化不良により未消化の下痢がおこりやすくなります。
寒さが原因の場合には腹鳴と腹痛を、暑さが原因の場合には腹痛や切迫感を、伴いやすくなります。

治療方針は、入り込んだ外邪を身体の外へ追い出すようにします。
①寒湿の場合 「解表散寒」
②湿熱の場合 「清熱利湿」

3−2.飲食の不摂生(食滞腸胃)

暴飲暴食、油っこいもの・甘いもの・酒類・味の濃いもの、生もの・冷たいもの、腐ったものなどを原因をするものです。
これら、飲食の不摂生は脾胃の機能に影響を及ぼします。
飲食物が上手く消化吸収されなくなり、下利の症状を発症します。
この場合、腹張、げっぷ、食欲低下が増し、下痢時に腹痛と腹鳴を伴いやすくなります。

治療方針は「消食導滞」といい、未消化物を身体の外に排出させるようにします。

3−3.感情の乱れ(肝気乗脾、肝脾不和)

精神的なストレスに長間さらされてイライラし続けたり、悩み事や心配事で感情が暢やかでなくなると、身体の循環停滞がおこりやすくなり、消化吸収能力が低下して、下利の症状を発症します。
この場合、下痢時に腹痛を伴いやすくなります。
今回のテーマである、ストレスによる『過敏性腸症候群』のような腹痛下利は、東洋医学的にはこのタイプに分類されることが多いです。

治療方針は「抑肝扶脾・調和肝脾」といい、肝の働きを抑えて脾の働きを助けるようにします。

3−4.胃腸の弱り(脾胃虚弱)

体質的に胃腸が虚弱であったり、疲労や長患いにより身体が弱ると、消化吸収能力が低下して、下利の症状を発症しやすくなります。
この場合、胃のあたりの張りや不快感が日常からみられ、泥状便が出やすく、排便回数が多い傾向にあります。

治療方針は「健脾益胃」といい、脾胃の働きを高めるようにします。

3−5.胃腸の冷え(腎陽虚衰、脾腎陽虚)

長患いの後や高齢で体力が衰えた場合など、身体を温める作用が低下しやすくなることから胃腸が冷えやすくなります。
胃腸が冷えると、消化吸収能力が低下して、下利の症状を発症しやすくなります。
この場合、明け方に臍周りの腹痛や腹鳴を伴う下痢がおこりやすくなり、排便後は痛みが軽減します。

治療方針は「温腎健脾」といい、脾腎の働きを高めて、胃腸が冷えにくくします。

4.鍼灸によるアプローチ

ここまで、東洋医学的にみる下痢の原因と治療方針についてみてきました。
次に、東洋医学の手法のひとつである、鍼灸による下痢に対するアプローチについてみていきましょう。

「下痢は鍼灸で治療できるのか?」と疑問に思う方もいらっしゃるかもしれませんが、下痢に対しても鍼灸によるアプローチが可能です。

一般的な投薬治療を受けている方の中には、『薬を毎日続けることにストレスを感じる』『薬が効かなくなってきたように感じる』『根本的に下痢を解消したい』と考えていらっしゃる方も多いかもしれません。

一方、鍼灸治療の場合には、先の章でご紹介してきたような「下痢の症状を引き起こしている根本の原因」をみつけだし、それを正すことによって、つらい下痢の症状を取り除くとともに、下痢がおきにくい身体づくりを目指していきます。
鍼灸で一度の施術に使うツボは1~3つで、施術時間は休憩含めて1時間程度です。
なお、鍼をする前には、予め、詳しく問診をする必要があり、その症状だけでなく、他にもある様々な身体の症状(愁訴、随伴症状といいます)、その人の体質や体格、その時の体調、施術をする時の季節、天気なども考慮する必要があります。

その上で、その人の身体全体の状態(脈、舌、顔色、身体の熱冷のかたより、身体の緊張、手足ツボの反応など)から、トータル的にみて、最も原因にふさわしいツボを選び鍼灸の施術をします。
そのため、下痢の症状や原因、治療方針が同じでも、その時々で使用するツボも変えることが必要となります。

なお、下痢はWHO(世界保健機構)においても鍼灸治療が 適応可能であるとされている疾患のひとつです。

5.下痢の東洋医学的食養生

下利が続くと、食欲がなくなったり食事を減らしたりしがちですが、
食事療法では、胃腸への負担が少なく、消化のよい食品を摂るとよいとされています。
ここでは、東洋医学からみた下痢に効果のある食養生をいくつかご紹介します。

①身体が冷えている時
寒性の食材(トマトやきゅううり、なすなど)を控え、からだを温める必要があります。根菜類にはカラダを温める野菜が多いため、さといもやさつまいもなどを煮物や汁物などのように温かく調理して食べるのがおすすめです。
生姜は身体を温めると同時に、血のめぐりをよくするので薬味としてうまく利用しましょう。
甘味はからだを冷やす働きがあるので、甘いものは控えましょう。

②「水」の停滞によって腸の動きが悪い時
体内の水分調節もうまくいかず、その結果、からだに溜まる水分を『湿』と言います。湿が過剰になるのも下痢の原因のひとつです。
ターメリックやコリアンダーなどの香辛料にはからだを温める作用があり、カレーがおすすめです。
ただし、辛味成分は腸に刺激を与えて逆効果となるため、辛味のあるスパイスを使わずにおなかにやさしい味付けのものが最適です。

③「気」の停滞によって腸の動きが悪い時
気の巡りが悪くなると、からだのエネルギーが足りず体が冷えやすい状態になります。
胃腸も弱り、下痢をしやすくなります。三つ葉やセロリ、しそ、バジルなど香りのよい野菜や、みかん、グレープフルーツのような甘酸っぱい果物は気の巡りを良くしてくれます。

下痢で困っている時には、昔から言われるように、柔らかく炊いたご飯(おかゆやおもゆ)、野菜をやわらかく煮込んだスープや味噌汁、すり下ろしリンゴなどを摂るとよいでしょう。
肉やラーメン、ケーキなどのように油分が多いものは消化が悪くからだの負担となるので控えましょう。
コーヒーや炭酸飲料、アルコール類もおなかに刺激を与えるので気をつけましょう。

食材の効能も重要ですが、普段から偏食をなくして、過食や脂っこいものを控えることも大切ですね。
そして、何より、ストレスを溜めない生活を心がけることが一番です。
趣味やちょっとした散歩など、自分なりに気分転換できる方法を見つけてくださいね。

6.まとめ

今回は腹痛下痢について、原因や対処法、予防方法について解説をしました。
東洋医学においても、腹痛下痢に対する治療が可能なことはご理解いただけたでしょうか。

今回はここまでとなります。最後までお読みいただきまして、ありがとうございます。

それでは、鍼灸でからだも心も元気になりましょう!

鍼灸 あやかざり
千葉駅5分 完全予約制 女性と子ども専門の鍼灸治療院
千葉県 千葉市中央区新町1−6 ラポール千葉新町202
TEL:070-8525-6132


画像の出典:https://www.photo-ac.com/

参考資料:WEB版 MSD マニュアル(家庭版)、東方栄養新書、食材効能大事典、東洋医学の教科書、(標準)中医内科学


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