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自分が書いた詩をまとめていきます。
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#ノスタルジー

プノンペンの夏

三輪車が巻き上げる
骨と肉片の砂埃
幾重にも重なる頭蓋骨は
自らの用途と存在意義を
観る者に委ねる

キリングフィールド
木々
花々
薫風
散開

赤子の頭を打ちつけた大樹
髄液
涙滴
爾今
散開

どうだい日本人
次は射撃場で一発
派手にやらないか

三輪車は止まれない
プノンペンの夏

海岸線の先に

海岸線の先に

言葉の切れ端を集めながら、海岸線を歩く
貝殻の裏に
テトラポッドの先端に
波打ち際の湿った土の上に
見つけては つまみ取る

手のひらに一つ一つ重ねながら
そして
次第に両手で抱えるほどのそれは
可笑しいくらいに不揃いだった

アスファルトの上に広げてみると
なんだ、阿保らしい
それらは全て私の口癖だった

けれど西陽のせいだろうか
色がやわらかに、形がかろやかに見えるのは

なんだ、阿呆らしい

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アーケードから

アーケードから

目を細め、天を仰ぎながらアーケードを歩く
そこに広がるは破れたビニール屋根と
いつから切れたかもわからないガラスの照明の連なり
千切れた屋根にぶら下がるは
哀愁と懐古と祖母に手を引かれて連れられた日の温もりであった

肩を窄め、俯きながらアーケードを歩く
そこに広がるは幾何学にも見えうる割れたタイルの連なり
連綿と続くその溝の果てには
遥か彼方
記憶の端にコツリと落ちた駄菓子のクズが顔を覗く

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