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アーケードから

目を細め、天を仰ぎながらアーケードを歩く
そこに広がるは破れたビニール屋根と
いつから切れたかもわからないガラスの照明の連なり
千切れた屋根にぶら下がるは
哀愁と懐古と祖母に手を引かれて連れられた日の温もりであった

肩を窄め、俯きながらアーケードを歩く
そこに広がるは幾何学にも見えうる割れたタイルの連なり
連綿と続くその溝の果てには
遥か彼方
記憶の端にコツリと落ちた駄菓子のクズが顔を覗く

かつて
という枕詞が染み付いたこの一本道には
喧騒が路傍にこびりつき、静寂の粘膜が覆う

ふわり
綿菓子色の記憶が
今日もコンクリートをかじる私の精神を溶かしていく

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