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あわいにインタビュー① ドラマトゥルク 眞鍋隼介さん〈後編〉

誰ひとりとして、全てを見渡すことのできないダンス公演『あわいにダンス』。観客はここで、どんな時間を過ごすのでしょうか。一人一人の見聞記はまったく異なるものになるでしょう。そんな捉えどころのない『あわいにダンス』を、メンバーの言動から紐解くインタビュー・シリーズ

1回目はドラマトゥルクの眞鍋隼介さんにインタビュー。<後編>をお届けします。

▼ インタビュー前編はこちらから!

読書会の様子

────8月から継続して行われてきたオープン・リサーチの「読書会」にも、眞鍋さんは参加されています。そこで読んだ内容は、今回の公演にどのように関わってきていますか?

眞鍋:資料として、みんなで読んだ「憶測」の話は、ツアーで構成した今回の公演のコンセプトの根本にある考え方だなと。(ヨシタケシンスケ『日々憶測』光村図書出版、2022年)それを、ツアコンのみんなと共有した時は、皆さんもこの公演が何をしようとしているのか、なんとなくわかったのではないでしょうか。他の本も読んだけど、あんまり頭に残ってないです。すいません。

ヨシタケシンスケ『日々憶測』光村図書出版、2022年

────「憶測」と「ツアー」が繋がるのですね。

眞鍋:ブラインド・ウォークでも、ブラインドじゃない状態でも、駒ヶ林のエリアを歩いたのですけど、それも全部基本的には憶測で……。駒ヶ林って本当にわけのわからないものがたくさん置いてあって、よく見ると違和感だらけのエリアなのですけど。何でこれがここにあるのかというような違和感を見つけて、みんなで憶測して共有して、それらをツアーのルートに入れて、お客さんと共有でしながらツアーしていく感じになっています。この本『日々憶測』は、この公演の根本的な姿勢になっていますね。それをお客さんに伝えるのは、またちょっと難しいとは思うんですけど。

────「憶測」って言うと、正解を知るのがゴールではない、ということの面白さ、でしょうか?

眞鍋:そうですね、憶測というか妄想していくというか。駒ヶ林とか新長田の史実も挟みつつ、出鱈目やフィクションと、ノンフィクションとを交互に織り込んでくっていう感じにできればいいなと思ってるんですよね。

────眞鍋さんがこのツアコンのリハで街を歩いて、改めて、今回の舞台の街の面白さは何でしょうか?

眞鍋:この公演に関わる前にも何回か来たことあるんですけど、そもそも街のつくりや歴史も独特で、実際に注意して歩くと、なんか変なことしかないぐらいの、いい意味で変わっている土地だなあと思っています。自分なりにいろいろ駒ヶ林の歴史とかを調べてはいますが、もうすこし別の視点から違和感などをお客さんと共有できればいいかなと思っています。

────なるほど。街を歩くなかで、お客さんの身体がどういう状態になっていったらいいなと考えていますか?

眞鍋:具体的な目標はないんですけど、憶測する身体や、細かいことに気づく、五感が普段よりもうちょっと敏感になっているような。普段とはちょっと違う状態になればいいなとは思っています。25分歩くことは、慣れてない人にとっては結構大変。ちょっと疲れた状態で劇場に来てもらうのもいいのかなって思います。劇場のなかで寝てもらってもいいし笑。

────ありがとうございました。今回の公演で、長田の街やダンスボックスと出会い直すような時間になりそうだと思いました。

次回は、舞台監督の小林勇陽さんのお話をお伺いし、劇場のなかで起こることに迫っていきたいと思います。お楽しみに!


眞鍋隼介
主に舞台芸術に関わる仕事をしている関西在住のフリーランサー

イラスト:小松菜々子


公演情報

『あわいにダンス』
日程:2023年2月4日(土)、5日(日)
集合場所:アトリエKOMA(〒653-0043 兵庫県神戸市長田区駒ケ林町2丁目2−3)
詳細は下記リンクから↓


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