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不肖「信頼出来ない語り手」明智紫苑のおバカ書評! ついでにボヤキ! 読む読まないはあなた次第です。 当シリーズは、書評だけでなく、音楽や映画・演劇・舞台芸術などについての感想も載…
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#オタク

我が悪夢の女王たち ―中村うさぎ『狂人失格』―

我が悪夢の女王たち ―中村うさぎ『狂人失格』―

 私にとって一番の「悪夢の女王」は多分、私自身なのだろう。

 私は競走馬擬人化作品群『ウマ娘』にハマったのをきっかけにして、競馬に興味を持つようになった。その『ウマ娘』以前の「下地」として、80年代後半(代表者、オグリキャップ)から90年代前半(代表者、ナリタブライアン)までの第二次競馬ブーム並びに旧コーエー出版部の雑誌『光栄ゲームパラダイス』に掲載されていた『ウイニングポスト』シリーズの記事が

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自称オタクの「普通の人」  ―本田透『電波男』―

自称オタクの「普通の人」 ―本田透『電波男』―

 ベストセラーはたいてい賛否両論ある。当然、当記事で取り上げる本田透氏の『電波男』(講談社文庫)も賛否両論ある。世間一般の評判だけではない。私個人の中でも賛否両論あるのだ。つまりは、ある程度は納得出来る面がありつつも反発もあるのだ。そもそもオタク趣味なんて、ある程度の経済力と教養レベルを前提としたものでしょ?

 …とまあ、本田さんが仮想敵にしている酒井順子氏の『負け犬の遠吠え』の感想の冒頭をもじ

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オタクとヤンキーの二極化の間にあるもの ―五十嵐太郎他『ヤンキー文化論序説』―

オタクとヤンキーの二極化の間にあるもの ―五十嵐太郎他『ヤンキー文化論序説』―

 私は二冊の対照的なオタク文化批評の本を読んだが、当然それらだけでは不十分だ。いわゆる若者文化について語るならば、また別の文化やその担い手たちについて書かれた本も読む必要がある。それが『ヤンキー文化論序説』(河出書房新社)だ。当然、この本にはヤンキー文化とオタク文化の比較があるが、本能的に若者嫌いな中高年者にとってはどちらも不愉快極まりないものに過ぎないだろう。あたかも、女性蔑視に凝り固まりつつも

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「オタクの楽園」の住人は男性だけではないのだが…? (後編)―中原昌也、高橋ヨシキ、海猫沢めろん、更科修一郎『嫌オタク流』―

「オタクの楽園」の住人は男性だけではないのだが…? (後編)―中原昌也、高橋ヨシキ、海猫沢めろん、更科修一郎『嫌オタク流』―

 前の記事で取り上げた『萌え萌えジャパン』がオタク文化の豊かで明るい面を示す本ならば、当記事で取り上げる『嫌オタク流』(太田出版)は逆にオタク文化の暗く貧しい面を示している。私が思うに、オタク男性の欲望や美意識とは「一般的な」異性愛男性の欲望や美意識のデフォルメであり、パロディだろう。だからこそ、オタク批判側に立つ「異性愛男性」中原氏や高橋氏の批判はなおさら猛烈にならざるを得ないのだ。自分自身の「

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「オタクの楽園」の住人は男性だけではないのだが…?(前編) ―堀田純司『萌え萌えジャパン』―

「オタクの楽園」の住人は男性だけではないのだが…?(前編) ―堀田純司『萌え萌えジャパン』―

 オタク文化を扱う本は色々とあるが、この記事で取り上げる堀田純司氏の『萌え萌えジャパン』(講談社)は好意的にオタク並びにオタク文化を扱う本である。ただし、2005年発行というだけあって、さすがにちょっと情報が古い。今時のオタク文化を語るに欠かせない初音ミクなどのボーカロイドが普及する前の時期だけに、いささか物足りない。
 とは言え、この本は日本のオタク文化の基本をだいたい踏まえているだろうと思うの

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