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視点4_関係性は「支配から接続」へ


はじめに


この記事は、2018年末に室井淳司が宣伝会議より出版した「全ての企業はサービス業になる」の最終章で、書籍の内容を10の視点にまとめた内容を要約した記事になります。

2023年現在からすると5年前の記事ですが、当時から現在までに起きた変化を追うと、社会や消費の流れがどの方向に向かっているのか解りやすいと思いますので是非ご一読ください。

2023年視点からのコメントは後半に記載しています。


以下書籍本文の要約


 組織の体制や、顧客との関係性は、支配する側と支配される側、提供する側とされる側、という縦型の概念から、すべての関係が水平にかつ直接繋がる横型、面型の概念に変わっていきます。その際、ハブをコアとした関係性の構造ではなく、複数の点同士が直接繋がる構造を据えることで、事業やサービスの領域は爆発的に広がります。

書籍より


水平に接続された組織は、接続されたそれぞれの個がそれぞれ高いパフォーマンスを発揮することで、大きな面を形成することができます。それらの面は様々な価値観や多様性を生み、外部から接続しようとする個に対してもオープンな組織になり、共鳴し振幅して拡大していくことができます。


3章(本書の3章)で見てきた事例に日本交通株式会社を母体とする、JapanTaxi株式会社が展開する配車アプリ「JapanTaxi」がありました。

<挿入>
Japan Taxiは現在、DeNAが運営していた配車アプリ「MOV」と事業統合し配車アプリ「GO」として運営しています。

2023年9月現在


この配車サービスは当初、東京の日本交通が開発した、「日本交通タクシー配車」というアプリで、日本交通のタクシーを呼ぶために開発したアプリでした。

しかし、日本交通単体でこのサービスを展開していくと、利用者の利益は独占できますが、利用者からすると手配できる車両数に限りがあります。

このサービスの視点を、利益を自社で独占するという視点から、顧客の使い勝手を最優先するという視点にシフトすると、このアプリを日本交通以外のタクシー会社も接続できるオープンなプラットフォームとすることで、顧客にとっていつでもすぐに移動できるサービスの拡充に繋がり、利用者が増えることになります。

「JapanTaxi」は現在(2018年)では47都道府県、約860事業会社、約6万1000台のタクシーに接続できるサービスとなり、さらに2018年9月には、韓国のカカオモビリティとも資本業務提携を発表しました。縦の組織から横の組織、支配から接続により実現できたサービスと言えます。

「JapanTaxi」が今後さらに上限のない、利用者がより使いやすいサービスへと進化していくためのキーワードは、外部とオープンに連携していく接続性の向上です。

この視点で見ると、一般のドライバーが「JapanTaxi」に登録し、サービスを提供できるようになることも考えられるかもしれません。

接続性の高い水平な組織は、接続している個の能力や意識自体がオープンで建設的であることが大切です。縦型組織の意識のままで接続型の組織を蘇生すると、結局機能を司るハブが生まれる形になり、ハブが機能しなければ全体が機能しません。

個々の意識と能力で、ハブがなくても機能し発展し続ける状態を形成すること、点同士が個別に繋がり作用することで、接続性のネットワーク自体からさらに新しいサービスが生まれる等、自立型の共同体へと進化することができます。

書籍要約ここまで


2023年から見て


2023年現在では「Japan Taxi」は事業統合という形で国内トップの配車アプリ「GO」へと変わりました。接続によるサービス拡張の視点では、個人ドライバーが配車アプリを利用して利用客を獲得するというUber同様のライドシェアサービスは、国内の規制や既存事業者の反対があり実現できていませんが、昨今のオーバーツーリズムによるドライバー不足の影響を受けて再び議論が行われるようになっています。

組織の水平接続が価値を発揮する場面は、僕のようなクリエイティブの業界でも起きています。僕自身、2016年ごろには既に様々な専門チームと受発注関係の無い水平型の組織を蘇生して働いていました。水平であり続ける為に意図的に組織体制上のハブ生成を避け、関係各チームは個別にクライアントと契約をし、受発注関係が生む立場の差を回避していました。そうすることでフラットな意見交換ができるからです。

コロナ禍を経て、クリエイティブ業界は一段と水平化が進んでいます。オンラインにより物理的な距離を超えて働きやすくなった点が大きく影響していると思いますが、元請を作ることで責任リスクを明確にするという発注側の意識も柔軟に変化している様に思います。

僕のクライアントでも最近は、僕たちと一緒に考えたい、ワークしたいというクライアントが多く、僕はそのニーズに合わせてクライアントと対峙する提案型の組織と、クライアントと一体的に働く協働型の組織を作り分けています。

事業開発やブランディング等のプロジェクトはチーム内での多頻度の対話を必要とする為、協働型の組織の方が上手く様に思います。僕自身はこういった仕事が多いので、僕自身の領域では今後も協働型のチーム編成が進んでいくと思っています。

クリエイティブ組織の水平接続については、アドタイコラムで詳しく書いているのでそちらをご覧ください。

https://www.advertimes.com/20230310/article413331/


この書籍は全ての視点や考察が視点10に繋がる構成になっています。視点10も是非ご一読ください。


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室井淳司