電子版新聞の読み方~テックジャイアントとの競争について考えて~
米国のテックジャイアント、FAMGA(フェイスブック、アマゾン・ドット・コム、マイクロソフト、グーグル、アップル)の競争上の優位性は揺るがないのか、また、どの分野に伸長してくるのか?日経電子版の記事【米FAMGAが描く 似て非なる自動車の未来】は、自動車業界におけるFAMGAの存在感を、まざまざと伝えてくれる卓越したリポートだと思います。
CASEが進行し、コネクテッド(つながる)・オートノマス(自動運転)・シェアリング(共同所有)・エレクトリシティー(電動化)の各分野で新しい機能の開発にしのぎを削る大激変の時代に、日本の自動車業界はどのようにして生き残って、勝ち抜いていくのだろう、そんなことを考えさせてくれるリポートです。それは、自動車業界に限らず、多くの産業が否応なく迫られるFAMGAとの関係、テックジャイアントとの競争について、改めて危機感を喚起してくれる内容となっています。
私は、暇さえあれば日経電子版という情報の大海でネットサーフィンしているのですが、そんな危機感や様々な疑問、引っ掛かるものを胸に秘めて無数の記事に接していると、ふと特定の記事に目が留まることがあります。今回目に飛び込んできた記事【「AI時代の危機感足りない」 コニカミノルタCTO】は、まさに、テックジャイアントとの対峙のあり方を簡潔明瞭に説いたものでした。
少し長くなりますが、このインタビューの最も重要と思われる部分を引用します。
「GAFAに代表される欧米企業は、ICT(情報通信技術)を活用して世の中を変革するような新しい価値の創出、すなわちイノベーションの創出にダイレクトにアプローチし、その結果としてビジネスモデル・イノベーションを様々な産業で引き起こしています。……」
「……日本企業は、ものづくりビジネスは得意ですがソリューションビジネスは得意ではありません。もっと価値創出にマインドを一度リセットすることが必要です。そうしなければ、思いもよらないところから突然、虚を突かれ既存事業がアッという間に無力化し、日本の産業がデジタル植民地化してしまうかもしれません」
この指摘に触発されて、私は、改めて一つの商品(モノ・サービス)が誕生するまでのプロセスというものを考えてみました。
科学 ⇒ 技術 ⇒ 価値 ⇒商品
基礎研究⇒技術開発⇒価値創出⇒商品
モノづくり⇒コトづくり
科学が技術となり、技術が価値となって、商品が誕生するというプロセスです。
そして、技術が価値となるには、最終的な商品(モノ・サービス)のユーザーの体験=UX(ユーザーエクスペリエンス)の最大化、消費データの解析などの作業が必須となります。
技術+UXの見極め=価値
モノづくりビジネス+ソリューションビジネス=イノベーション
かつてのモノづくり全盛の時代には、商品に新しい技術を盛り込むことが、価値創出に直結していた(プロダクトアウト)かも知れませんが、それだけでは、コト消費の現代には通用せず、最後の一ひねり、潜在的なニーズを捉えた全く新しい価値を具現化(イノベーション)しなくてはならないと考えられます。
モノづくりの時代:技術開発≒価値創出
コトづくりの時代:技術開発≠価値創出=技術+イノベーション
これらのことから、私は、テックジャイアントとの対峙のあり方として、価値創出の重要性、イノベーションへの積極的・全社的なアプローチの体制の必要性(必然性)を改めて痛感すると同時に、イノベーションの時代にも必須の技術的基盤を有する日本の優位性を再確認できたように思います。
電子版の新聞というのは、最新の情報から過去の記事まで無数の『知』が詰まった『生きた図書館』だと思います。一つの記事を読んで得ることの出来た問題意識への解を、別の記事が教えてくれる。電子版新聞には、無数の問いかけと、無数のヒントが詰まっており、読み方次第では、AIにも匹敵する『知』のサポート役になるのではないでしょうか。
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