見出し画像

ファミレスのデジタルトランスフォーメーション

 日経電子版の記事【すかいらーく創業50年、次世代ファミレスへ進化中】は、「全国一律・同一商品・同一価格」の『メニューブック』に象徴されるスケールメリットの古いビジネスモデルからの脱却を目指す「すかいらーく」の姿を見事に捉えた好リポートだと思います。



 確かに、ファミレスを取り巻く昨今の情勢は、スケールメリットだけに頼った効率化では対応しきれない様々な課題(相互に絡んで相乗的な影響を及ぼしてくる様々な要素)に直面していると言えます――

▶ファミレスを取り巻く環境の変化

① 少子高齢化

② 人口減少

③ 人手不足

④ 最低賃金の上昇

⑤ 単身・夫婦だけの世帯の増加

⑥ ファミリー層の多様化

⑦ 24時間営業問題

⑧ 働き方改革

⑨ ライバル店・回転ずし・焼き肉・喫茶店などの急成長により激しさを
 増す胃袋の争奪戦
             など



 働き手(働き方)の変化・顧客の変化・競合の変化という根本的な変化への対応は、スケールメリットという効率化では対処できない(むしろ悪化する)性質のものであり、全く別の切り口からの効率化=スモールマスへのきめ細やかな対処が要求されるものです。

 そこで登場するのが、『IT化』という効率化であり、スケールメリット効率化の象徴である『メニューブック』、ファミレスにとって外すことの出来ない最大の顧客接点である『メニュー』を、『デジタルメニュー』に転換する事なのです。



 一般論として、ファミレスにとって絶対唯一と言っても良い顧客接点『メニュー』をデジタル化する事には、記事などから計り知れないポテンシャルが感じられます――

▶『デジタルメニュー』のポテンシャル

(1)『個店対応』・・・デジタル化によって、地域・季節に合わせた
          メニューを簡単に組める。

(2)『パーソナライズ』・・・クーポンや広告の配信もできるスマホアプリ
        と連携させれば、個人に合わせたメニューも提案できる。

(3)『CK(セントラルキッチン)』・・・(1)・(2)を実現するには
      店舗オペレーションを効率化できるCKが不可欠。デリバリー・
      持ち帰りの増加にも対応できるようになる。

(4)『ダイナミックプライシング』・・・地域・時間帯などで値段を変える
        ダイナミックプライシングを導入すれば売上の最大化も。

(5)『より創造的な業務への人的リソースの再配置』・・・注文取りに
          割かれていた労力を、配膳・案内などのサービスの
          充実に回せ(差別化)、ピーク時回転率も上昇する。



 このような『デジタルメニュー』の施策から浮かび上がってくるのは、デジタル化、IT化が決して効率化を最終目標にして、浮いた分をすべて利益に回してしまうのではなく、企業の成長にとって最も大切な顧客のニーズの取り込みを目的としている事です。その点は決して忘れてはならないポイントではないでしょうか?

▶企業の成長=コスト削減+IT投資
      =効率化+ニーズの取り込み

▶企業の衰退=コスト削減だけで終わってしまう
      =効率化だけが叫ばれる




#COMEMO #NIKKEI

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?