freeeが大切にしている"カルチャー"と"仕掛け"
freeeのムーブメント研究所で、マネージャーをしている野本です。
先日、5/21(金)にPR table主催イベント「re:Culture」に登壇し、freeeのカルチャー醸成に向けた取り組みをお話させていただきました。
私がfreeeにジョインしたのは2020年11月になります。
それ以前は、事業会社の人事や、人事戦略コンサルタントとして、様々な組織の企業文化に触れてきましたが、freeeのカルチャーへコミットする姿勢や取組みには、本当に驚かされる毎日でした。
今回のイベント登壇にあたり、改めてfreeeの類稀なるカルチャー醸成力のポイントを整理する良い機会となったので、この場を借りて発信させて頂こうと思います。
何か一つでも皆様の気づきに繋がりましたら幸いです。
目次
1、freeeとカルチャー
2、カルチャー醸成に重要と考えるポイント
3、freeeの具体的な仕掛け
4、まとめ
1. freeeとカルチャー
まず最初に、freeeではカルチャーをどの様に捉えているかお話ししたいと思います。
freeeは「スモールビジネスを、世界の主役に」という大きなミッションを持っている会社です。
このミッションをfreeeの成し遂げたいこと(Why)だとすると、カルチャーは、その実現のために必要な行動や習慣(How)であり、結果として生まれる"企業の体臭"のようなものと捉えています。
では、freeeではどのような行動(How)を重んじた組織を作りたいと考えているのか? 以下の3つを大切にしています。
① 個々の自律性
一人一人がミッションに共感し、自律的に考え、行動できるプロフェショナルであるということ。
②強い一体感
それぞれが勝手に動いていては、組織としてパフォーマンスしないため、個々の自律性がありつつ、それでいて強い一体感も持っているということ。
③矛盾がないこと
自律性&一体感を持った上で、そのパワーのベクトルが、組織として掲げる考え方や行動とアラインしていること。
この3つのポイントを実現するために、freeeでは「価値基準」という共通言語を定義しています。
「価値基準」を明確にすることで、これに沿っていれば個々の自律性に任せることができます。
また、思考や行動のベースが揃うため、強い一体感を出すことができ、行動に矛盾がないかどうかも、みんなで議論できる様になります。
この、freeeの「価値基準」を具体的に定義しているのが、以下のスライド。
長年かけて磨き上げてきたワーディングのコダワリも含め、とても独自性の高いものになっています。
真ん中の「freeeはマジ価値を届けきる集団である」をコアコンピタンスとし、その上で、全員が持って欲しいマインドを示した「マジ価値2原則」(上2つ)と、重要な行動指針である「マジ価値指針」(下5つ)で構成されています。
freeeらしい組織カルチャーを醸成する上で、重要な役割を果たす「価値基準」
どのようにして、これらを社員と共有し、浸透させ、自律的で/一体感があり/矛盾のない組織を作ってきたのか?
ここからそのポイントを深ぼっていきたいと思います。
2. カルチャー醸成に重要と考えるポイント
カルチャー醸成、つまりは価値基準の浸透のために、重要なポイント。
実はその学びを得た原体験は、代表である佐々木大輔の創業初期の失敗経験にありました。
(出典:過去の失敗経験を語った、佐々木大輔のブログ)
(以下、ブログ引用)
組織力を最大化するには、みんなが素早く意志決定をして物事を進めることが最も重要だ。そして一方で、みんなの意思決定がfreeeらしいということももちろん大事なので、そんなよりどころとして、freeeの価値基準というものをセットした。(中略)
ところが、これがあんまりうまく浸透しなかった。。。
単純に、言葉として難しすぎて覚えられなかったり、そこに込めた真意がかならずしも理解されていなかったりということがある一方で、例えば「エンジニアのためにあるようにしか見えない」といったように、一部の人にしか関係ない印象も与えてしまっていたようだ。(中略)
全員でこのテーマについて議論してみることにした。グループに分かれて、価値基準について議論をしてみると、「特にみんなに理解されていないポイント」や「皆が誇りに思っている部分」、「逆にみんなが足りていないと思っている部分」が明るみにでてくる。(中略)
それぞれの価値基準のキャッチフレーズを全員アイデア出し必須で募集した。ここででたアイデアを元に、最終の言葉の整理。結果として、freeeの価値基準がセットされた。
創業初期から、組織にとって「価値基準」の必要性を見出し、その定義作りに、いち早く着手した佐々木。
しかし、経営側の組織づくりに対する強いコミットメントや発信だけでは、メンバーの共感・浸透には至りませんでした。
組織にいる全員が、それを大切にしていくためには、結果を伝えるのではなく、プロセスから共有し、共に創り上げること。
そのためには、経営からの発信に対して、メンバーは自分事として咀嚼し、必要に応じてフィードバックできる双方向性と循環が、最も重要なポイントであると、初期の経験から学んでいます。
では、freeeではどのような取り組みで、この双方向性を現在まで維持し、価値基準を浸透させてきているのか?
その具体的な内容をご紹介していきたいと思います。
3、freeeの具体的な仕掛け
価値基準の浸透への具体的な取り組みとして、大きく3つに分類して紹介していきたいと思います。
まずは、「オンボーディング」
freeeで定めている価値基準を、自分事として向き合ってもらうために、どのようなトーンセットをしているのか。
その上で、「日常の接点」
日常の中で価値基準の理解を深めたり、実践したりするために、どのような仕掛けを準備しているのか。
そして、「オープン・フラット」
自分なりに考えたことを組織全体へどうやってフィードバックしたり、コミュニケーションしていくのか。
これらの具体的な取り組み例について、あくまで一部になりますが、順を追ってご紹介していきます。
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「オンボーディング」
まずはオンボーディングに関して、2つの取組みをお話しします。
1つ目は、「カルチャー」の研修プログラムです。
freeeでは、入社時に「カルチャー」研修に参加必須となっています。
freeeの価値基準に関する説明・内容理解のプログラムに加え、
価値基準を、より自分らしい考え方や行動へ置き換えたり、解釈することをサポートする、「Value Card(※)」というゲームコンテンツも実施します。
ゲームでは、freeeの価値基準に準えた、身近な行動例(ex.自分は妥協しない方だ→価値基準「理想ドリブン」傾向が強い)が描かれた複数のカードが卓上に積まれています。
それを参加者で順々に引いていって、自分が大事にしている考え方や行動を手元に残し、不要なものは捨てていくゲームです。
カードを引くごとに取捨選択を繰り返し、卓上のカードが無くなったらゲーム終了。最終的に自分の手元に残っているカード5枚を共有して、freeeの価値基準に沿った自分の行動特性をみんなに共有します。
これにより、抽象度が高く慣れない価値基準を、より自分らしい身近な具体行動に置き換えることができ、自分事として考えてもらったり、理解のハードルを下げることが狙いです。
※(参考)ValuCardの詳細はこちら。
アトラエさんと共同開発で、freee用にプロダクトをカスタマイズしていただきました。
そして2つ目は、オンボーディングの中で、
「カルチャーに合わせるのではなく、一緒に進化させるもの」というメッセージを明確に伝えています。
freeeでは、「誰かから与えられた型にはまる」という、単方向かつ受動的な姿勢を持って欲しくないと考えています。
freeeのカルチャーをより進化させるためにはどうしたらよいか。一緒に考えて、行動し、発信していって欲しい。新しいメンバーが加わることで、よりfreeeらしいカルチャーが醸成されていく。ということを一番始めに、入社した全員へ伝えます。
そして、実際にこれは、言葉で言っているだけではありません。
創業以降、経営陣とメンバーの間で何度も議論し合いながら、価値基準は進化を繰り返し、今の形として成り立ってきました。
以下のような、過去事例も合わせて、オンボーディングの際に共有します。
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「日常の接点」
次に、価値基準に触れ、より理解を深めたり実践したりする仕掛けについて紹介します。
まずご紹介したいのは、「価値基準記念日」。
価値基準は8つ定義がありますので、合計8回の記念日が1年の中で設定されています。
毎日全部に意識し続けることは難しいけど、勤労感謝の日とか、母の日ように、年に1度その日が来ると、価値基準に自然に想いが馳せられる日になって欲しいと願いを込めて企画を立ち上げました。
例えば、母の日であれば「今日は、お母さんに感謝する日。カーネーションを送って、日頃の感謝を伝えよう」という行動が生まれます。
このように、その記念日がくると価値基準に沿った取組みや行動が、社内の至るところから、自然発生する状態が理想です。
しかし、一足飛びではそこまで行けないので、freeeでは記念日ごとに、各価値基準に沿った体験を盛り込んだイベントを開催しています。
freeeの過去記事で取り上げているので、ご興味があればご覧になってみてください。
企画段階から社員も参加し、皆がカジュアルに乗っかりやすいアソビゴコロ満載のイベントが盛り沢山!
ユニークなイベントへの参加を通して、freeeの価値基準に想いを馳せる体験を設計しています。
また、記念日以外にも日常の接点は様々用意しています。
例えば育成プログラムは「ゴーストバスタージャーニー」、週次の全社Mtgは「Weekly Aekyo Hour(あえて共有アワー)」と言ったように、価値基準をネーミングに活用している事例もあります。
それぞれの施策や取組みが、freeeの価値基準の中のどれに位置づけられる行動なのか。ネーミングや取り組みを通して、社員とともに価値基準の体験を共有しています。
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「オープン・フラット」
長くなりましたが、これが最後。
価値基準の実践を通して、自分が考えたことを組織にフィードバックしたり、コミュニケーションしたりするための取組みを、2つご紹介です。
まず1つ目。
概念的な話になりますが、「ジャーマネ」というポジションです。
freeersは全員マジ価値の元では平等で、そこに上とか下とかはない、マネージャーはあくまで役割の一つであると考えています。
これは一般的な中間管理職だけを指すのではなく、代表や役員も含めた全員を指しています。
ネーミングの由来は、芸能界のマネージャー(俗称 ジャーマネ)です。
マネージャーはタレントを輝かせるためにサポートすることが役割であり、決して上に立つ人ではない。そういう思いを込めてマネージャーをジャーマネと呼んでいます。
この「フラットな関係性」であるという考えを、社員全員と共有しています。
そして2つ目が、社内SNSをベースとしたコミュニケーション。
日々行われるMtg内容はもちろん、カルチャーに関するチームそれぞれの行動や、個人的に考えたことの共有も全て、このSNS上で発信されています。
実際このSNSで、メンバーだろうが、役員だろうが、代表であろうが、フラットに発信するし、発信されたことに対してフィードバックやコメントが、「オープンに」飛び交います。
(例として、添付した画像中心、投稿にコメントしているのは取締役でありCFOの東後。カルチャー醸成に関するノウハウの共有を求めています)
(結果として、本当にカルチャーは醸成されているのか!?)
ここまで散々と取組みをお話してきましたが、「で、結局成果は出てるの?」という、尤もな疑問が浮かんだ方もいるかと思います。
手前味噌ではありますが、年末に実施している社員サーベイの結果、カルチャー共感・醸成ともに、上昇の結果(自社比)を得ることができました。
リモートへの環境変化もあり、正直結果がどうなるか不安もありましたが、ご紹介してきた地道な活動の成果もあり、こういった結果に繋がっています。
サーベイの詳細は、別のNoteでも分析していますので、ご興味ある方は参照してみてください!
4.まとめ
最後に、全体の話をまとめると以下のようになります。
・ミッション実現に向けた、Howとしての「カルチャー」
・カルチャーは「価値基準」の実践によって結果的に生まれる”体臭”
・価値基準の浸透のためには、経営とメンバー間の双方向性がポイント
・「オンボーディング」で、価値基準への向き合い方を共有
・「日常の接点」を増やし、実践機会の創出
・「オープン・フラット」な環境でのコミュニケーション
これまでお話しした内容から、お分かりかもしれませんが、
カルチャー醸成には簡単な近道はなく、地道な活動の積み重ねです。
想いや、考え方、行動のあり方の話を経営とメンバーの双方向で膝を突き合わせてやっていく。このディスカッションは人間にしかできないものであり、決して効率化できない領域でもあると考えます。
「目的と意思を持って投資する。」
カルチャー醸成のために、投資を厭わず、妥協せずに引き続きfreeeは取り組んでいきます!
ここまで読んでいただき、ありがとうございました!
組織づくりやカルチャーに関する意見交換、ウェルカムですので、もしご興味・ご意見などあればNoteでのコメント、メッセージもお待ちしています!
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