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殺して食べるという事。ポン・ジュノ監督作品「オクジャ」

みなさまこんにちは。今回ご紹介する映画はこちら!

『オクジャ(原題:옥자 英語:Okja) 』(2017年Netflix公開)

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「グエムルー漢江の怪物」「パラサイト」を生み出したポン・ジュノ監督の作品です。Netflixオリジナル作品であり動画配信サイト向け作品が、カンヌ国際映画祭に多数ノミネートされた事で大きな話題となりました。監督が妻夫木聡主演の日本映画「ブタがいた教室」やジブリアニメ「未来少年コナン」に発想を得たという製作秘話も。

あらすじ
韓国の山奥で祖父と巨大なスーパーピッグ・オクジャと静かに暮らしている少女のミジャ。だがある日、突然アメリカから動物学者のジョニー・ウィルコック博士とテレビクルーが、スーパーピッグを最もよく育てた農家としてミジャを表彰しにやってくる。英語がわからず状況がつかめないミジャだが、隙をつかれてオクジャを連れさられてしまう。実はオクジャはアメリカの大企業ミランド社が生み出した、「食肉用」の豚。ミランド社は極秘裏に豚の品質改良を重ね、巨大でおいしい「スーパーピッグ」を開発すると、その豚を世界各地26の農家に預け、どの農家が最も優れたスーパーピッグを育てられるかを競わせていたのだ。これまで通り静かな暮らしを望んでいたミジャは、家族同然に育ったオクジャを取り戻す為、動物愛護団体ALFの力を借りて海を渡り、アメリカでオクジャ奪還作戦を始めるー。

キャスト
ミジャ:アン・ソヒョン
山奥に祖父とクラス少女。両親はおらず、オクジャと兄弟の様に育つ勇敢で逞しい子。
アン・ソヒョンはドラマ「ドリームハイ」でスジの妹役として出演していた子役出身の女優さん。強い意志を感じさせる瞳が印象的。

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ジョニー・ウィルコックス博士:ジェイク・ギレンホール
動物愛好家として活動するテレビの人気司会者だが今はちょっと落ち目。ミランド社と手を組みオクジャを奪いにやってくる。
ジェイク・ギレンホールは映画「ドニー・ダーコ」で一躍有名となった俳優。アマイマスクと演じる役で印象が大きく変わる事からカメレオン俳優との呼び声も高い。

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ジェイ:ポール・ダノ
ALF(Animal Liberation Front)の代表。ミランド社のオクジャ連れ去りを阻止する為韓国に乗り込む。

ポール・ダノは映画「リトル・ミスサンシャイン」の引きこもりがちの少年から、NHKでも放送されたBBC制作のドラマ「戦争と平和」の主演まで幅広い活躍をしています。童顔で未だに少年のようなルックスが特徴的ですが「オクジャ」ではALFのリーダーとして男気溢れる演技を見せています。

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ルーシー・ミランド/ナンシー・ミランド:ティルダ・スウィントン
ミランド社の現CEOルーシーと、前CEOナンシーの双子。二人の間には確執がある。
ティルダ・スウィントンはケンブリッジ大学卒のイギリス人女優。映画ナルニア国シリーズでは白い魔女を演じました。

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「オクジャ」の背景とテーマー”サステナビリティ”持続可能な未来とはー


この映画のメッセージはずばり「命を頂くってどういう事?」ではないでしょうか。日常的に口にする食用肉も、元々は一つの命。日々の生活の中で、命を頂く事について立ち止まって考える機会はどのくらいあるでしょう。そしてどのくらい感謝の気持ちを持って頂いているでしょうか。

映画では、ミランド社が豚を食肉に加工するまでの過程で何が行われているか、ALFが市民に暴くシーンが登場します。これは動物に対する虐待だと。そしてその行為は今現在も世界中の食肉加工場で行われている紛れもない事実なのです。それを知った上で、みなさんは「肉を食べる」という行為にどの様に向き合うでしょうか。

ミランド社は、「世界の食料危機を救う為」という名目で、遺伝子改良を加え普通の豚よりも大きなスーパーピッグを生み出します。沢山の肉を市場に出せば食糧危機は解決すると。生きる為に他の命を頂く、それは人間でなくても他の生物も行う行為であり、自然の摂理とも言えます。世界はそうして成り立ってきた。それは必要な時に必要な分だけ頂いてきたから。あくまで生きる為に必要な分だけ奪ってきたから。命は共存していたのです。しかし今、飢えに苦しむ8億人の人に対して、13億トンの食糧が食べられる事無く廃棄されています。フードロスです。その中には当然肉も含まれているわけで。命を奪っておきながら捨ててしまうという事実とどう向き合うべきなのか。

「イーティング・アニマルーアメリカ工場式畜産の難題(ジレンマ)」という本をご存知でしょうか。ある日会社の先輩にすすめられて読んでから、私はほぼベジタリアンになりました。会食などビジネスシーンで必要となる場合を除いては肉は食べていません。本書には、加工肉になるまでに家畜がいかなる環境で育てられているのか、いかなる方法で加工されるのか、その真実が記されています。劣悪な環境で育てられる家畜と、非人道的な方法で加工される内容を読んでからは、必要以上に肉を食べる合理性がなかなか理解出来なくなりました。そして”What the Health?""Cowspiracy:サステナビリティ(持続可能性)の秘密”というドキュメンタリーにも、肉を食べる事について深く考えさせられました。そんな私にとっては、世界的に著名なポン・ジュノ監督が食肉をテーマとした映画を製作したことに大きな意味を感じるのです。

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誰もが目を背けたくなるような現実が、この世界には多くあります。目を背けているから幸せに生きていられるとも言えるでしょう。どの現実を見て、どれを見ないか、その選択は一人一人の判断に任されています。私はこの食肉という現実を「見る」と選択したから向き合いました。そしてベジタリアンという選択をした。「肉はダメ、ベジタリアンは良い」という方程式が全ての善であるとは思いません。生きるという事はそれほど単純では無いから。皆大なり小なり、何かの犠牲の上に成り立って命が続いているのです。だからこそこの「オクジャ」を見て、一度立ち止まって「命を頂くってどういう事?」と考えてみて欲しいのです。

「感謝して食べる」「きちんと味わって食べる」「いただきます、ごちそうさまを心を込めて言う」ー。この映画を見て何か感じるものがあったなら、私の様に急にベジタリアンにならずとも、出来る事が見つかるはずです。命の意味を考えて、自分の行動に意味を持たせて生きていく事が出来るのなら、何かの犠牲の上に成り立っている自分の命の使い方をも間違えずにいられるはずです。

ポン・ジュノ監督作品は間違いないよって事
すごーく真面目に書きましたが、「オクジャ」はミジャがオクジャを取り戻す為に大人に負けず大冒険するファンタジー/アドベンチャー作品です。CG技術で生き生きと描かれるオクジャも可愛らしく、韓国映画らしくコミカルで笑えるシーンも多く登場します♡気張らずご覧頂けますのでご安心ください。気軽に見て、何かを感じて、考える機会にしてみてください。ポン・ジュノ監督作品は全て一見の価値あり!ぜひご覧ください。

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