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2021年度 第14回GA文庫大賞 研究

私は川崎中と申します。かわさきあたりと読みます。
10年ほど前にライトノベルの新人賞を受賞したことがあります。

ただその後は一切結果が出ず、商業出版とは無縁の人生を送っています。
noteでは、あの時なぜ受賞できたかの検証と、その時のやり方を言語化すれば改めて受賞できるのかの挑戦を行っていきます。

詳しくはこちらの記事をご覧ください。

現在第17回GA文庫大賞に挑戦すべく、まず受賞作研究を行っています。
GAに応募する経緯はこちら。

今回は2021年度、第14回 GA文庫大賞について見ていきたいと思います。
受賞作品は次の5作品です。

あおとさくら (伊尾微)
陽キャになった俺の青春至上主義 (持崎湯葉)
双翼無双の飛竜騎士 (ジャジャ丸) 
新婚貴族、純愛で最強です (あずみ朔也)
ヴァンパイアハンターに優しいギャル (倉田和算)

全体感想

シンプルからゴテゴテまで

日常のちょっとした話(あおとさくら)から、設定を非常に詰められたファンタジー(双翼無双〜)まで幅広い作品が受賞していました。今回の受賞作を見ると、自分の得意なジャンルを力一杯書いて送ればいいのでしょう。

とはいえ、完全な現代日本ベースが2作通過しているのは2022年とも同じだし、賞の色を見ても、やや現代ベースの方が好かれがちなのかという気もしますが。

ハーレムよりも純愛を

これは一巻だからかもしれないですが、メインヒロインは一人の作品が多いです。これはハーレムものを投稿作品で行おうとすると、一人一人の掘り下げが不足しがちなので難しいからでしょうか。

そんな中で(陽キャになった〜)は唯一ハーレムものですが、それぞれのヒロインの記号的キャラ付けが巧みで、短いエピソードでそれぞれ愛着が湧く巧みな作品ではありました。

ハイファンタジーが2つ(双翼無双〜)(新婚貴族〜)で両方が竜。2022年も唯一のハイファンタジーが竜だったので、まぁ、竜なのでしょう。もっとも竜が人気だからか、闘蛇と王獣みたいな馴染みのない創作物を扱うのが難しすぎるのが理由かは分かりませんが、傾向としては竜をメインに据えるが無難なのでしょう。

精神的に成長しながら相手を助けよ

俺TUEE系ではないのであれば、この構造は必須なのでしょう。(あおとさくら)(陽キャになった〜)(ヴァンパイア〜)、俺TUEE要素のない作品にはこの構造が強く見られます。特に、きっちり精神的な何かを乗り越えて誰かを助けるのが見えると、本当に感動できます。
この構造をうまく見せられるかどうかが、俺TUEEでないエンタメ作品の肝っぽいです。

作品別感想

あおとさくら (伊尾微)

【セールスポイント】モノローグと謎めいたヒロイン

モノローグでの内面開示が多く、小説らしい作品。ヒロインが謎めいていて、とても惹きつけられる。登場人物もみな善人で、瑞々しい作品。

主人公は家族のことなどに問題を抱えるが、そこに深入りしなかったのがやや気になるところではある。ただ、見せ場はやはり主人公のモノローグやヒロインとの会話かと思うので、そちらをとったのは十分理解できる。とにかくヒロインがミステリアスで可愛いし、会話しているだけで惹きつけられる。セーブザキャット的な物語の起伏はあるが、むしろ主人公とヒロインの会話だけで面白いんじゃないか、と思うくらい日常描写がよかった。

陽キャになった俺の青春至上主義 (持崎湯葉)

【セールスポイント】陰キャヒロイン達とのラブコメディ

主人公が高校デビュー成功して、陽キャの友達がいて、とにかくこんな学園生活を送りたいと思わせる作品。笑いながら読める。

いわゆるハーレムラノベだが、ヒロインの多くが陰キャなのは新鮮で、その設定を活かした会話が面白い。これぞラノベという感じ。ハーレムであってもエロは少ないコメディ寄り。友達のギャルや男友達も陰キャに優しく(というよりは陰陽区別がない)、こうであってほしいという学園生活を見せてくれる。物語の起伏はあったが、会話ややりとりに本当にセンスを感じ、真似したら死亡するなぁと思わされる。

双翼無双の飛竜騎士 (ジャジャ丸)

【セールスポイント】スペクタクルな設定

壮大な世界観で竜を使ったバトルはとてもファンタジーらしいファンタジー。作り込まれた設定だが、キャラのやり取りは軽快で堅苦しくなくて楽しい。

バトルとボーイミーツガールという感じだが、それよりも設定に凄みがある。世界観を楽しむ作品という感じがする。神視点と人物視点を行ったり来たりする文章が、物語をやや客観的に見せ、歴史物を読んでいる満足感を与えてくれる作品。

新婚貴族、純愛で最強です (あずみ朔也)

【セールスポイント】異世界純愛

愛がパワーになる、というのは漫画でよくあるかもしれないが、それが具体的な能力なのがよい。応援できる構造。

少女漫画のような世界観で、バトルとラブコメ半々の内容。能力の構造が良いし、主人公の姉たちが楽しい。純愛を脅かすものももっと見たい気がする。竜の伝説、過去の物語も好き。

ヴァンパイアハンターに優しいギャル (倉田和算)

【セールスポイント】世間ズレしたハンターとギャルの友情

主人公他、登場人物の性格が非常に良いので、とにかく読んでいて元気になる作品。バトルものの要素も当然あるが、メインは日常の友情。とはいえ、機転の利くバトルも大好き。

バンパイアハンターだから、という部分も活きているし、ギャルだから、という部分も活きているし、それが互いに引き立てあっており、とにかくキャラ配置がいい。だからこそ、それぞれの良さが際立っている。主人公は普通ギャルなので、ヴァンパイアハンターと仲良くするだけでリスクがある。説得力のあるリスクを取れるキャラの出る物語は感動する。


2022年も含めて、ハーレムって少ないんですね。こうやって研究しなかったらうっかりハーレム送ってるところでした。

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