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親友の死が与えてくれたもの。
※今記事には「自殺」に関連する内容があります。心が健康な時に見てもらえればと思います。
一本の電話 もう十年ほど前にもなるか。
僕の親友が亡くなった。
死因は「自殺」だった。
その当時、僕は転勤で生まれ育った町から離れていた。
初めての一人暮らし。一人も友人がいない環境。
それでも、当時の上司がとても気にかけてくれて、ほぼ毎日飲み歩きながらそれなりに楽しく過ごしていた。
こちら月光生命セックス保険コールセンターです。最終話
最終話 人のセックスを嗤うなⅥ
「大変だったわね。ニュースでも大々的に流れてたわよ」
カツミママが三人を労うように笑顔を向ける。
場所はママの店【sirene】、落合が逮捕されてから数日が経っていた。
「大変でしたよ。会社も大慌てで過去の案件をすべて確認しろ! なんて指示が回ってきて、連日残業です」
美智子ががっくりと肩を落とす。
「しかし、そのおかげで今までなあなあになってた部
こちら月光生命セックス保険コールセンターです。第二十七話
第二十七話 人のセックスを嗤うなⅤ
人気のない暗いフロアに、パソコンの明かりが灯った。
「早くしろ……。早くしろぉ……」
男は苛立ちを隠せない様子でマウスを忙しなくクリックする。パソコンは未だに起動中のようで、企業名のロゴマークが表示されている画面から動かない。
「クソ! 冗談じゃない! まさかアイツらが逮捕されるなんて」
男はブツブツと悪態を吐きながら、パソコンの画面を睨みつけて
こちら月光生命セックス保険コールセンターです。第二十六話
第二十六話 人のセックスを嗤うなⅣ
「気軽に呼び出さないでくださいよ。いまいくつかの組が分裂してて大変なことくらいアナタも知ってるでしょう」
香ばしい珈琲の香りが漂うレトロな喫茶店のテーブル席で、落ち着いたトーンで話すその男は昆虫を思わせるような冷たい目線を源に送った。
オールバックにした髪の右の額あたりから、まるでハイライトを入れたかのように一筋の白髪が走っている。
痩せ型で、頬骨が
こちら月光生命セックス保険コールセンターです。第二十五話
第二十五話 人のセックスを嗤うなⅢ
会社から電車に乗って四十分ほどの場所に、早苗のアパートはある。セキュリティのしっかりした女性専用の小綺麗なアパートだ。
美智子が共有スペースに設置されているインターホンで部屋番号を押してしばらく待つと「ちょっと待ってね」という声がスピーカーから響き、ほどなく自動ドアのロックが解除された。
美智子は階段で二階に上がり、向かって二番目の部屋のチャイムを鳴
こちら月光生命セックス保険コールセンターです。第二十四話
第二十四話 人のセックスを嗤うなⅡ
テーブルを挟んだソファーに座り、源は対面している男ににこやかな表情を向ける。その相手である強面の男――柿原はめんどくさそうに頭を掻いた。
以前源が交渉した、風俗店の店長だ。
「……で? 相談ってなんですかい? アンタんとことは話はついてるはずですが?」
「まぁまぁ。そんなに邪険にすることもねぇだろ」
源は手をひらひらと振り、柿原をなだめる。
「今日
こちら月光生命セックス保険コールセンターです。第二十三話
第二十三話 人のセックスを嗤うなⅠ
「お電話ありがとうございます。こちら月光生命セックス保険コールセンター、担当の松島です」
「あ、もしもしー? 柳田さんっています?」
先方からの問いかけに美智子はちらりと隣の席を見やる。柳田とは早苗の苗字で、その早苗はインフルエンザに罹って昨日から休みを取っていた。
「大変申し訳ございません。柳田はお休みを頂戴しておりまして。私で良ければご用件をお伺い
こちら月光生命セックス保険コールセンターです。第二十二話
第二十二話 バブルガムホリデー
携帯のスヌーズ機能が三度目のアラームを鳴らす頃、美智子はようやくその身体を起こした。
先日のイベント企画部へのヘルプの代休で、週の半ばに関わらず今日は休みとなっていた。
普段であればまだしばらくベッドのなかでもぞもぞと名残惜しそうに布団にくるまっている美智子であったが、せっかくの休みの日に寝ているだけではもったいないと気合を入れてキッチンに向かった。
こちら月光生命セックス保険コールセンターです。第二十一話
第二十一話 Fly to the moonⅡ
イス取りゲームのような【自己紹介タイム】が終了し、司会がフリータイムの会場へと参加者を誘導する。
フリータイムの会場には壁際にドリンクコーナーとフードコーナーがあり、会場内には間隔を空けていくつかの円卓が並べられていた。
参加者は各自ドリンクを手に取り、自己紹介タイムで気になった人のところへ次々と向かう――かと思われたが、なるほど、やはり人
こちら月光生命セックス保険コールセンターです。第二十話
第二十話 Fly to the moonⅠ
「え? イベント企画部の応援ですか?」
課長の落合に呼び出された美智子が大きな声で聞き返す。
「そう。今度の日曜日にある婚活イベントのヘルプに入って欲しいって話だ」
落合が薄くなった髪を撫でつけながら言う。
「なんでまた急に」
美智子が顔しかめながらそう言うが、落合はデスクに座って書類に目を落とすばかりで美智子と目線を合わせようともしない。
こちら月光生命セックス保険コールセンターです。第十九話
第十九話 太陽の小町
「あれ? 源さん不在ですか?」
美智子が源のデスク近くの社員に問いかける。
「あぁ、今日は前からお休みを取る予定だったみたいですよ」
男性社員が美智子のほうに振り返って告げる。
「そうですか。この前の件の報告をしたかったんだけど、……まぁ、いいか」
そう呟くと、美智子は持ってきていた書類をパラパラと振りながら自分の席に戻って行った。
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「あぁ、ゲ
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第十八話 Forget me not
「お電話ありがとうございます。こちら月光生命セックス保険コールセンター、担当の松島です」
「……あの、ちょっと相談したいんですけど」
電話口の向こうから、若い女性の声が聞こえてきた。
「はい。どのようなご相談でしょうか?」
「あのセックスの同意の訴えって、どのくらい前まで遡《さかのぼ》れるんですか?」
「同意書なしの性交での訴えでしたら、五年前ま
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第十七話 オーバー・ザ・レインボーⅡ
男はベッドの上ですーすーと寝息を立てている青年の髪を優しく撫でる。その無防備な寝顔を見て笑みを零すと、青年のシャツのボタンに手を掛けた。
ひとつ、ふたつ、とボタンを外すごとに、青年の白い肌が徐々に顕わになっていく。男性にしてはキメの細やかなその肌に触れ、男はたまらず唾を飲み込んだ。
――これはアタリだな。
今回の収穫をそう評価した男――東条薫は思
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第十六話 オーバー・ザ・レインボーⅠ
「お電話ありがとうございます。こちら月光生命セックス保険コールセンター、担当の松島です」
美智子がいつも通り電話に出ると、若い男性の弱弱しい言葉が聞こえてきた。
「あの……。相手方を訴えたいんですけど」
相手方を訴えたいという相談は、圧倒的に女性が多い。しかし、今回のような男性側からの訴えもないことはない。
「はい。相手方を訴えたいとのことですね
こちら月光生命セックス保険コールセンターです。第十五話
第十五話 ワークマン・リレー
「お電話ありがとうございます。こちら月光生命セックス保険コールセンター、担当の松島です」
「あー、ちょっとな。聞きたいことがあるんだけど」
聞こえてきた声はしわがれていて、かなり年齢の高い人物のように思えた。
「はい、どのようなことでしょうか?」
美智子は優しい声色で聞き返す。
「あのー、セックス保険のな、なんだ、契約満了の通知が届いてな」
電話口の老人